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敗戦を引きずらないープラス志向脳の作り方

敗戦を引きずらないープラス志向脳の作り方
ヘルスケア 2016/03/28

「メンタルケア」担当の、心理学博士で心理カウンセラーの高野雅司です。
今月、いよいよ最終回は、「敗戦を引きずらない」というテーマでお届けします。

ちょうど今月、女子サッカーのオリンピック最終予選で、「なでしこジャパン」は初戦の敗戦から上手くチームを立て直すことができず、残念ながらオリンピック出場権を逃してしまいました。

もちろん、そこにはいくつもの要因が絡んでいたでしょうが、第2戦と第3戦では「次は絶対に勝たなくては…」といったプレッシャー、メンタルな問題が大きかったように感じました。実際、予選敗退が決まって以降のプレイぶりは、だいぶ変化していましたし…。

皆さんは、試合に負けてしまった時、失敗やミスをしてしまった時などは、どんな風に過ごしているでしょうか?
もちろん、悔しかったり、悲しかったりもするでしょうが、いつまでも引きずらないで、それを上手く糧にして、前向きなエネルギーへと変えていけるといいですよね?

そのために大切になるのは、次の2つのステップです。

 

★試合に負けた時にすべき2つのステップ

1)マイナス感情をしっかり吐き出す

まずは、自分が感じているマイナスの感情を表現しきっちゃいましょう。

残念、悔しい、悲しい、ショック、失望、腹立たしい、がっかり、情けない、やりきれない、納得いかない、申し訳ない、後ろめたい、恥ずかしい、などといったさまざまな思い…負けたり失敗したりした時には、誰にとっても当然の自然な感情です。

それを、思うがままに紙に書きなぐったり思い切り泣いたり時には叫んだり、できたら手足をジタバタさせるなど全身を使って、自分の気持ちを外に表現するようにしてください。

「そんなことしてたら、余計に引きずるのでは?」と思われるかもしれませんね。

実際にはまったく逆で、感情というのは、ちゃんと表現さえしてあげれば、それで消えていくものなんです。でも、そうしないでおくと、心の何処かにいつまでも残ってしまって、何かの拍子にまた出てきてしまいます。

ですから、自分の感情を心の内側に押し込めてしまわないでください。
あまりきちんと認識されていないようですが、これがとても重要なポイントです。

一般的には、イヤなことがあったら、爆睡したり、飲み食いしたりしてウサを晴らすなど、何か気晴らしをして気分を切り替える、というようなアドバイスが多くみられますが、それだけだと、一時的なごまかしに過ぎず、ふと思い出して繰り返しクヨクヨしてしまうなど、本当には切り替わっていないことが多いのです。

 

2)「問題点や原因」でなく「良かった点や理想」にフォーカスする

最初のステップで十分に自分の感情を吐き出し、スッキリしたら、今後に向けて試合を振り返っていきましょう。

そうした際には、多くの場合、試合中のさまざまな場面を客観的に振り返り、敗戦や失敗の原因と問題点を分析し、反省し、改善案を考える、といった作業が一般的かと思います。

でも、私がオススメしたいのは、そうした「問題解決」型の振り返り方でありません。

反省もある程度は必要ですが、問題点やその原因を明らかにして、それを解決するために努力するのは、なかなか気が重い、大変な作業となりがちです。

ですから、「問題を無くすために何をするか?」と考えていくのではなく、むしろ「理想を実現するために何をするか?」という発想に切り替えてみてください。その方が楽しいですし、未来に向けたモチベーションが湧きやすいのです。

サッカーであれば、たとえば「シュートのミスを無くすために…」ではなく、「思った通りのショートを決めるために…」の方がワクワクしませんか?
しかも、問題自体を意識して解消しようとしなくても、理想を追い求め、それを達成していけば、自ずと問題も解決されてしまっているわけですから…。

また、敗戦の中でも、自分が上手く出来たところや場面の方に意識を向けて、これまでに繰り返しご紹介してきたイメージ・トレーニング法も行なってみましょう。

敗けたからといって全てがダメだったわけではなく、上手くいったところも何かあるはず。
本番の緊張感の中でも上手く出来た時の自分を意識し、じっくりと振り返っていく時間は、理想のプレイに近づいていくための大きな助けとなります

 

★心の基礎体力 ~“心地よさ”でプラス志向の脳に変えていこう!

