日女体大 喜多楓さん ありがとうと言ってもらえるような行動を

「将来は香川県で一番強いバスケットボール部を作りたい」
ロールモデル第10回は、日本女子体育大学で助手として勤務し、バスケットボール部のコーチとして学生の指導に当たっている喜多楓(きた・かえで)さん。
バスケをこよなく愛する喜多さんに、バスケとの出会い、魅力、将来の夢、学生へのメッセージなどを伺った。
バスケとの出会い
喜多さんのバスケとの出会いは、小学校3年生のミニバスケットボールチームへの誘いだった。以来、中学、高校、大学とバスケ部で活動してきた。大学3年で選手を辞め、引退まで学生コーチとして関わった。卒業後は、香川に帰る予定だったが、大学の先生から声がかかり助手として残ることにしたという。指導者としてバスケに関わっていきたいと考えていた喜多さんにとって、助手を務める3年間は指導者になるための勉強期間でもある。今年、助手として2年目を迎えた。
バスケの魅力
ブザービートという言葉を耳にしたことがあるだろう。試合終了のブザーが鳴るのと同時にシュートがゴールに入ることを指す言葉だが、バスケットボールは最後の1秒で逆転することがある。喜多さんにとってのバスケの魅力は、40分の試合の最後の最後までハラハラし、勝負の行方がわからないことだという。
高校までの選手時代は、チームの司令塔であるポイントガードを担当した(大学時代はフォワード)。喜多さんが一番好きなポジションだ。チーム全員のプレーの癖を把握し、攻めるためのセットプレーを考える。対戦相手に合わせたセットプレーを組み立てる楽しさがある。作戦通り試合が運んだ時の満足感が、ポイントガードの醍醐味だ。
大学と高校のバスケットボールの違いを「高校は指示通りにいかに動くかが課題だが、大学では高校よりも頭を使って考えて動かなければならない」と説明する。
ポイントガードとして、上手く試合を作れない時が一番辛かったと話す。試合に勝っていても納得のいく試合運びができなかった時は、悔しくて、試合後に一人で走ったりひたすらシュートをしたりして、自己解決していたと振り返る。
もし、その時の自分にアドバイスするとしたら、「一人で抱えずに仲間に声をかけろ、と言いますね」と微笑んだ。やはり、大学のバスケが一番面白いと言う。
指導者としてのスタンス
日本女子体育大学のバスケ部は、毎年120~130人が所属する大所帯で、A1・A2・B・審判の4ブロック体制になっている。喜多さんは、日中は、助手として4人の先生の授業で補助をして、放課後はバスケ部の3軍に当たるBブロックのコーチを担当している。
Bブロックの選手は、バスケットの経験値の差が大きく、基礎的なところから教えないとならない学生も多い。一人一人にあった指導と言葉がけを意識しているそうだ。
自分が選手の時にコートの中で見えていたものを、今はコートの外からどう伝えるか。
感覚でしていたことを言葉で伝えることの難しさを痛感している。
できない人に合わせるのではなく、高いレベルでの練習をすることで全体の引き上げを狙う。個別に声をかけ選手達にも協力してもらい、練習ではできている人ができていない人のサポートをするように指導している。得意なことも不得意なことも人それぞれなので、チーム競技の魅力は、そこを仲間同士で補っていけることだと説明する。
学生と社会人の違い
学生時代は、目立ったり、仲間と群れたりするのが嫌いだったという。一人で授業を受け、一人でいることが好きだったそうだ。一人で勉強していて興味のあることは、とことん勉強した。指導者になりたいという希望から、自分が目標とする先生の授業を取るようにしていた。
しかし、社会人は人との関わり方が異なる。学生の時は、心のどこかで「許されるだろう」と安易に考えていた部分がある。社会人は責任感が必要なので、行動する前に一度考え自問自答するようになった。
今、学生と接するうえで気を付けていることは、学生のモチベーションを下げない、意欲をなくさないことだ。学生の気持ちを考え、いいところを見つけてあげる。コーチと学生の間でも、コミュニケーションの大切さを実感した。事実、学生に声をかけてあげるとその学生が生き生きしていることが分かった。以後は、自分から挨拶するようにし、バスケ以外のところでも声をかけるようになった。
今後の目標
今、指導をしている選手達が少しでも上手になり、1つ上のブロックに行けるようにサポートしたい。バスケを通して培ったものが彼女たちの将来につながるように、教えてあげたいと思っている。
助手の任期はあと1年。その後のことはまだわからないが、5年後も指導者としてバスケに関わっていたいと思う。そのために、今は上のブロックの指導者から所作を学んでいるところだ。理想の指導者像は、選手達の気持ちをよく理解し、選手達からも意見を言ってもらえるような関係が築ける人。威厳もありつつ親しみもある、現在、バスケ部を指導している柴田雅貴監督、佐々木直基コーチのようになりたいと教えてくれた。
将来的には地元香川県に帰り、母校のバスケ部を香川県で一番強いチームにしたい。
誰からも応援してもらえるようなチーム作りをして、あの先生にバスケを教えてもらいたいと思われるような指導者になりたい。
スポーツを通して培われた力
バスケットボールを通して「感謝の気持ち」を持てるようになったという。ある時、選手同士で「ありがとう」の言葉を交わすようにすると、仲間同士で助け合う関係が築けるようになった。
練習以外でも仲間と関わることの大切さに気付き、それからは、普段から「ありがとう」と言われるような行動を意識するようになったそうだ。
「謙虚な心」を持ち、「ありがとう」と言われるような行動ができるようになると、社会に出てからも、必ずそれが活きてきます、と喜多さんは話してくれた。
学生へのメッセージ
日本女子体育大学のバスケットボール部は、常に120人以上が在籍する。バスケットの技術だけでなく、組織的な経験や学びができる場でもあります。
大学で人数の多い運動部に所属することは、大変な面もあるが、その分、“頑張ってきて本当に良かった”と思うことが多いですよ。
モチベーションが上がる曲
ケツメイシの曲を常に聴いています
<プロフィール>
喜多 楓(きた・かえで)
日本女子体育大学卒
日本女子体育大学助手
RanRun yukiyanagi