大東大テコンドー部 「社会、かかってこい」練習で精神力を磨く

瞬速の足技が魅力のテコンドー。練習の様子を見学に、インカレ4連覇を狙う大東文化大学テコンドー部を訪問。石井佑佳さん(国際関係学科新3年)、和田璃子さん(国際関係学科新3年)、岩城遥風さん(国際文化学科新2年)、神近塔子さん(法学部政治学科新2年)の4人に、テコンドーの魅力、競技を通して成長したことや今年度の目標など話を聞いた。
「小学校1年生のころ、友達に誘われて空手を始めた」という石井佑佳さんは小学校6年生までは道場で空手とテコンドーの両方に取り組んでいた。
中学時代にバレーボールやソフトボールなどの団体競技も経験したが、自分には個人競技の方が向いていると実感したという。
「団体競技はチームに対して責任があるので少し荷が重かったのかな。個人競技は自分次第で勝ち負けが決まるので全てが自己責任ですから」と話す。
実家が空手道場の和田璃子さんは、幼稚園の年長から空手を始めた。
小学校3年生の時、空手の技の中で特に蹴りが苦手だった和田さんは、足技を練習する目的でテコンドーを始めた。そして高校1年生からは、競技をテコンドーに絞ったという。
「ポイントを取っていく楽しさがテコンドーの魅力です」と和田さん。
電子機器でポイントの判定をするテコンドーは、ただ当てるだけではだめで、ある程度の威力を満たさないと機械は反応してくれない。
「でも、え?っていう時もあるんですよ!」「そうそう」など、テコンドーあるあるで盛り上がる。
空手でなくテコンドーを選んだ理由を尋ねると、「テコンドーはオリンピック競技ですから」と返って来た。テコンドーは2000年のシドニー五輪から正式種目になっている。日本では空手に比べると馴染みが薄いテコンドーだが、世界では柔道よりも競技人口が多いのだとか。
やるからには、世界を目指す。和田さんは、全日本優勝そして世界を目標に見据えている。
「幼い頃、やんちゃだったんですよ。男の子とケンカして殴られたのが悔しくて、私負けず嫌いだから」と笑う岩城遥風さん。
もともとご両親が格闘技好きだったこともあり、男子に勝ちたくて空手を習い始めた。
道場は男子ばかりだったが、「男子に勝てればいい!」の気持ちで頑張っていたそうだ。
唯一道場で同じ女子メンバーで頑張っていた友達がテコンドーを始めたのをきっかけに、自分もテコンドーを始めた。
テコンドーの魅力について岩城さんは、「アクロバティックなところが魅力。空手は男子の方が向いているように感じるけど、テコンドーは足技がメインの競技で、足をすごく高く上げるので、体が柔らかい方が大技を出しやすく、女子にも向いている」と教えてくれた。
神近塔子さんがテコンドーを始めたきっかけは、近所のスーパーに貼られていたチラシ。
幼稚園の年長さんの頃、格闘技好きな父から護身術を身に着けた方がいいと勧められ、姉と一緒に習い始めた。
将来警察官を目指す神近さんは、警察官になるには柔道や剣道がメジャーでテコンドーは不利だと聞き、高校1、2年生の時は柔道をやっていたそうだ。
3年生でテコンドーに戻ったが、毎日練習に励み過ぎて、受験期は部活を控えて勉強に専念するよう先生から言われてしまうほど。それでも練習日を少し減らす程度で頑張って両立を続けた。
テコンドーの魅力について「体力だけでなく心も鍛えられるところ」と話す。
点差が大きく負けていたとしても、ポイント制ということもあり、最後まで諦めなければ逆転も可能なことを魅力に挙げる。
テコンドーを通して成長したことを尋ねた。
「自分では粘り強さはある方かな?と思っていましたが、大東文化大学に入ってからはまだまだ自分には粘り強さが足りないと感じました」という神近さんは、過去の苦い経験を話してくれた。
神近さんは、一度だけコールド負けの経験がある。試合時間の最後まで、試合をさせてもらえなかったことが何よりも悔しかったそうだ。
