社会福祉ヒーローズ賞 若手日本一は仙台市の田中伸弥さん

全国社会福祉法人経営者協議会(以下、全国経営協/東京・千代田)は2019年12 月10 日(火)、東京・渋谷で開催した「社会福祉ヒーローズ」賞の全国大会で、全国から選抜された受賞者7 人から、「日本一の“福祉人” (社会福祉をチェンジする情熱にあふれる人)」を決定した。
社会福祉の第一線で活躍する若手スタッフを表彰する「社会福祉ヒーローズ」賞のグランプリ「ベストヒーロー」賞を受賞したのは、宮城県仙台 市の特別養護老人ホーム「ウエル千寿会」に勤務する、田中伸弥(たなか・のぶや)さん(38 歳)。
大会ではファイナリストとして 7人が、地域での活動や仕事(介 護・保育・障がい者支援等)への想いを、ステージ上でスピーチ。
大学教授をはじめ介護・福祉の分野で活躍する若手実践者などの審査員 6 人(30 票)と、未来の日本社会を支える大学生や専門学生ら 59 人(59 票)の計 65 人(89 票)の投票で、64 票を 獲得した最多得票者の田中さんが、日本一の栄冠を手にした。
現在、「入居者と住民が交流し合う特別養護老人ホーム」に挑戦する田中さんは、受賞スピーチで 「(プレゼン中に涙をしたことから)もう泣きません。このような栄えある賞を、私のような者がもらえたことは 大変光栄です。
老人ホームに就職してからこれまで、3K とされる介護のイメージを変えようと、無我夢中 でやってきました。
(老人ホームは)今も、8 人の人を看取る状況で、多くの人がそれを支えており、そんな一緒に働く皆さんのおかげで、この賞が獲れたと思います。
兄が事故に遭い、そんな矢先に母も亡くなり、(環境の突然の変化に、母親の)葬儀で泣けない自分がいました。
(身近の人の死をきっかけに入った老人ホームの世界で)そんな私が、現場でやってきたことが、間違いでなかったと報われた瞬間となりました。
いただいた賞のバトンを未来につなげて、新しい福祉というものを創り上げていきたいです」と 喜びを語った。
田中さんは、「入居者と住民が交流し合う特別養護老人ホーム(特養)」という、業界でも珍しいプロジェクトに挑戦している。
特養内に駄菓子屋をオープンしたほか、“子どもの孤食”を減らそうと、子どもとお年寄りらが集まる子供食堂も開設。
入居者と子どもの“多世代交流の場”として、特養が地元で親しまれている。
また、特養と地域を隔てる壁を取り除き、住民が自由に行き来できる“公園”のような庭を施設に完成予定。
散歩道やベンチを置いた休憩スペースを設け、誰でも気軽に入れる憩いの場にするという新たな取り組みだ。
さらに田中さんは、こうした取り組みにより、入居者を孤独にさせず、社会・地域との接点をしっかりとつくることで、 「看取り介護文化の再構築」につなげることも目指している。
「社会福祉ヒーローズ」賞とは
「社会福祉ヒーローズ」賞は、社会福祉の第一線で活躍する若手職員を表彰する賞として、2018 年に創設され、今回が2回目の開催。
第1回は 6 人に「社会福祉ヒーローズ」賞が授与され、京都府「みねやま福祉会」の櫛田啓(くしだ たすく)さんが、「ベストヒーロー」賞のグランプリを獲得した。
櫛田さんは、虐待などの事情により社会的な養育が必要な子どもを支援したり、障がい者施設・特別養護老人ホーム・保育所が同居する「ごちゃまぜの福祉」に施設長として挑戦している点が、評価された。
同賞初の取り組みとして今回、全国の社会福祉法人からのエントリー制を導入し、当協議会を中心とした前回の選出方法から門戸を広げ、候補者を募った。
「社会福祉の世界を変える意欲と実績のある若手」という選考基準のもと、大学教授など有識者による審査を経て、社会福祉分野の“ヒーロー”7 人を決定し、2019 年 10 月 18 日に発表した。
7 人は、6 府県(宮城・石川・京都・大阪・山口・ 福岡)で勤務する、平均年齢 33.3 歳(最年少 26 歳)の若手で、ファイナリストとして、12月10日の全国大会(プレゼンコンテスト)に進んだ。