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日本大学女子柔道部

日大女子柔道部「柔道」を通し社会で活躍する人になる 

ピープル 2018/06/15

「礼に始まり礼に終わる」柔道は競技と教育の2つの面を持つと言われる。日本大学スポーツ科学部柔道場を学生スタッフと訪問、日本大学柔道部女子部門の部員に会ってきた。北田典子監督(ソウル五輪銅メダリスト)の元、全国から集まった女子部員30名が練習に励んでいる。主将・矢北楓さん(法学部政治経済学科4年)とマネージャー・西山菜月さん(スポーツ科学部競技スポーツ学科)3年に話を聞いた。

 

柔道との出会い
アニメ『YAWARA!』を観て男の子を投げ飛ばす主人公の姿に憧れ、小学1年生から柔道を始めた矢北さん。初めは乗り気でなかった両親に、やるからには途中で辞めることはならないと約束し、柔道一筋で取り組んできた。「父は特に厳しかったですね」と苦笑い。
宮崎県延岡市出身の矢北さんは、中学から寮生活になり、親元を離れて10年になる。

「柔道は嫌になっても好き」という矢北さん。
思うように動けなかったり、ケガをしたり、もう無理だと思う場面になる度に、柔道は好きで始めたこと、「信念を曲げるな」と父の叱咤激励があったという。

高校3年生最後のインターハイの時、団体戦でケガをしてしまった。
団体戦は勝ったが、翌日の個人戦はテーピングをして臨んだものの技をかけることができなかった。

高校で柔道は辞めるつもりでいた矢北さんだったが、このままでは後悔が残ると考えた末、九州での優勝経験を糧に、大学で日本一を目指すことを決めた。

大学1年生で大きなケガを負い、3年生の冬には手術を受けた。
体重が増え、階級も2つ上がった。
学生最後の今年、自分の柔道にしっかりと向き合っている。

 

柔道を通して成長したこと
矢北さんは自分から主将に立候補した。ケガからの復帰前だったため、部の中で責任を負う立場になることに、自信はなかったそうだ。
誰かがやらなければならない役職。
以前、故高木長之助前監督から「(主将を)やるならお前だよ」と言われたことがあり、自分がやらなければならないと手を挙げた。

主将になってからもケガが多く、自分の中の葛藤は続く。
「やるしかない」という言葉が幾度となく矢北さんの口から出る。

主将として、みんなの声が出るような部の雰囲気作りを心掛けていると教えてくれた。

現在、就活中の矢北さん。ケガをしたことで、人をサポートすることの楽しさも知ったと言い、卒業後はメディア制作側のスタッフとして活躍してみたいと話す。

 

柔よく剛を制す
柔道の魅力について尋ねると、西山さんは老子の思想を基調に書かれたと言われる『三略』の中の一節を答えた。
柔道には相手の力を利用して、相手を投げ飛ばす技がある。

小さい人でも大きい人を投げ飛ばすことができることから、「柔よく剛を制す」と表現するそうだ。

兄が柔道をやっていた影響で、自分も7歳から始めたという西山さん。
兄妹で体が小さかったそうだが、努力するうちに勝てるようになり、柔道が楽しくなっていったという。

「柔道が好き」
ケガをして辞めたいと思っても、1日練習を休むと柔道をやりたくなると笑う。

現在は、マネージャー・主務・トレーナーとしてサポート側で頑張る西山さん。
選手にテーピングを施し、体のケアをする。
試合の申込、合宿の手配など事務的な業務全般も担当する。
選手の練習相手にも相談相手にもなる。
「先生と学生の間の意思疎通を図るのが一番大変かな」と笑う。

選手を支える側の西山さんだが、自身は選手に支えられていると話す。
「ありがとう」と選手から感謝の言葉を言われることで、頑張ろうと思いモチベーションにつながっている。

大学のスポーツサポートコースで学ぶ西山さんは、コーチング、スポーツ栄養、健康管理などの授業も受けている。

柔道は体重別の試合があるため、選手によっては増量や減量をしなければならない。
1年生の時に、体調に応じた練習メニューをグループで話し合う授業があり役に立っていると話してくれた。

 

部活を通し成長したこと
選手時代に、精神面が強くなった。
今は人と関わることが多くなり、外部の団体や企業とメールをやりとりしたり、コミュニケーションスキルが身についた。

 

礼に始まり礼に終わる
高校時代、腰を痛めて練習もきつかったと振り返る。
県大会決勝で勝てずなかなかインターハイに進むことができなかった。
決勝で勝とうと挑んだ高校3年生の県大会、勝つことはできなかったが、挫折から這い上がり全力で臨むことができた。
相手がいるから柔道ができることの喜びをあらためて感じたそうだ。

柔道場に入る時、開始前、終了後、必ず一礼する柔道家の精神は、自分が柔道をできる環境全てへの「感謝」も含まれているのかもしれない。

 

 

大学スポーツは社会に出る前の勉強の場
昨年から指導者として同部のコーチを務める西田優香さんは、自身が現役アスリートだった時と競技への向き合い方が変わったと話す。
自身が現役の時は、勝つことが仕事であり、勝つために練習をしてきた。

大学の部活は教育の場であることを常に意識していると言う。
4年間で柔道だけでなく、礼節や我慢すること、社会の仕組みなどを学ばせる場と捉える。

そのために、競技だけでなく当たり前のことをしっかりできるように指導する。
部員のほとんどは寮生活をしている。それぞれに役割分担があり、食事の準備をする人、健康管理をする人などの係もあるそうだ。
毎朝、寮全体の掃除もしている。柔道部とサッカー部でやっているのだとか。

企業の柔道部から出稽古に来る仕組みもできた。
社会人と接することで学生達にプラスになる環境を作っている。
「自分がいなくても回るチーム作りが目標です」と西田さんは微笑む。

 

インタビュー後に練習を見学させてもらった。
静かな練習場の中で淡々と準備運動がスタートする。
柔軟体操をする部員の体の柔らかさに、あらためて驚かされた。

 

文 yukiyanagi   写真 峯尾陽香

 

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