人に安心感を持たせることが大事な仕事

大きなケガや病気をしたことのある人は、理学療法士のお世話になった経験があるだろう。
新人理学療法士の奮闘を描く映画『歩けない僕らは』が11月23日より公開になる。
主人公の宮下遥は、患者との向き合い方、仕事に対する考え方、そして自身の恋愛と悩みは尽きない。
映画公開を前に、同作品で先輩理学療法士・田口リーダーを演じた板橋駿谷さんと医療従事者を目指す学生のためのプラットフォームとして活動する医療系学生団体MFFとの座談会を開催した。
自身も二度の靱帯損傷を経験し理学療法士にお世話になったという板橋さんは、役作りだけでなく、患者の目線で医療者に求めること、人生の先輩として仕事への向き合い方などを熱い語り口でアドバイス。
MFFの前代表・武藤康介さん(医学部)と現代表・若林雛子さん(薬学部)は、板橋さんの人間的魅力と熱量に感動しきりだった。
座談会の様子を紹介する。
武藤:映画を観て、理学療法士はただ患者さんのリハビリをするのではなく、患者さんにしっかり向き合わなければできない仕事だと知りました。
若林:理学療法士を演じるにあたって気を付けたことは何ですか
板橋:自分自身、前十字、後十字両方の靱帯を切った経験があって、ひざの手術をした時に、理学療法士さんにすごくお世話になりました。
その時に、(理学療法士さんが)患者さんを絶対に不安にさせないように接してくれていたので、今回の役を演じるにあたりその点を意識して演じました。
(けがをした時は)本当に痛くて、二度と足が曲がらないんじゃないかと思ったのですが、理学療法士さんが絶対に不安にさせないようにしていて、これがプロだと思いましたね。
精神的に弱っている時に、「大丈夫ですよ。よくなっていますよ」とひと言かけてくれる。
べたべたするわけでもなく、突き放すわけでもなく、いい距離感で声をかけるのが上手で、人に安心感を与えるというのは、すごく素敵ですね。
「プロってなんだろう」と考えた時に、常日頃現場で120%ポジティブな状態でいられること、ポジティブでなくてもハイパフォーマンスなマインドでいられることだと思っていたので、理学療法士の人達を見て「うわぁ、この人たちプロだわ」って思いました。
映画の中でも描かれているけど、(恋愛で)フラれたりしても、自分の人生とは関係なく、患者さんに向き合わなければならない。
患者さんはその日の気分で(リハビリに対する姿勢が)左右されやすいけど、それに対して怒らずにしっかりケアをしてアテンドするのはやっぱりプロだなって思います。
だって(自分が)フラれた次の日に、落ち込んでいる人を励ますなんて普通できないですよね。
でも、それは将来、お二人の人生でも多分起こりうることだと思います。
(医者も薬剤師も)人に安心感を持たせられるかということが、すごく重要な役回りの仕事だと思うので、そういうことを大切にしてください。
武藤:今まで俳優さんとお話ししたことがなかったので、すごく緊張していました(笑)
いざお話ししてみると、(板橋さんは)すごく爽やかで、かつエネルギッシュでクレバーな方でした!
映画の説明はもちろん、板橋さんからは深イイ話も沢山聞かせて頂きました。
短い時間でしたが、素敵なひと時をありがとうございました。
この映画を観て、深く心に残ったことがあります。
それは、「理学療法士も患者さんの人生に向きあっている」のだということ。
ただ患者さんのリハビリをしているのではない。
医療者である以上、誰もがそれぞれの形で向きあっている。
考えれば当たり前のことです。
でも自分は理学療法士の一日に密着したこともなく、現役理学療法士の方からお話を聞く機会もなかったので、そんな当たり前な事にも気づいていませんでした。
他職種連携の重要性が増している今こそ、(『歩けない僕らは』は)医療系学生と医療関係者に観て貰いたい作品です!
ぜひ1度映画館まで足を運ばれてみて下さい!
②へつづく
取材協力 ヘアメイク:山崎惠子
©映画『歩けない僕らは』