女性の95%が何らかの症状を経験 月経前症候群(PMS)

あなたは月経前の時期、体調の変化を感じることはありませんか?
女性が月経前に心身の不調をきたすことは、古代ギリシアの時代でも知られていたのだとか。
女性の95%は、月経前に何らかの症状を経験しているという調査結果も発表されています。
(Takeda T, et al. Arch Womens Ment Health.9(4):209-212, 2006 )
「月経前になると眠さと集中力低下で勉強がはかどらなくなる学生さん。
月経前にパートナーの行動にイライラして喧嘩になってしまう女性。
月経前に子供を叱りすぎてしまいあとで自己嫌悪に陥る女性。
そのような女性とその周囲の方々に、PMSの存在と、「症状を改善できるかもしれない」ことを知っていただければと思います。」
“PMS”という単語を多くの人に知って欲しいと話す小川真里子先生。
女性の健康推進プロジェクトを展開する大塚製薬株式会社が2021年11月18日、東京歯科大学市川総合病院 産婦人科 准教授 小川真里子先生を演者に迎え、メディアを対象に月経前症候群(PMS)領域プレス説明会を開催しました。
テーマは、「月経前症候群(PMS)の課題と新たなヘルスケア戦略」
PMSには、お腹の張りや胸の張りのような身体症状や、イライラしたり食欲が極端に増加したり、不安になるなどの精神的症状もあります。
PMSは以前は30代に多いと考えられていたそうですが、最近では思春期からみられることがわかってきました。
しかし多くの女性が月経前になんらかの症状を感じているにも関わらず、治療がされていません。
生活や仕事に支障をきたしていても、病院で診察を受ける女性は少ないといいます。
また、受診に至っても専門家が少なく、PMSの正確な診断も難しく、さらに、現在日本でPMSに対して保険適用となっている薬剤はほとんどないなど多くの課題があります。
辛くても我慢したり、一人で悩んだりしないで、正しい知識をみんなで共有し、毎日を快適に過ごせるようなサポートをしたいと、RanRunでは継続的な発信をしています。
先ずは一緒にPMSのことを考えてみませんか。
月経前症候群(PMS)とは
ACOG(American College of Obstetricians and Gynecologists)は、過去3カ月の月経前5日間に、下記の情緒的または身体的症状のうち、少なくともひとつを患者が訴えた場合、PMSと診断できるとしています。
情緒的症状 | 抑うつ、怒りの爆発、いらだち、不安、混乱、社会からの引きこもり |
身体的症状 | 乳房の痛みまたは張り、腹部膨満感、頭痛、関節または筋肉の痛み、 体重増加、手足のむくみ |
それらの症状は、月経開始後4日以内に症状が消え、少なくとも13日目までは再発しないのが特徴です。
PMSの症状は、仕事や勉強、スポーツなどのパフォーマンスに影響を及ぼし、社会的活動にも支障になってしまいます。
経済産業省が2018年に実施した「働く女性の健康推進に関する実態調査」では、女性従業員の約6割が女性特有の健康課題などにより職場で困った経験があると回答しました。
そのうちの多くが月経痛や月経前症候群によるものです。
また、管理者では約4.5割が女性特有の健康課題への対処に困っていると回答しています。
大塚製薬が正規雇用の会社員で管理職に登用される機会があった/ PMS自覚あり&症状が重い 285人(全国の正規雇用の会社員20-44歳)を対象に 2021年9月に実施した調査では、月経前に日常生活に支障をきたすほどの症状を感じている女性の2人に1人が退職を意識していることがわかりました。
図1)PMSでみられる主な症状 J Womens Health (Larchmt) . 2011 Jan;20(1):29-35.
<身体症状> ・お腹のはり* ・むくみ* ・体重増加* ・頭痛* ・胸の張り・痛み* ・筋肉痛・関節痛 ・痛み |
<精神症状> ・イライラ ・倦怠感 ・怒り ・傷づきやすさ ・気分の変動 ・意欲低下 ・集中力低下 ・過食・特定のものを食べたくなる ・不眠 ・過眠 ・制御不能な感じ ・罪悪感 ・不安・緊張 |
PMSの原因はまだわかっていないのが現状ですが、月経周期に伴うホルモンの変化が何らかの影響を及ぼしていると考えられています。
つまりホルモンが正常に働いているからこそ起こる症状といえます。
PMSの症状は人により様々ですが、閉経近くまで続く人が多いようです。
しかし、何らかの疾患が原因の場合は、その病気を治療することで症状がなくなると考えられます。
病気が隠れている場合もあるので、我慢せず専門医に相談することが大切ですね。
また、生活習慣を変えることでも症状を軽くすることはできます。
PMSと上手につきあう
PMSの症状には、「水分貯留」(水分を貯えやすい)との関連が考えられる症状(図1*)が多くみられます。
水分貯留を改善することで、PMS症状の身体症状・精神症状の両方に効果が期待できます。
小川先生から生活スタイルや食事指導についての紹介がありました。
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Clin. Obstet Gynecol. 61(1):52-61, 2018より改変
東京医療保健大学 神田裕子先生ご協力
PMSによるパフォーマンスへの影響を少しでも減らせるよう、できることから取り組んでいきたいですね。
小川真里子先生
東京歯科大学市川総合病院 産婦人科 准教授
福島県立医科大学医学部卒業。
慶應義塾大学産婦人科を経て、
2007年に東京歯科大学市川総合病院産婦人科助教、
2011年同講師、2016年より現職。
日本産科婦人科学会産婦人科専門医、
日本心身医学会産婦人科専門医、
日本女性心身医学会認定医などの資格を持ち、
PMSや更年期などの診療にあたる
取材・文 RanRun編集部 Yuki Yanagi