女性が活躍できる環境を整える①

「企業研究って何をすればいいの?」 就活を前にした学生からよく聞かれるフレーズです。「平成28年度均等・両立推進企業表彰 表彰式・シンポジウム」が2016年12月12日、東京ウィメンズプラザ(東京都港区)で開催されました。表彰企業の取組みについて、ご紹介したいと思います。
【均等推進企業部門 厚生労働大臣優良賞】
■株式会社池田泉州銀行(大阪府)
管理職に昇進するためには、幅広い業務の経験が必要になります。女性の管理職候補を増やすために、女性従業員の職域の拡大と早期育成・早期登用の取組みを実施。現在、女性支店長は10名ですが、平成32年度までに30名程度に増加させることを目標に設定しているそうです。
職域の拡大
海外拠点の拡大を図るにあたり女性の投入を検討し、グローバルに活躍したい女性の能力が発揮できるように、海外トレーニー派遣制度における女性の積極的な派遣を実施。短期トレーニーでは女性10名、男性13名の派遣実績をあげました。
管理職登用
平成27年1月に人事制度を改定し、管理職早期登用のための必要在級年数を短縮する等の措置を実施。それと同時に支店長を社内公募し、支店長6名のうち女性2名が登用されたそうです。また、支店長育成枠の人事部トレーニー14名のうち女性11名を登用しました。
両立支援
育児休業からの復帰支援として、育児休業を取得する女性従業員に「プランニングダイアリー」というオリジナル手帳を配布。この手帳には、頭取直筆のメッセージカードが添付されているそうです。
また、先輩となるママ行員のアイデアを取り入れたスケジュール管理を実施しているそうです。
今後の取組み
働き方改革を実施して、男性の育児参加と女性の営業希望者が増えたといいます。法人向け営業の場で女性に活躍して欲しいと期待しているそうで、人材育成をしていきたいと語っていました。
■塩野義製薬株式会社(大阪府)
塩野義製薬では女性活躍推進の専門部署は置かず、現場で女性がイキイキと働けるようにと研究開発部門・営業部門等の各部門に課題解決ワーキングチームを設置し、部門の横断的な情報共有のために人事部が各ワーキングチームの仲介を担当しているそうです。
職域拡大
製薬会社の医薬情報担当者をMRといいますが、営業部門のMRに女性が就くようになったのは2000年を過ぎてからだそうです。MRには全国に転勤があることから、結婚や出産などのライフイベント時に女性従業員の離職率が高かったといいます。その障壁を取り除くために、営業職勤務地希望制度や営業職結婚時同居サポート制度が導入されました。
管理職登用
平成24年度から女性営業職を対象とした全国会議“Female conference”を開催し、目指すべき女性活躍推進の方向性や課題、アプローチ等について検討しています。この会議には、社長を含めた経営トップが終日参加しているそうです。結果、性別を問わず、どう力を発揮するかという意識に変わってきたといいます。
女性の管理職を増やすためには、女性従業員の意識改革をし、幹部候補リストに女性をどう載せていくかが課題になります。幹部候補になると、研修に参加、少し背伸びした仕事に就くなど、鍛えられる環境に一歩進むことができます。上長があと一押しする意識を持つことで、意識改革を進めてきました。結果、管理職に占める女性の割合が増加したそうです。
今後の取組み
MRの女性管理職を増やしていく予定だそうです。
また、女性の幹部候補育成は研究職においても同様ですが、研究職でマネージャー以上に昇進したい人の割合が男性60%に対し、女性は15%だったといいます。
製薬会社は、新しい薬を作るためにイノベーションを起こす必要があります。女性研究者も活躍ができるよう、ていねいに育てていきたいと話していました。
■DHLジャパン株式会社(東京都)
DHLジャパンでは、女性活躍推進プロジェクトWIL(Women in Leadership)を平成26年より全社展開。人事部内に10名のプロジェクトメンバーによる「WILオフィス」を設置し、現場の従業員の声を反映するために有志社員による「WILコミッティ」を組成、全社に反映する取組みをしています。
職域拡大
「WILコミッティ」は、多様な役職、部署の従業員有志が集まって女性活躍推進に取り組んでいます。定例会議の他に、社内の女性リーダーを招いた座談会や社長へのプレゼンテーション等を行い、若手の能力開発やネットワーク構築につながっているといいます。活動メンバーのうち、3名の女性が管理職に昇進したそうです。
女性従業員への意識調査を行った結果、キャリアの現状維持を希望する女性が多かったといいます。そこでキャリア形成支援・意識改革を目的として、経営陣をメンターとした女性従業員向けのメンタリングプログラムを実施したところ、メンティーとなった女性従業員のキャリアに対する考え方が変わったそうです。結果、4名が昇進を果たしました。
また、女性従業員を対象としたキャリア開発ワークショップを国内グループ会社合同で開催し、ロールモデルの紹介、パネルディスカッション、ワークショップを行ったところ、役職につくことへの意識がプラス思考になったといいます。
取組みの成果として、これまで女性の少なかった集配スタッフや荷物仕分スタッフの女性割合が増加。平成26年度と28年度を比較すると、集配(ドライバー)は5.8倍にもなったそうです。
また、管理職に占める女性の割合も課長・部長クラスで増加し、平成26年度と28年度の比較では課長クラスが1.5倍、部長クラスが1.3倍になったそうです。
今後の取組み
DHLジャパンでは、ポストに空きができると全社員に公募の情報が伝達されます。昇進は「JOBポスティング制度」(社内公募)になっているので、キャリア意欲を高める取り組みを行った結果、キャリアアップを目指す女性従業員が着実に増加しているそうです。登壇したDHLジャパンの渡辺氏は、「ヤル気のある人の支援、リーダーシッププログラムを実施し、女性社員のヤル気に火をつけてチャレンジする人を増やしたい」と話していました。
講評
女性の活躍推進及び両立支援に関する表彰検討委員会で座長を務める武石恵美子氏(法政大学キャリアデザイン学部教授)は、表彰式の講評で「人を大切にしていることが、心を動かした」と話していました。
審査ポイントとして、①明確なビジョンがあり、全社的な取り組みをしている ②管理職の女性比率を上げるための丁寧な取り組みと女性の職域拡大 ③女性の意欲に働きかける取り組みと女性技術者のロールモデル、模範となる働き方、意欲を高める取り組み の3点を挙げ、表彰を受けた企業は他社のモデルとなり、発信をしていって欲しいと話しました。
次回、女性が活躍できる環境を整える②として ファミリー・フレンドリー企業部門で表彰された企業の育児支援についてご紹介します。
RanRun yukiyanagi