スポーツ女子の自分磨きを応援するWebマガジン｢RanRun｣

常葉大学男子サッカー部が調査協力。
サッカー元日本代表の鈴木啓太氏が社長を務めるバイオベンチャーのAuB（オーブ）（株）（東京都中央区）はアスリートの健康的な腸内環境の調査から、ある特定の菌群が感染症予防に向けた役割を果たす可能性を示した。

同社はこれまで750人・1700検体以上の選手の腸を解析。
そうした知見を基に配合した、酪酸菌などヒトに有効な29種の菌（アスリート・ビオ・ミックス）を一定の期間摂取すると、感染症予防に重要な役割を担う抗体IgA（免疫グロブリンA）の低下を抑制する可能性があることを今回、示している。

 

＜調査概要と結果＞

今回の調査は、鈴木氏と同じサッカー元日本代表で、常葉大学（静岡県）男子サッカー部の監督を務める澤登正朗氏と、同部選手20人（大学1-4年生）の協力を得て実施。
選手は、酪酸菌をメーンに乳酸菌やビフィズス菌など、29種類の菌を独自に配合した「アスリート・ビオ・ミックス（Athlete Bio Mix (R)）」を主原料にしたサプリメントを、1日3粒、3週間（2020年8月25日-9月15日）毎日摂取した。

 

 

「アスリート・ビオ・ミックス」は、アスリートの健康的な腸を解析、一般人と比較するなかで得た、腸内の健康度合いに影響する「酪酸菌の豊富さ」と「菌の多様性の高さ」を基に開発している。

調査では摂取前と3週目の計2回、練習の前後で各選手の唾液を採取し、唾液中のタンパク質1ミリグラムにおけるIgAの量を調べている。
各検査日の練習時間とトレーニング内容は同じ。

 

一般的に、ハードな練習などで体を酷使し疲労が溜まると、感染症予防に重要な役割を担う抗体IgAの分泌量は低下する。
しかし今回、練習時間・量は同じながら、サプリメントを摂取し続けた3週目で、低下の程度が抑制されるという結果を得た。
検査各日の練習前の数値を100に補正して練習後の数値を比較したところ、摂取前（0日目）は約47%減なのに対して、3週目は約25%減にとどまっており、約22ポイントもの差が出た。

 

今回の調査で、「アスリート・ビオ・ミックス」に、疲労によるIgA低下の抑制効果が期待できる可能性が示された。

同社はこうした実証データを受け、さらなる臨床研究、メカニズム研究を計画している。
同時に「アスリート・ビオ・ミックス」を活用した自社商品の開発・販売に加え、同菌ミックスを素材として外部販売するビジネスを強化していく考えだ。

 

十文字学園女子大学 （前 産業技術総合研究所）　辻典子氏　本調査に関する考察

今回、唾液中のIgAの分泌量の分析は、腸管免疫・免疫全般の研究におけるスペシャリストである同氏が科学アドバイザーを務める株式会社 腸管免疫研究所に依頼している。
辻氏は、調査結果について以下のように考察している。

 

免疫システムで作られる抗体の一種IgAは、主に口腔、鼻や目、消化管などの粘膜に存在し、ウイルスや細菌などの異物の侵入を防ぐなどの重要な役割を持ちます。
IgAの分泌量は、疲労やストレスで低下します。
また分泌量が減ることで、体調を崩しやすくなる病気にかかりやすくなるリスクが高まります。
今回、「アスリート・ビオ・ミックス」の経口摂取の結果、疲労によるIgAの低下を抑制できる可能性が示されました。

微生物成分は自然免疫を活性化し、免疫システムを安定に維持発達させます。
「アスリート・ビオ・ミックス」の構成微生物がどのように免疫システムに働きかけるのか、IgAの唾液中への分泌量を安定に保つ特別な仕組みがあるのか、今後のメカニズム解明が期待されます。

 

＜辻典子氏 プロフィール＞

十文字学園女子大学 人間生活学部　食品開発学科　教授、 農学博士

1995年 東京大学大学院農学生命科学研究科にて博士号取得、同年 米国Yale大学School of Medicine博士研究員、1997年 農林水産省家畜衛生試験場 主任研究員、2001年 農業生物資源研究所 主任研究員、2005年 産業技術総合研究所年齢軸生命工学研究センター チームリーダー、2015年より同研究所 主任研究員、上級主任研究員を経て2021年より現職。

主な研究内容は、粘膜免疫・免疫全般（食品による免疫調節、免疫恒常性の維持改善⇒アレルギーなど炎症性疾患の制御、感染症対策など）。