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アスリートの腸を研究するAuBが京セラ、京都サンガF.C.と共同研究締結

アスリートの腸内フローラが私たちの未来を変える⁈

ヘルスケア 2020/02/28

「アスリート時代の経験を、皆さんの健康に生かしたい」

AuB(オーブ)株式会社(本社:東京都中央区 以下AuB)はサッカー元日本代表の鈴木啓太氏が社長を務めるスタートアップ企業です。
その事業内容はなんと「アスリートの腸を研究する」というもの。

幼少の頃より「人間は腸が一番大事」と教えられ育った鈴木氏は、学生の頃から乳酸菌サプリメントを携行するほどの健康マニアであったと言います。

 

2004年のアテネ五輪アジア最終予選の時、鈴木氏が「腸活の力」を実感する事態が起きました。
代表選手23名中18名が下痢の症状を訴え、試合直前までトイレに籠ってしまったのです。
しかし、常にお腹や腸を意識していた鈴木氏は、下痢の症状が出ることはありませんでした。

また鈴木氏が引退する3年前、所属チーム内で尿のチェックで体内の水分量を把握する取り組みが始まりました。
体内の水分量の過不足が可視化された事で、不足気味の選手は水分補給を意識するようになり、試合中に足がつる選手が減るなどの効果をみせます。

自身の幼少からの原体験と体内水分量チェックから着想を得た鈴木氏は、「腸の環境も“見える化”できれば、選手の物差しとなり、行動変容に繋がるのでは」と仮説を立て、会社を起こしたそうです。

そのAuBが、京セラ株式会社(本社:京都府京都市、代表取締役社長:谷本 秀夫、以下京セラ)、株式会社京都パープルサンガ(本社:京都府京都市、代表取締役社長:伊藤 雅章、以下京都サンガF.C.)と人の健康維持やアスリートのパフォーマンス向上を目的とした共同研究契約を締結しました。

左から 京セラ・吉田氏、サンガ・伊藤氏、AuB・鈴木氏、京セラ・稲垣氏

AuBは4年間にわたってトップアスリート500人・1,000検体以上の便(腸内環境)を解析し、腸内フローラと太りやすさや筋肉のつきやすさ、免疫力、コンディションなどとの関係を解明しています。

腸内フローラとは、人間の主に大腸に生息する細菌で、その数は1,000種類、100兆~500兆個以上とも言われています。
消化できない食べ物(主に食物繊維など)を身体に良い栄養物質に作り変えたり、腸内の免疫細胞を活性化させたり、病原菌などから身体を守るなどの私たちが健康でいるための重要な役割を果たしています。

 

3社は、各社の強みを活かした以下のような取り組みを行うと発表しました。

・AuBが保有するトップアスリートの検体の腸内フローラのデータを解明する。

・京都サンガF.C.のU-18に所属する選手29名のパフォーマンス向上に上記データを活用する。

・京セラが便の臭気を用いた、日常的に腸内フローラの状態を計測するデバイスを開発する。

・上記を応用して、一般の人の健康寿命の延伸に貢献に繋げていく。

 

AuBが保有する検体は、ワールドカップ日本代表の松島光太郎選手や、箱根駅伝で「山の神」と呼ばれた陸上の神野大地選手、プロ野球・東北楽天ゴールデンイーグルスの嶋基宏選手を始めとしたトップアスリート500人以上。

「この圧倒的なサンプルデータは、ハーバード大学初のベンチャー企業が『なぜそんなに選手が協力してくれんだ?』と悔しがる程です」と鈴木氏は自慢げに笑います。

 

京都サンガF.C.は1996年にJリーグに参入し、選手育成に関するアカデミーとしてJリーグの「最優秀育成クラブ賞」を初受賞したプロサッカークラブです。

U-18クラスの全寮制であるという強みを活かした選手の食事データと便検体をAuBに提供すると共に、選手に合わせた食事アドバイスを基にした食品の提供などを行い、選手のパフォーマンス向上を図ります。

京セラは、AuBの検査結果と臭気のガス組成を結びつけたデータベースを構築し、AI技術を用いて腸内フローラの傾向を予測するシステムを構築し、トイレを利用した際の便の臭気から腸内フローラの傾向を予測するデバイスの開発に繋げていきます。

スポーツ選手は食事や運動量、競技成績などの生活や健康状態に関してのデータが取りやすく、腸と健康の関係性を分析しやすい環境下にいます。

またスポーツ選手は食事や運動について極端な生活をしているため、腸内も特徴的な腸内フローラを形成しています。

この特徴的な腸内フローラの研究で、筋肉のつきやすさ、太りやすさ、免疫力、コンディションへの影響を現在解明中です。

便の臭気から腸内フローラ内の菌の組成を判別することができれば、目指すべき腸内フローラとのギャップが見えるようになり、改善方法のフィードバックが行えるようになります。

体重コントロール、疲労回復、ストレス緩和、健康寿命の延伸など、一般人もアスリートも抱える課題は同種のもので、そこにエッジが効いているか否かだけです。

この技術を応用することで、生活習慣病の予防を始めとしたダイエットなど、目的に合わせた腸内フローラを形成するためのフィードバックを日々の生活から得る事ができるようになります。

腸内細菌の研究は、高速でゲノム情報を読み取る「次世代シーケンサー」が開発されて以降、急激に論文件数が増えており、世界中でにわかに注目を集め始めている分野です。

 

「アスリート時代の経験を、皆さんの健康に生かしたい」と語る鈴木氏。
一般の人々にとって、普段の生活の中での生活習慣のフィードバックは健康診断以外では難しい現状があります。

用を足すだけで食生活のフィードバックが受けられるようになれば、生活習慣病に対する新しいアプローチに繋がることが期待できます。

 

取材 粕谷祐樹

 

 

 

 

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