女性が活躍できる環境を整える②

「出産後も働き続けたいと思っているのですが、面接で育児休暇について質問してもいいものですか?」いまだに、女子学生からそんな質問を受けます。ミスマッチを防ぐためにも、企業の意識、状況を確認しておくといいですね。なにより、働き続けたいという貴女の意思表示になります。
今、企業の課題は男性の育児休暇取得率になっています。女性の活躍推進には、男性が積極的に育児参画できる環境を作ることも大切だと議論されてきました。前回に引き続き、
「平成28年度均等・両立推進企業表彰 表彰式・シンポジウム」(2016年12月12日、東京ウィメンズプラザ)表彰企業の取組みについて、ご紹介したいと思います。
【ファミリー・フレンドリー企業部門 厚生労働大臣優良賞】
■大和証券株式会社(東京都)
従業員のワークライフバランス(WLB)を推進するために、人事部の中にWLB推進課を設置し、役員、部長、課長、若手社員が議論をしているという大和証券。19時前退社を励行したところ、各々が自分で時間のコントロールをするようになったそうです。
自分の時間を自らの能力を高めることに使う従業員が多く、CFP(CERTIFIED FINANCIAL PLANNER)の有資格者が増えたといいます。
両立支援
平成17年度から「女性活躍推進チーム」を発足し、女性が働きやすい環境を継続的に提供するための両立支援制度を整備しています。男女共に全ての従業員がモチベーション高く働き続けられるように、仕事と育児・介護の両立を多方面からサポートする取組みを実施しています
<キッズセレモニー休暇>
子供の入学式や卒業式などに出席できるよう休暇制度を整え、これまでに477名が取得したそうです。
<勤務地変更制度>
結婚や配偶者の転勤等で転居が必要になった場合、転居先で自社・グループ内の就労場所を提供する制度を整備しています。
<育児休業制度>
子供が3歳に達する日まで育児休業を取得することができ、最初の10日間は有給になるそうです。
平成27年度の育児休業の取得率は、女性が100%、男性が57,2%。男性の平均休業日数は10.1日。平成24年度の男性の取得率は2%だったそうですが、男性従業員とその上司に声掛けをすることで取得率は上がったといいます。「男性が育児休業を取得するのはおかしい」という意識から、「取得するのが普通だ」という意識に変化していきました。2020年度までに男性の育児休業取得率を100%にすることを目標に掲げています。
<介護休業制度>
介護の対象となる家族1人につき、通算365日を上限として4回まで分割して取得が可能だそうです。分割して取得できる制度は介護する側にとって優しい制度ですね。
■社会医療法人 明和会医療福祉センター(鳥取県)
病院という職場の特性として女性職員の割合が高く、明和会医療福祉センターでは全体で女性が69%、看護職・介護職では80%以上になります。病院の課題である夜勤や土日祝日の勤務者確保について、報酬ポイントやインセンティブを付与することで、全ての職員が納得感を持って勤務できるよう配慮。週休3日制を導入し、人に優しい病院作りに取り組んでいます。
両立支援
医師・看護師を含め従業員全体の負担軽減を考慮し、夜勤や土日祝日の勤務にはインセンティブを付与しています。職員がお互いに納得感を持ち、それぞれに適した勤務体系を選択できるように配慮されています。法定の施設配置基準より1割以上多く職員を確保することで、制度のスムーズな運用と急な欠員対応等をカバーしているそうです。
<インセンティブ・報酬ポイント>
夜勤、早番・遅番を担当する、土日祝日に勤務する等の場合、賞与と昇給率に報酬ポイントとして反映することで、モチベーションにつなげています。
夜勤や休日出勤の回数に応じてインセンティブとして賞与加算を実施。
ポイントを振り分け、ステップアップがお得になる仕組みを作っています。
<多様な勤務ステップ>
正職員には5段階の勤務体系があり、その他に短時間正職員、パートタイマーなど全部で7段階の勤務ステップを設け、職員が自身の希望で働き方を選択できるようにしています。勤務ステップは毎年1回希望を把握し、希望すれば月単位での変更が可能です。
短時間正職員には、勤務時間短縮型と休日拡充型の2パターンがあり、選択制になっています。休日拡充型は、週休3日制・隔週週休3日制になります。
<管理職の任期制度>
育児や介護など家庭の状況により、一時的に管理職の職責を重荷と感じる職員もいることから、管理職の任期制度を導入。希望して管理職を降りても、再挑戦できる権利を付与しているそうです。
■株式会社リコー(東京都)
働きやすい会社、辞めなくていい会社への取組みを1986年から実施してきた株式会社リコー。仕事と育児・介護の両立を支援するために、柔軟性の高い短時間勤務制度やシフト勤務制度等を整備してきました。2020年に女性管理職10%を目標に掲げ、数合わせではなく、能力ある人を増やす取組みをしていくと話します。
両立支援
コーポレート統括本部の人事部内にダイバーシティ推進の専任組織を設置、取組みの推進を実施。失効する年次休暇の積み立てを育児・介護休暇に使える支援休暇、両立支援コミュニケーションガイドブックの配布など職場風土の醸成を図っています。
<キャリアリカバリー策>
女性の活躍推進に2003年から取り組み、管理職になる前の層に対するアプローチを課題と位置づけ、育児及び介護休業期間を評価の対象外として、休業前後の成果を考慮して昇格・昇給査定を行うキャリアリカバリー策を実施しています。以前は、2年間の評価累積により昇格を判断していたそうですが、育児休業が不利になることから制度を変更し、復帰前のセミナーの開催なども実施しているそうです。
<終日在宅勤務>
育児・介護を理由として、月5日、同一週内では2日を限度として、終日在宅勤務が可能です。
<育児休業制度>
子の満2歳の誕生日が属する月の末日まで取得可能。休業期間が3カ月以内の場合は、10日間は有給となる取組みを実施。平成27年度の育児休業取得率は、女性97.5%、男性30.1%で、男性の平均休業日数は22.8日。管理職も6名利用したそうです。
<介護休業制度>
対象家族1人につき通算2年間取得可能で、何度でも取得できます。
<支援休暇>
子の看護、家族の介護、妊娠期の母性保護、配偶者支援、私傷病、ボランティア活動等に取得可能な休暇で、失効有給休暇を最大20日まで積み立て、有給休暇として利用することができる制度です。
<社内環境整備>
男性従業員の育児参画促進に注力し、マネージャーを対象としたワークライフ・マネジメントセミナー、配偶者の出産時に上司と本人に宛てた育児休業取得計画策定を促すメール配信などの取組みを展開しているそうです。
株式会社リコーの担当者は、両立支援の歩みを止めず、従業員の能力開発をすること、新しい価値の創造をすることで、企業価値が上がると今後の課題について話していました。
女性の活躍する環境整備、育児・介護支援など企業によって取り組み方は異なりますが、なんらかの取組みを行っているか、働く人に対する意識はどの方向に向いているか、知ることも企業研究のポイントです。
自分のパフォーマンスを最大限に発揮することを大前提に、企業の実施する取組みを調べてみてはいかがでしょう。
RanRun yukiyanagi