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試合前の集中力を高める

試合前の集中力を高める
ヘルスケア 2016/01/25

「メンタルケア」担当の、心理学博士で心理カウンセラーの高野雅司です。第2回目は、「試合前の集中力を高める」というテーマでお届けします。

さまざまなスポーツに打ち込んでいるであろう、RanRun読者の皆さん。
当然ですが、試合でこそ最高のパフォーマンスを発揮したいですよね。

そのために日々の練習があるわけですが、練習では上手くできても、本番になるとどうも上手くいかない、などと悩んでいる人も多いのではないでしょうか?

 

★結果へのこだわりがミスを生む

まず確認しておきたい大事な点は、
「ちゃんと失敗しないでやらなきゃ」などと強く意識すればするほどミスが起きやすくなる、ということ。

「〇〇〇〇しなきゃ!」「失敗したらどうしよう」といった気負いや心配は、自分自身へのプレッシャーとなり、気づかないところで身体を緊張させ、いつもできることが上手くできないことにつながります。

もちろん、そうしたプレッシャーを感じる強さには個人差がありますが、ミスを意識していると、かえってミスを引き寄せてしまいます。

心が「結果」にこだわっていると、たいてい実際のパフォーマンスは良くならないのです。

ですから、いざ本番となったら、勝利とか目標とする記録や順位などの「いい結果」、すなわち「未来」へのこだわりはいったん忘れましょう!

リラックスして、無心に「今」のプレイに集中すること。

人目や評価なども気にせず、その時間を夢中になって楽しむことが、結果としてパフォーマンスを高めてくれます。

「勝つぞ!」という思いや、適度の緊張感や興奮も必要ですが、それが強すぎると上手くいきません。
まずは心と身体のリラックスが必要で、その上で気持ちの軽い「入れ込み」があるぐらいがベストです。

試合でも、前回で強調した、「未来の目標」と「今を楽しむ」とのバランスが大事なのです。

 

★試合前に集中力を高めるための方法

さて、ではそうした心と体の状態で本番に臨むために、試合前にできることは?とは何でしょうか?

 

1)イメージ・トレーニング

イメージ・トレーニングの重要性は、広く知られるようになってきていますので、さまざまな形で経験している人も多いかもしれません。

前回にも「内からのモチベーションを高める」ためにイメージを使う方法について、簡単に触れました。

それとまったく同じように、リラックスして目を閉じ、ゆったりと呼吸しながら、理想的な自分がプレイする姿を鮮明にイメージし、心の中で思い描いてみます。そして、その時の喜びやワクワク感などを、じっくりと感じてみましょう。

「イメージなんかしたって、ウソっぽい想像にすぎないじゃないか」と思う人もいるかもしれません。

しかし、近年の大脳生理学の研究で明らかになっていることとして、私たちの脳は「リアルな視覚イメージ」と「現実の体験」とを区別しないのです。

脳にとって、鮮明にありありと想像したイメージは、それを現実に体験しているのと全く同じことになり、その結果、実際その通りに身体も動きやすくなります。

ですから、積極的に成功イメージを思い描くことによって、集中力も増し、本番での自分のプレイをプラスに変えていくことができるのです。

 

2)ルーティン

「五郎丸ポーズ」の影響で、ルーティンという言葉も最近すっかり有名になりましたね。

その基本的な意味は、余計な考えや不安などに意識が向くことを避け、自分が「今ここ」に集中できるようにすること。

本番直前のルーティンは特に大事で、自分がすることの手順と流れを事前に決めてしまい、それを普段から繰り返し行って、習慣化しておくといいでしょう。

それを淡々とこなすことで、余計な心配や緊張を避け、「今」に集中しやすくなります。

ルーティンは、ざまざまに工夫できます。

ストレッチなど、いつもの決まった手順で身体を動かしたり、会場周辺をゆっくり散歩したり、決まった言葉を(心の中で)言ったり…。

また、本番直前までお気に入りの曲を聴いているアスリートも多いですよね。

昨年、スケートの羽生結弦選手が「300点超え」した際に、演技直前まで聴いていたのは、『ONE OK ROCK(ワンオクロック)』の曲だったそうです。

 

