トップアスリートに聞いてみよう!競技特性を活かすスポーツ栄養

ホームメイドクッキング×東京家政大学×RanRun スポーツ女子の「食」を支える 第1回東京家政大学とトップアスリート座談会 「-競技特性を活かすスポーツ栄養とは?-トップアスリートの経験談をヒントに考える」を8月25日、東京家政大学(東京都板橋区)にて開催しました。
「食」をテーマにトップアスリートに話を聞き、スポーツ女子・スポーツ栄養を学ぶ学生・スポーツ女子をサポートする保護者・指導者に、「競技ごとの特性を活かす栄養」についての情報をお届けする企画です。
RanRunの監修でお馴染みの東京家政大学 内野美恵先生がファシリテーター、レシピを考案しているスポーツ栄養研究会メンバー4名が参加しました。
<出席者>
【トップアスリート】
加藤ゆか(ロンドン五輪競泳銅メダリスト・現板橋区スポーツ大使・板橋区区民文化部スポーツ振興課スポーツプロモーター)
【学 生】
新井歩美(栄養学科/東京家政大学スポーツ栄養研究会1年)
田中 緑(栄養学科/東京家政大学スポーツ栄養研究会1年)
田邉ゆかり(短期大学部栄養科/東京家政大学スポーツ栄養研究会1年)
平井花歩(栄養学科/東京家政大学スポーツ栄養研究会1年)
左から 新井、平井、田邉、田中
【ファシリテーター】
内野美恵(東京家政大学ヒューマンライフ支援センター准教授 管理栄養士 公認スポーツ栄養士)
第1回目のゲストは、競泳元日本代表でロンドン五輪競泳女子400mメドレーリレー銅メダリストの加藤ゆかさんです。
加藤さんは愛知県出身。小さい頃から男の子に間違われるほど活発だったそうです。
初めてプールに入ったのは生後6カ月と聞き、学生達は目を丸くしていました。小学校6年生で全国大会優勝。この頃から将来オリンピックに出たいと意識するようになったそうです。
-学生時代・現役時代の「食」への捉え方-
新井:学生時代・現役時代、食事を重要視していましたか?
加藤:水泳自体は減量のない競技なので体重制限はありません。でも、子供の頃の私は食べなくても太る体質だったので、コーチに「口に入れたものをノートに書くように」と言われていて、それがストレスになってさらに太る原因になりました。高校までは、母親が「カロリーを抑えてたくさん食べられるように」と気遣って食事を作ってくれました。
大学(山梨学院大学)から1人暮らしになり、練習から疲れて帰って来て自分では食事を作る元気がなくて、外食ばかりしていました。水泳部がお世話になっていた食堂も利用していましたが、夏は冷たいものしか食べたくなくて、夏バテ気味。食べ物が全然口に入らず、ひと夏で3~4㎏体重が減って、スタミナ切れで泳げなくなってしまいました。
「食事は大事」と気づいて、それからは食べるようになりました。食べられる胃腸はメンタルが左右します。
平井:一人暮らしをされたことで食事についての意識は変わりましたか?
加藤:変わりましたね。高校までは、母親が出してくれたものを食べていました。
大学で1人暮らしをするようになって、食事を自分で取捨選択する意識が芽生えました。
大学4年生の時に北京五輪の選考会があって、その時にコーチから「生ものは食べるな」と指導がありました。そのお陰もあり、体調も崩さず五輪に出ることができました。
内野:大事な試合の前には、体調を崩すリスクをできるだけ減らすという考え方をします。生ものを食べてお腹を壊さないようにと配慮されたのですね。
田邉:食事の摂り方で苦労したことはありますか?