再びイチロー選手のエピソードですが、野球や自分自身のプレイについて、自分がまだ理解できないことに出会ったり、気づいたりした時には、いつも「おっ、自分はまだまだいける!」と思うのだそうです。

つまり、未知や未熟さは「まだ自分には伸びしろがある証」と捉えて、「ダメだ~」ではなくて、次の目標ややる気へと自然に転換できているわけですね。

今回の「敗戦を引きずらない」という意味でも、そうした「心の基礎体力」をしっかり養っていくことも非常に大切です。

これまでの回でも触れてきたように、個人差はあるものの、基本的に人間の脳は「マイナス志向」にできていて、マイナス方向に気持ちが向きがちなので、負けたり、失敗したりすると、不安になったり、自分を責めたり、前向きに考えるのが特に難しいものです。

しかし、最近の脳科学の発見のひとつとして、そうした本来の「マイナス好き」な脳を変え、より肯定的な心を育むためのポイントが明らかになってきました。

それは、“心地よさ”をじっくりと感じ、味わうこと。

何かいい体験をした時に、しっかり時間を取って、その時の「快」の感覚をじっくり感じていると、そうしている間に新しい脳の神経回路が生まれ、よりプラス志向の脳へと少しずつ変わっていくのだそうです。

ですから、上手くいかない時などに「マイナス思考」に陥らない自分になるためには、日頃から次のようなクセをつけておくといいでしょう。

 

1)練習中や試合中の「いい体験」の方を思い出し、味わうようにする。

失敗や問題に気持ちが向きがちかもしれませんが、意識的に「いい体験」にフォーカスしてみましょう。
このポイントは、これまで3回の内容にも絡むので、よかったら読み直してみてください。

 

2)日常生活の中でも、「いいこと」があったら、その時の「快」を感じるようにしてみる。

ゴハンが美味しい、おしゃべりが楽しい、プレゼントをもらって嬉しい、庭のお花がキレイで癒やされる…そうした、日々の中のちょっとしたことでいいので、そうした時の心や身体の温かさや緩む感じなど、自分の中に起きてくる“心地よい”感覚を意識して、少し長めに感じるようにしてみてください。

 

3)夜、寝る時は、「いい体験」を思い出して“心地よさ”を感じ直しながら眠る。

日中はなかなか忙しくて、じっくりと「快」の感覚を味わう時間は取りにくいでしょうね。夜、お風呂に浸かりながら、温かさやリラックス感をゆっくり味わうようにしてみてください。また、フトンに入ったら、その日にあった「いい体験」を何か具体的に思い出し、その時の“心地よさ”を感じ直しながら眠るようにしましょう。寝付きも良くなるはずです。

 

こうしたことを、楽しみながら日々繰り返していくと、自分の脳自体を実際に変化させていくことが出来ます。普段の自分の心がけ次第で、誰でもがよりプラス志向の脳に変わり、マイナスの出来事をいつまでも引きずらずに、前向きに考えられるようになっていけるのです!

 

さて、今月も含め、「メンタルケア」というテーマでお届けした全4回の内容、いかがでしたでしょうか?
ぜひ自分なりに工夫しながら、取り入れてみてくださいね。

皆さんが、今後も高いモチベーションを維持し、最高のパフォーマンスを発揮し、自分が理想とする目標を達成していくために、この連載記事が何かしら役立ったなら嬉しいです。

そして、大好きな競技にこれからも打ち込んでいってください!

 

 

<講師紹介>

髙野雅司氏

髙野 雅司(たかのまさじ)
心理学博士(Ph.D.)、ハコミセラピー公認シニアトレーナー
一橋大学卒。コンサルティング会社勤務を経て渡米。カリフォルニア統合学研究所 (CIIS)東洋西洋心理学部を卒業し、博士号取得。「マインドフルネスの意識」と「心と身体のつながり」を大事にする心理療法「ハコミセラピー」公認トレーニングを修了し、心理臨床の経験を深める。1997年帰国。コミュニケーショ ン全般に関する研修/コンサルティング。東京や関西を中心にセラピー・セッション、ワークショップや研修トレーニングを実施。
現在、日本ハコミ・エデュケーション・ネットワーク(JHEN)、日本ラビングプレゼンス協会代表、日本トランスパーソナル学会理事、日本ソマティック心理学協会 SPN(ソマティック・プラクティショナー・ネットワーク)世話人。
高校時代よりロックやR&Bのバンドでヴォーカルを担当し、現在もライブ活動継続中。

日本ハコミ・エデュケーション・ネットワーク(JHEN)
http://hakomi-jhen.com

日本ラビングプレゼンス協会
http://loving-presence.net

 

<モチベーションを上げる時に聴く曲>
I’m A Soul Man / James Brown、We Wiil Rock You / Queen& 自分のバンドのライブ録音!
著書・訳書に、『人間関係は自分を大事にする。から始めよう』(青春出版)、『トランスパーソナル心理療法入門』(日本評論社/編共著)、『ハコミセラピー』(星和書店/共訳)、『魂のプロセス』(コスモスライブラリー/訳)など。