ボート元五輪代表 岩本亜希子さん 今やっている事に全力を注げ

アジア大会4回、世界選手権7回、シドニー・アテネ・北京・ロンドンとオリンピックに4回出場し、トップアスリートとして世界で戦ってきたボート競技元日本代表の岩本亜希子さん(アイリスオーヤマ株式会社所属)。現在は、9カ月のお子さんのママとなった岩本さんに話を聞いた。
<ボートの魅力>
「水の上は非日常。初めてボートに乗った時の水の上をスーッと立った時の感動に勝るものはありません」水の上で一人ボートに乗った時の圧倒的な解放感、景色、ボートに乗った人にしかわからない魅力を語る。
チーム戦の場合は、「1+1が2にならない。1+1が0.8だったり、3になったりする難しさがボート競技の面白さ」。
シングルで戦うことが多かった岩本さんだが、「チーム戦が好きです」と笑顔をみせた。
<ボート競技を始めたきっかけ>
ボートを始めたのは高校生になってから。
バルセロナ五輪水泳競技で同年齢の岩崎恭子さん(当時14歳)がメダルを獲得したことに衝撃を受け、「私も強くなりたい」と思ったという。
姉がボートのインカレで表彰台に上がる姿を見て、自身もボート競技に自分の輝ける場所を見出した。
全国大会に出ると色々な場所に行くことができた。
世界ジュニア代表に選ばれ、夢を叶えていった。
<大学生活>
早稲田大学教育学部の学生だった岩本さんは、朝5:30~7:30に練習をしてから大学に登校した。
授業が終わると帰ってまた練習という生活。
学生時代から日本代表として活躍した背景には、勉強との両立での苦労もあった。
練習のことを考えながら授業の時間割を作っていても、日本代表ともなると授業に出られない期間も出てくる。
厳しい言葉をかける先生もいたそうだ。
<就職活動>
就職活動では、ボート競技を続ける環境としての企業選びをした。
当時、アイリスオーヤマがボート部を新設するという話を聞き、新しい環境なら今以上の選手になれると考えたそうだ。
クリエイティブな理念に共感し、アイリスオーヤマに就職を希望、1次選考から受けたという。
ボート競技は耐えるスポーツという岩本さん。
面接では、努力を積み重ねてきた勤勉さをアピールした。
また、7分のレースの中で、疲れたところからそれをエネルギーに変えゴールに向かう、自分の弱さに打ち勝つメンタルの強さは、スポーツでも企業でも役に立つとアピールしたそうだ。
<健康について>
学生時代から一人暮らしをしていた岩本さんは、身体のことには常に気遣っていた。
自炊の時は、栄養バランスを考え色目でバランスを取った。
栄養は3日でバランスを整えればよいと聞きそれを実践した。
とはいえ、学生時代はリバウンドすることも多く、「10㎏増えた時は服を着こんで必死で隠しました」と笑う。
無理な減量をせず、身体を動かすことで体重を減らした。
躍起になって自分に制限を課すのはよくないと話す岩本さん。
誘惑に負けた時は自分を許すことも大切だという。
自分の中で食べてもOKという食品を決め、何時までなら食べてもよいなどのマイルールを作っていたそうだ。
自分に厳しすぎると、それがメンタルに影響してしまいレースに支障が出ることもあり、かえってよくないと教えてくれた。
現在は、ボート競技の選手である夫のために、栄養バランスを考えながら食事を用意している。
<出産>
学生時代からトップアスリートとして鍛えてきた岩本さんも、出産は大変だったと振り返る。
陣痛から出産まで21時間、いつ終わるかわからない戦いは、練習では経験したことのない辛さだったという。
体重制限のあるボート競技、現役選手時代は夏場に無月経になった。
それでも、自分で意識して健康管理することで普通に出産もできる。
今は、子供を育て上げることが岩本さんの目標のひとつだ。
<日本代表を経験して>
世界レベルにおいて日本のボート競技はチャレンジする側。
国内でのレースの方がプレッシャーになったそうだ。
とはいえ、オリンピックは特別で自分にプレッシャーをかけたという。
ロンドン五輪の時、イギリスのスポーツ文化の成熟を感じた。
どこへ行っても現地の人から声をかけられた。
ボートレースの会場には仮設の遊園地があり、家族で観戦ができた。
ボランティアの意識の高さも感じたという。
「現地の人は代表選手を通して日本のイメージを作る」と実感した。
日本で五輪が開催される時は、海外から多くの人が日本を訪れる。
「日本国民全員が日本代表」という意識を持ち、もてなすことが大事だ。
<スポーツ女子へのメッセージ>
「今やっていることに全力を注ぎ、自分に限界を作らないこと。
スポーツでも勉強でも中途半端にしない。
今目の前にある壁を乗り越えればきっと次につながります。
自分がやってきたことに誇りをもち、私なら出来る!と信じて取り組んでください!」
<モチベーションを上げる時に聴いていた曲>
サザンオールスターズの「轍」
<プロフィール>
氏名 | 岩本 亜希子 |
生年月日 | 1978年9月25日 |
出身地 | 長野県諏訪市 |
・略歴
1994年 | 長野県立岡谷南高校入学 |
1997年 | 早稲田大学入学 |
2001年 | 日本体育大学大学院入学 |
2003年 | アイリスオーヤマ株式会社入社 人事部所属 |
・主な戦歴
2000年8月 | シドニーオリンピック 女子軽量級ダブルスカル 14位 |
2002年10月 | 釜山アジア大会 女子ダブルスカル 銀メダル |
2004年8月 | アテネオリンピック 女子軽量級ダブルスカル 13位 |
2005年8月 | FISA世界ボート選手権 女子舵手なしクオドルプル 9位 |
2006年8月 | 世界選手権 女子軽量級ダブルスカル 15位 |
2006年12月 | アジア競技大会 女子軽量級ダブルスカル 2位 |
2007年8月 | 世界選手権 女子軽量級ダブルスカル 9位 |
2008年4月 | 北京オリンピックアジア予選 女子軽量級ダブルスカル 優勝 |
2008年9月 | 北京オリンピック 女子軽量級ダブルスカル 9位 |
2009年8月 | 世界選手権 女子軽量級シングルスカル 13位 |
2009年12月 | 東アジア大会 女子軽量級シングルスカル 3位 |
2010年11月 | 世界選手権軽量級 女子ダブルスカル(LW2×) 14位/16ヶ国 |
2010年11月 | アジア大会 女子軽量級ダブルスカル 銀メダル |
2011年5月 | ヒューゲルレガッタ 女子軽量級ダブルスカル 5位 |
2011年6月 | ラッツェブルグレガッタ 女子軽量級ダブルスカル 4位 |
2011年8月 | 世界選手権 女子軽量級シングルスカル 10位 |
2012年4月 | ロンドン五輪アジア大陸予選 女子軽量級ダブルスカル 優勝 |
2012年8月 | ロンドンオリンピック 女子軽量級ダブルスカル 12位 |
2012年8月 | 世界選手権 女子軽量級クオードルプルスカル 10位 |
(国内大会については省略させていただきました)
RanRun yukiyanagi