加藤:大学時代は思うような食事がとれず、夏バテすると体が食べ物をうけつけなくて。母が山梨まで来て食事を作り置きしてくれて、とても助かりました。
今より、現役の時の方が体調を崩しやすかったですね。肉体疲労や精神疲労が多かったからだと思います。
24歳頃から体質が変わったのか、食べたものが脂肪にならず筋肉にしかならなくて、体重が増えなくなりました。
水泳は浮くために脂肪がないとダメなんです。エネルギーの消費量が大きいので、それ以上に食べなければならなくて、泣きながら食べていたこともありました。1回の練習で2㎏痩せたこともあります。苦しい経験でした。
内野:オリンピックレベルの水泳練習では、消費エネルギーが1日4000kcal以上であると考えられます。心身の疲労と闘いながら、一般成人女性の2倍量を食べる必要があるので、食べることもトレーニングですね。食べた物がエネルギー源になり、足りなければスタミナ切れを起こします。もちろん栄養バランスも大切です。
10代頃は若さでもって何を食べても体調に変化を感じないというアスリートが多いのですが、22~23歳位になると、食事や生活習慣の影響が体調やパフォーマンスに現れるようです。成人してから食の乱れを改善することは大変なので、ぜひジュニアアスリートの育成過程から食事の大切さを教えてあげて欲しいと思います。
田中:周囲の人から、食事面でのサポートはありましたか?
加藤:母親のサポートがメインでしたね。水泳選手は、毎日、体重をチェックします。
母親には、体重によって1品増やしたり減らしたりして管理してもらいました。
ロンドン五輪の時は、JISS(国立スポーツ科学センター)の栄養士さんにサポートしてもらいました。バランス良く食事を摂ることができたお陰で、いい練習もできていました。
-水泳選手の食事や栄養に関すること-
新井:試合の前後やトレーニング中など、時期によってどのようなものを食べていましたか?
加藤:昔、試合前日に「きしめん」を食べた時、試合で良い結果が出たので、それからは「きしめん」を食べていました。ゲン担ぎです。
練習後直ぐに炭水化物を摂るといいと言われて、帰りの車に乗ったら直ぐに「おにぎり」を食べていましたね。練習中にはゼリー飲料等を用意したりして、糖質を摂るように気をつけていました。
内野:「きしめん」とは、名古屋のご出身ならではですね(笑)。水泳はエネルギー消費量が多いので、補食でこまめに糖質を摂ることが大切です。きしめんも糖質ですね。
田邊:サプリメントは摂取していましたか?
加藤:高校まではあまりサプリは信じてなくて、コーチが「全員摂れ!」と言うので、勧められたものをどういう効果があるかわからず飲んでいました。
大学時代は、生理の時貧血になるので、ビタミンや鉄剤のタブレットを毎回飲んでいましたね。
日本代表になってからはメディカルチェックがあったので、そこで自分に足りないものなどはサプリメントで補っていました。
内野:学生の皆さんもサプリメントを使用していましたか?
学生達:スポーツをしていた高校時代はタブレットを飲んでいました。
新井さんは陸上3000m、平井さんはボート、田辺さんは陸上800m、400m、200mと、それぞれ高校時代に運動部で活動しており、その頃の経験談を語っていました。
内野:サプリメントは、必要かどうかをイメージではなく、客観的に判断して使用することが大切です。メディカルチェックの結果は有効な判断基準になりますが、個人では費用がかかるので、なかなか受ける機会が浸透しないのが課題です。
後編につづく(まさかのメダル登場! 乞うご期待)
取材 甲斐瑛美子(昭和女子大学2年)
<プロフィール>
加藤ゆか(板橋区スポーツ大使)
生後6ヵ月でベビースイミングに通い始め、小学生時にジュニアオリンピックで優勝。
中学生時代には全国中学校水泳競技大会で3位、高校時代にはインターハイで4位入賞を果たしました。山梨学院大学進学後、2006年に日本選手権水泳競技大会、女子50mバタフライ優勝、アジア競技大会、女子50mバタフライで銅メダルを獲得しました。2007年のユニバーシアード大会では、女子400mメドレーリレーで金メダル、女子50mバタフライで銀メダルを獲得。2008年には北京オリンピックに出場しました。大学卒業後は、東京スイミングセンターに所属。北島康介らを育てた平井伯昌コーチの指導を受け、日本選手権優勝や日本新記録樹立など活躍。2012年には2大会連続となるロンドンオリンピック出場を果たし、女子400mメドレーリレーで銅メダルを獲得しました。2013年に現役を引退し、現在は板橋区役所スポーツ振興課でスポーツ大使兼スポーツプロモーターとして働きながら、全国各地で水泳教室を行うなど水泳の普及などに携わっています。
<株式会社ホームメイドクッキング>
全国で料理教室・パン教室を展開しています。
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