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リオ五輪関係者が語る女子アスリートの体づくり

リオ五輪関係者が語る女子アスリートの体づくり
ヘルスケア 2016/10/10

目から鱗の勉強会!
総合コーディネーターを務める宮嶋泰子さん(テレビ朝日スポーツ局スポーツコメンテーター)が、これまでの女性スポーツ勉強会を振り返って発した言葉です。

 

モン・スポ主催 第6回女性スポーツ勉強会が10月1日、東京ウィメンズプラザで開催され、リオ五輪・パラ五輪のコーチ、選手が登壇し、現在の女性アスリートの状況などについて話をされました。勉強会には、元日本代表選手やスポーツ指導者、スポーツドクター、栄養士、スポーツ関係者など約300人が参加し、熱心に聞き入っていました。

 

スポーツ女子、指導者、お母さんなど多くの方にお伝えしたい内容が盛りだくさんの勉強会でした。ヘルスケアの観点からご紹介したいと思います。

 

<登壇者>

井村雅代(いむら・まさよ)さん
リオ五輪シンクロナイズドスイミング日本代表コーチ

山下佐知子(やました・さちこ)さん
リオ五輪女子マラソン・5000mコーチ、第一生命女子陸上部監督

土田和歌子(つちだ・わかこ)さん
リオパラ五輪車いすマラソン日本代表選手

峰村史世(みねむら・ふみよ)さん
リオパラ五輪競泳日本代表チーム監督・ヘッドコーチ

中村格子(なかむら・かくこ)さん
整形外科スポーツドクター

高尾美穂(たかお・みほ)さん
婦人科スポーツドクター

荒木田裕子(あらきだ・ゆうこ)さん
日本バレーボール協会女子強化委員長、モン・スポ理事

 

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陸上・山下佐知子コーチの話から
第一生命女子陸上部の監督でもある山下さんは、「若い時にしっかり体を作ることの大切さ」についてお話しされていました。全中、インターハイ、インカレなどの優勝者が、その後、活躍できない陸上界の現状はおかしいと警鐘を鳴らします。高校でボロボロになった体を元に戻していくために1年は様子をみて、3~5年で走れるように「楽しい練習」を行っています。トップレベルにまでなるには、5年以上のスパンで見ないと難しいそうです。中長期の計画を立てて実業団に入ってきた選手が、結果伸びたという話をしていました。

 

一つの事例として、高校卒業後、実業団に入ってきたものの体調が悪くなり、実業団を辞めて大学に入った選手の例を挙げていました。大学の陸上部で競技成績を上げながら、体づくりをし、骨密度を上げてきたそうです。大学卒業後、あらためて実業団に入り、結果を出しています。
もちろん個人差はありますが、学生時代の体づくりが大切なことに変わりはありません。

 

ボロボロの体とは?
長距離選手が体を軽くするために、食事による体重制限をして、無月経になりやすいという話は皆さんもご存知でしょう。無月経による貧血、骨粗鬆症などのトラブルの危険性について、RanRunでもこれまでご紹介してきました。骨粗鬆症になって、疲労骨折を起こし、肝心な大会に出られなくなるのは、辛いことですね。
大きな怪我をせずに高校で成果を出したとしても、体が悲鳴をあげている状態の選手が少なくないのです。

 

山下さんは、高校までの月経の状態を重要視しているようです。

 

指導者と選手のコミュニケーション
山下さんは、練習日誌を使って情報収集し、選手のコンディションを把握しています。あまり選手の負担にならない方法で、脱水度やSpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)を毎日計測することで、異常があれば直ぐに察知できるようにしています。日誌は上下関係だけにとどまらず、指導者と選手のコミュニケーションをとるきっかけにもなっているそうです。

 

血液からの情報収集
山下さんが重視するのは、ヘモグロビンの数値。ヘモグロビンの数値が低いと貧血やパフォーマンスへの影響が出るといいます。しかし、鉄剤の接種には弊害もあることから、高校までの月経が正常だった選手であれば、少し様子をみるようにしているそうです。

 

貧血だからと直ぐに鉄剤を接種する人がいますが、そうではなく月経を正常に戻すことを優先したいですね。

 

もうひとつ、山下さんが重視しているのが体組成の骨密度です。長距離の選手は、全身の骨密度が平均値であっても、腰の骨密度は低いという結果が出ているそうです。練習量が多いと腰の骨密度が低くなることがわかっているため、試合との兼ね合いを考え医師の指示に従うようにしているといいます。

 

日本の長距離選手は、駅伝とマラソンがある関係でなかなかシーズンオフがなく、オンオフを作るのが難しい現状にあります。しかし、誰しもオフは必要です。オフモードにすべき時に、選手のスイッチが入ってしまった時の対処も指導者にとっては重要なスキルのようです。

 

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女性指導者のメリット
山下さんは1996年に第一生命女子陸上部の監督に就任されましたが、当時は女性の監督が珍しかったため、女性だからということで取り上げられることが多かったといいます。着実に実績を積んでこられました。「選手と月経トラブルについて話ができるのも、女性監督だからかもしれません」と話していました。

 

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婦人科スポーツドクターの高尾先生が、女性スポーツ医療にも最近になって光が当たるようになってきたといい、なかなか現場に声が届かなかったもどかしさについて語っていました。スポーツの世界は男性コーチが多いため、「女性ドクターなら月経や体調のことも聞きやすいですね」と、体のことを相談できる人の必要性を指摘していました。