「自分に負けた気がした」と言い、それからはどんなに辛い状況になっても諦めず、最後まで相手に食らいついていく強さが身に着いた。
元々負けず嫌いの性格が、テコンドーを始めてさらに負けず嫌いになったというのは、岩城さん。
1、2ラウンドで大差をつけて負けていたが、3ラウンド目で挽回し、延長ゴールデンポイントラウンドに持ち込んだ試合があった。
しかし、最初の1点を先制した方が勝つ緊張感と怖さから、あと一歩が踏み出せず、結局負けてしまった。
自分自身に負けたと強く感じたという。
「それだから負けるんだよという言葉で、その時の試合がフラッシュバックするんです」と語る岩城さんの目は真剣だった。
テコンドー以外で、負けず嫌いな部分が発揮される場面はあるか訊いてみると、「勉強かな。本当は勉強とか苦手だったのですが、大東文化大学に入ってテコンドーをやりたいと受験することを決めてからは、毎日夕方から夜遅くまで勉強を頑張りました。やりたくないという自分の気持ちに負けたくなかった」と教えてくれた。
神近さんも岩城さんも、「自分に負けたくない」気持ちが原動力になっている。
集中力が身に付いたと答えたのは、和田さん。
例え3-0で負けていたとしても、残り10秒の集中力で結果が変わることがある。
試合は最後までわからない。逆に勝っていたとしても油断は大敵だ。
この集中力は日常でも発揮されている。
石井さんは、大学のテコンドー部に入ってから結果にこだわるようになり、上を目指すようになったという。
高校の時はそれほど結果を気にすることもなく、テコンドーをやっていたそうだが、コーチに大東文化大学に進学してテコンドーを続けてみないかと勧められた。
将来は実家の家業を継ぐために経営学を学ぶつもりでいた石井さん。その時、同大学テコンドー部のスポーツ推薦保有枠に経営学科が入っていなかったため、どうするか迷ったそうだ。スポーツは若いうちにしかできないと考え、大学でテコンドーの技を磨くことに決めた。
中学・高校では「やらされている」という意識が強く、ビリじゃなければいいやくらいの気持ちだったという石井さん。
大学に入ってからは「自分がやりたいからやっている」という意識に変わり、できるだけ上にいきたい、目指したいと思うようになった。
「部活をやってない人よりへこたれないし、打たれ強いし、社会でも通用する精神面は身に付きました。合宿を乗り越えたから、もうなんでも乗り越えられると思っています!」と笑顔をみせる。
部活ではチームを引っ張る立場になる石井さんは、部のために自分の意見を言えるようになったと、自らの成長を感じている。
上下関係だけでなく、意識の面で“落ち着き”を学んだといい、「社会かかってこい!」という感じですねと力強く語った。
今期の目標をそれぞれに語ってもらった。
石井さん
「部としては団体3連覇の記録を途切れさせるわけにはいかないので、前人未踏の4連覇をします。自分自身も優勝します。全日本ではベスト8止まりだったので、少しでもいい色のメダルを獲るべく大きい相手に立ち向かっていきます!」
和田さん
「インカレでの4連覇は部としての目標です。去年は個人でも優勝できたので、今年は連覇します。全国大会でも優勝します!」
岩城さん
「私は今、怪我をしてしまっているのですが、怪我を理由に負けたくないと思っています。怪我をしていても勝てるというスタンスが目標です。部の4連覇に貢献し、全日本では表彰台に上がります!」
神近さん
「部の4連覇が団体の目標です。個人としては全日本で2位だったので、次は金メダルを獲ります!」
インタビューの後、練習を見学させてもらった。
「試合より練習の方が激しいですよ」と笑顔を見せていた4人だったが、練習が始まると顔つきが変わった。
昭和女子大学新4年 峯尾陽香