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野球も会社組織も、個人が強くなることでチームが成長する

この夏、世界中の注目を集めたリオオリンピック・パラリンピック。日本が史上最多の41個のメダルを獲得し、大いに盛り上がりをみせた。その舞台裏で、スポンサーとして華やかな祭典を支えたのがパナソニック。社会人野球選手として活躍後、オリンピックをスポンサーとして支える仕事に転身したオリンピック・パラリンピック課 課長 小杉卓正さんに、仕事との向き合い方を伺った。

 

社会人野球選手から世界を股にかけるオリンピック担当へ

小学校3年生から野球一筋だったという小杉卓正さん。野球の名門・東北福祉大学では、大学3年時の春リーグで最高打率賞を獲得。リーグ歴代最多打点も記録し、MVPにも選出された。
「オリンピックを最初に意識したのは、大学4年生の時に開催された2000年のシドニー大会。7年来の友達が代表に選考され、私も代表になりたいと頑張りましたが、叶わなかった。その4年後のアテネを目指しましたが、この時も代表に選ばれず、その後、社会人野球の選手を引退しました」

 

野球選手として憧れ続けたオリンピック。そのオリンピックに関わるチャンスが訪れたのは引退して4年後の2008年、北京大会開催の年だった。引退後はパナソニックの門真工場で勤務をしていたが、オリンピックマーケティングの部署へ異動することになったのだ。
「野球はやめてしまったが、なんらかの形でスポーツに関わりたい、スポーツ関連の仕事で会社に貢献したいと、ずっと思っていました」

 

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「何かスポーツに関連した仕事を」。そう思った時に、まず始めたのが英語の勉強。世界を相手にする仕事では、英語力は必須。工場勤務の傍ら、毎日コツコツと勉強を続けた。飛躍的に英語力は向上し、現在はTOIEC880点の高得点を獲得している。
「それまでは野球一辺倒だったので、英語なんて全然できませんでした(笑)。でも、野球のお蔭で、目標を決めてそこに向かって努力するのは慣れていたし、よっぽどの苦労でも乗り越えられるメンタルは身に付いていました」

 

努力と仕事への意欲が認められて、念願のスポーツに関わる部署へ。オリンピックという世界を舞台にした一大イベントの窓口を一手に引き受ける仕事だった。ワールドワイドな仕事のため、猛勉強した英語を活かす機会も頻繁だ。細かい書類のやりとりや会議での交渉、メールは英文の方が多いくらいだという。

 

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オリンピックの理念に賛同し企業としてサポート

配属されたスポーツマーケティングの部門では、これまでバンクーバー、ロンドン、ソチ、リオの4大会を経験。様々な交渉を進めながら、商品納入やプロモーション、ホスピタリティなどを実現してきた。海外出張も多く、IOC本部のあるスイスやオリンピック開催国などへも頻繁に足を運ぶ。リオでは開催2週間前から現地入りして、さまざまな準備に当たっていたという。

 

「オリンピックでは、開催年の6年前から動き始めます。夏と冬で2年ごとにあるので、常に3大会を同時進行で進めているイメージです。例えば、この夏は開催中のリオ、2018年の平昌冬季大会、そして2020年の東京夏季大会と3つのプロジェクトを抱えていました」

 

パナソニックは1988年からIOCとオリンピックの最高位スポンサーであるTOP(The Olympic Partner)を結ぶほか、パラリンピックでも日本企業最初のワールドワイドパートナーとなっている。「パナソニックは、スポーツを通して世界平和を実現するというオリンピックの理念に賛同し、長年TOPパートナーとしてオリンピックを応援してきました。私たちの事業・ソリューションを通じて、スポーツから得られる感動を全世界の皆さんに共有していきたい。“Sharing the Passion”が合言葉です」

 

パナソニックがスポンサーとなるのは、映像や音響機器を中心としたAV機器の分野。リオでは、大型LEDスクリーンや放送用カメラ、音響機器、セキュリティカメラなどを提供。中でも最も注目すべきは、開会式・閉会式で披露された華やかなプロジェクション・マッピングだ。

 

開会式では、マラカナン競技場のフィールドに伸び縮みするたくさんのビル群を人が飛び移るような演出を。閉会式のさまざまな言語で書かれた「ありがとう」という人文字や、フィールドいっぱいに広がった日の丸も、プロジェクション・マッピングによるものだ。

 

「オリンピックは、パナソニックの今後の方向性を全世界に発信する場でもあります。当社は、現在、B to Bソリューション事業にも力を入れており、その1つの形としてリオ大会で披露したのが、プロジェクション・マッピングでした」

 

