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研修医ブログ 第2回 婦人科にもスポーツドクターがいるんです

研修医ブログ 第1回 スポーツドクターを知っていますか?
ヘルスケア 2017/01/23

こんにちは。今回は、産婦人科スポーツドクターが扱う女性アスリートの問題について触れたいと思います。

 

生理とパフォーマンスについて

女性アスリートに起こりやすい3つの問題があります。
その3つとはエネルギー不足、無月経、骨粗しょう症です。
この3つは相互に関係しあっています。

 

食べる量が少なかったり運動量が多かったりでエネルギー不足になると、生理が止まってしまったり生理不順になってしまいます。
正常な生理は3日間〜7日間持続し、25日〜38日周期です。
生理がないというのは十分量の女性ホルモンが出ていない可能性があります。

 

女性ホルモンには骨を強くする役割があります。なので、摂取エネルギー不足で生理が止まってしまうと、骨が弱くなって疲労骨折をしてしまうことがあります。
これは新体操などの審美系の競技や長距離選手に多い問題です。マラソン選手などで疲労骨折を繰り返す方がいますね。その原因は消費エネルギーに対するエネルギーが不足していると考えられます。

 

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「生理が来ているようじゃまだまだ練習が足りない」
「女性としての人生をとるか、選手としての人生をとるかだな」
「生理こないほうが楽でいいじゃん」
このようなことを言う指導者の方は、まだまだたくさんいらっしゃるそうです。

 

確かに生理は痛くて重くて大変な方もいらっしゃいますが、その原因がエネルギー不足にあると考えると、確実にパフォーマンスは落ちますし、せっかく一生懸命練習してきたのに疲労骨折をしてそれを発揮できないなんてもったいないと思いませんか?

 

そこはぜひ、選手の方々からも、指導者の方々からも、考えを改めて欲しいなと思います。

 

ピルについて

とはいえ、確かに生理がつらい方は少なくありません。私もそうでした。
生理前になると体重が増え、体がだる重くて動きにくくなり、体幹に力が入らないような感じがしました。
生理が始まると今度は痛くて動けない。これはこれでパフォーマンスが落ちてしまうし、大事な試合と生理が重なって力を発揮できなかったり・・・

 

これを解決するために私がオススメしたいのがピルです。
ピルって、みなさんにとってはどんなイメージでしょうか?
経口避妊薬のイメージを持っている方が多いのではないでしょうか

 

たしかに経口避妊薬として使うこともありますが、ピルを飲むことで体を楽にすることもできるんです。

 

欧米ではアスリートでピルを飲んでいる選手はたくさんいます。日本のアスリートの中でもピルを飲んでいる選手はだんだん増えてきています。
なでしこJAPANの澤穂希選手などもピルを使用していたと公言しています。ピルを使えば生理の日を大事な試合からずらすことができるし、出血の量を減らしたり、痛みを軽くすることもできます

 

心配なのは副作用ですよね。
副作用には不正出血(14%)、体重増加(14%)、吐き気(10%)、頭痛(6.5%)などがあります。しかし、ほとんどの人は3ヶ月以内にこれらの副作用を感じなくなります。

 

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なので、ピルを開始するときは、目標とする試合の3ヶ月以上前には病院を受診するようにしてください。
ピルにもいろいろな種類があります。3ヶ月経っても副作用がつらいようなら他の薬に変えるという手もあります。

 

あと、これはどんな薬にも言えることですが、どんな副作用が出るかというのは、人によって違うので、飲んでみないとわかりません。
だから早めに病院で相談して飲み始めて、万全の状態で試合に臨んで欲しいなと思います。

 

副作用で重篤なものとしては、血管の中で血の塊ができてしまい詰まってしまうということがあります。副作用の中では一番重篤なので騒がれがちですが、これはとても稀で、タバコを吸う方が血の塊ができやすいくらいです。

 

また、ピルは子宮体癌や卵巣癌になるリスクも減らしてくれます
にきびが、できにくくなるものもあります。
ピルは最初の偏見がなくなれば、もっとたくさんの人が使用したくなる薬だと思います。

 

ピルに対する壁が少しは低くなったでしょうか。
相談や質問だけでも、ぜひ産婦人科に行ってみてください。

 

本当は検診も受けて欲しいところですが、産婦人科は行きにくいところ、というのはわかります。私もそうでした。
でもまず、ピルについて相談してみることは選択肢としてありだと思います。

 

友達やチームの仲間同士で話し合ってみることも大切だと思います。
婦人科に相談してみて、信頼できる先生に出会えたら、ぜひ検診も受けてください。
インターネットで“産婦人科 スポーツ”などで検索すると、たくさん病院が出てきますので、まずは調べてみるだけでもしてみてください

 

生理は女性の体に大きな影響を及ぼす因子です。パフォーマンスにも影響します。
生理のせいで力を出せず試合に出られなかった、負けてしまった、というのはもったいないです。

 

悔いのない選手生活を送るためにも、将来の自分のためにも、ぜひ女性としての自分の体に敏感になって、しっかり向き合ってください。

 

研修医 平野翔子

 

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