3)前夜の心地よい睡眠

ごくごく当たり前のことですが、前日にはしっかりと良い睡眠を取りましょう。
寝不足のまま本番を迎えてしまっては、しっかり集中することもできず、身体機能的にも良いパフォーマンスが難しくなります。

できれば、試合中の理想的な自分の姿や場面をイメージしながら眠りにつくといいでしょう。

家族や友人の姿をイメージして、愛情や感謝の気持ちなどを感じてみるのもいいですね。

とにかく、好き、楽しい、嬉しい、心地よいなどのポジティブな気持ちや感覚を、ゆったりと味わいながら眠るようにしてください。

 

★動揺や緊張が収まらない時は?

とは言っても、実際にはどうしても試合前に緊張がとれなかったり、本番中も実際にミスが起きると、いろいろ考えたり、不安になったりしてしまうこともあるでしょう。

残念ながら、そもそも人間の脳は基本的に「マイナス好き」にできているため、何かと不安が起こりがちなのも、ある程度しかたがないのです。

そうしたマイナス志向な脳のクセを、長い目で変えていくこともできるのですが、この点については、来月以降にまた詳しくご説明していきましょう。

何はともあれ、動揺したり、不安になったりしてしまった時には、まず呼吸を意識することです。

常に起きているのに、普段ほとんど意識していない呼吸に意識を向けることは、「今ここ」に戻るための王道とも言われています。

特に「吐く」息の方を意識してください。
基本的に、「吸う」時には交感神経が優位となって興奮状態に、「吐く」時には副交感神経が優位となりリラックス状態になります。

ですから、「ゆっくり長く吐いて、短く吸う」というリズムを心がけるだけで、気持ちが落ち着いてきて、「今ここ」のプレイへの集中力を取り戻せるようになるはずです。

 

今月の内容、いかがでしたか?
やりやすいことから、ぜひ自分なりに取り入れてみてくださいね。

来月(2月22日)は、「試合後のリラックス」というテーマでお届けします。

 

<講師紹介>

髙野雅司氏

髙野 雅司(たかのまさじ)
心理学博士(Ph.D.)、ハコミセラピー公認シニアトレーナー
一橋大学卒。コンサルティング会社勤務を経て渡米。カリフォルニア統合学研究所 (CIIS)東洋西洋心理学部を卒業し、博士号取得。「マインドフルネスの意識」と「心と身体のつながり」を大事にする心理療法「ハコミセラピー」公認トレーニングを修了し、心理臨床の経験を深める。1997年帰国。コミュニケーショ ン全般に関する研修/コンサルティング。東京や関西を中心にセラピー・セッション、ワークショップや研修トレーニングを実施。
現在、日本ハコミ・エデュケーション・ネットワーク(JHEN)、日本ラビングプレゼンス協会代表、日本トランスパーソナル学会理事、日本ソマティック心理学協会 SPN(ソマティック・プラクティショナー・ネットワーク)世話人。
高校時代よりロックやR&Bのバンドでヴォーカルを担当し、現在もライブ活動継続中。

日本ハコミ・エデュケーション・ネットワーク(JHEN)
http://hakomi-jhen.com

日本ラビングプレゼンス協会
http://loving-presence.net

 

<モチベーションを上げる時に聴く曲>
I’m A Soul Man / James Brown、We Wiil Rock You / Queen& 自分のバンドのライブ録音!
著書・訳書に、『人間関係は自分を大事にする。から始めよう』(青春出版)、『トランスパーソナル心理療法入門』(日本評論社/編共著)、『ハコミセラピー』(星和書店/共訳)、『魂のプロセス』(コスモスライブラリー/訳)など。