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オリンピックを裏方として支える「やりがい」

開会式、閉会式の現場に立つ小杉さんの目の前で繰り広げられる、壮大なセレモニー。「安全面など周到な準備が必要で、これまでの大会で一番きつかった」(小杉さん)というほど、様々なプレッシャーと戦ってきただけに、大成功の歓声に沸くリオには、ひときわ感慨深いものがあった。それは、次の大会の舞台が2020年の東京であるということも、もちろん大きい。
「特に世界中から称賛された閉会式の東京ハンドオーバーのパートは格別でした。アスリートとアニメのキャラクター、中でも、マリオに扮した安倍首相が登場し、プロジェクション・マッピングとダンスの融合などの素晴らしい演出から、日本人として、“日本”を誇りに感じました。東京オリンピックがすばらしいものになるに違いない、と思いました」

 

会期中は裏方として忙しく過ごしているため、試合を見るチャンスは少ない。現に、今回は卓球男子の日本―ドイツ戦を観戦したのみだったというが、「元アスリートとして、フィールドで戦っているオリンピアンを見ていると、自分もフィールドに立ちたいという感覚になることはあります。でも、“現場を支えている、貢献している”という自負のほうが大きいですね。それが、今のやりがいで、働く意義だと感じています。今は、この仕事が天職だと思っています」

 

個人が強くなることで、チームが強くなるのは、スポーツも会社組織も同じ

野球選手として長年スポーツを続けてきた経験は、社会人となってからも様々な点で役立っている。特にチームプレイである野球は、会社という組織で仕事する上で、学ぶことが多い。
「幼い頃から強いチームでやってきたので、個人の能力がチームを強くするということは、経験から痛感しています。同じチームや組織のメンバーが切磋琢磨することで、自分に磨きをかけ、それがチームを強く変えていく。社会人も同じで、いいものを作りたい、いいチームを作りたいなら、まずはそれぞれが頑張ることが土台になっていくはずです」

 

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一方、管理職としてチームを引っ張る立場としては、メンバーを「引っ張る」「押し上げる」の両輪を心がけている。
「今は、物事が物凄いスピードで変化していく時代。同じことをやっていてはうまくいかないので、環境の変化をみながら、チームとして常に変化し、成長していかなくてはいけない。メンバーにはミッションとビジョンを的確に示してリードし、サポートする。全てがうまくいく訳ではないですが、個々のポテンシャルを上げることで、チーム全体に相乗効果を生むように心掛けています」
結果として、自然に変化や成長が起きていくという好循環を持った組織が生まれていくという。

 

「スポーツからの学びは、社会人になってから必ず役に立つ」

自分の将来に向き合い、真摯に努力することで、やりがいある仕事を手に入れた小杉さん。
最後に、これからのキャリアに迷うスポーツ女子に向け、メッセージを贈ってくれた。

 

「スポーツが与えてくれるものは、素晴らしい。僕自身も、努力することを始め、多くを野球から学びました。今、スポーツに打ち込んで頑張っているのであれば、それは決して間違ってはいない。迷うことなく、目の前のことに全力を費やしていれば、必ずチャンスはやってきます。その経験は、社会人になったときに必ず活きてくるので、自信を持って頑張ってください」

 

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<モチベーションを上げる曲>
サザンオールスターズ「東京VICTORY」
東京オリンピック招致のテーマソング。この曲を聞くと「ヨッシャ!」という気分になれる。

 

<プロフィール>
小杉卓正(こすぎ・たくまさ)
1978年12月5日生 和歌山県出身
東北福祉大学卒
パナソニック株式会社 ブランドコミュニケーション本部 宣伝部
スポンサーシップイベント推進室 オリンピック・パラリンピック課 課長

 

<主な戦績>
1999年、東北福祉大学3年生の春シーズンで、仙台六大学リーグ最高打率賞を獲得。
歴代最多打点の記録を樹立し、MVPに選出。

 

チームは、大学在学時の1997年~2000年、リーグ戦8季連続優勝。全日本大学野球選手権大会4年連続出場のうち、準優勝1回、ベスト8 2回。明治神宮野球大会4年連続出場のうち、準優勝1回、ベスト8 2回。世界国際野球大会3位。ハワイ国際野球大会優勝。

 

松下電器野球部(現パナソニック野球部)在籍時の2001年~2004年、都市対抗野球大会
4年連続出場のうち、ベスト4 1回、ベスト8 1回。社会人野球日本選手権大会4年連続出場のうち、ベスト8 2回。

 

<ライター>
工藤千秋(くどう・ちあき)
モチベーションを上げる曲  Hi-STANDARD / Stay Gold