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文京学院大学発 オピニオンレター

高齢者の「閉じこもり」~『年寄り扱い』は幸福感を下げる~

Topics! 2021/01/22

文京学院大学(学長:櫻井隆)が、人間学部心理学科 山崎幸子准教授が提言した、オピニオンレターVol.28「超高齢社会の中で増え続ける『閉じこもり』~『年寄り扱い』は幸福感を下げる~」を発行しました。

我が国では急速な高齢化が進み、2025年には団塊の世代が75歳以上を迎えて後期高齢者の数が一気に増えるといわれています。
社会の高齢化に対しては様々な課題がありますが、今回のテーマである「閉じこもり」の予防や解消もそのひとつです。

ところで皆さんは、閉じこもりとひきこもりの違いを知っていますか?

「とじこもり」と「ひきこもり」は年齢で明確にわけられています。
「閉じこもり」の定義は国によって若干の差異がありますが、日本では要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者のうち、外出頻度が週1回未満の人のことをいいます。
ここでいう外出とは、遠方への外出だけではなく、日常の買い物や近所の散歩、通院、また、家の庭など、家の敷地から外に出ることを指します。
つまり、高齢者が心身機能の低下などの影響を受け、家から外に出かける時間が極めて少なくなっている状態を指します。
それに対し、「ひきこもり」は未成年から現役世代までの人々が就労や就学をせずに自らの意思で家にひきこもっている状態を指します。

家の中に「閉じこもり」がちになると、周囲との関わりが減る上、視覚から得られる情報も減少するので、ますます心身の機能低下を招き、こうしたフレイル(虚弱化)の状態が進行すると、要介護状態からいずれは深刻な寝たきりになることに繋がりやすく、早期の死亡率も高まってしまいます。

そしてこの「閉じこもり」は、自分から外に出なければ生活が維持できない独り暮らしの高齢者よりも、配偶者や子ども世帯と同居している高齢者の方が、高い傾向にあるそうです。

また、歩いて行ける距離に商店街があったり、公共交通機関が充実している都市部に比べると、出かけられる場所が少ない地方の方が「閉じこもり」になりやすいといいます。

山崎先生たちが東京都荒川区で約1万人の高齢者を対象に行った、住環境を主とした「閉じこもり」の 関連要因についての調査(2006*1)では、 特に男性の場合、昼間過ごしている場所が和室で、床に直接座っている時間が長い方に「閉じこもり」状態との高い関連性が見られました。

家族からの過剰な年寄り扱いは、高齢者本人の幸福感にも影響します。
やりたいことがあっても「歳だから」と反対されたり、少し体調が悪いだけで「歳のせいだ」と言われてしまったり、ちょっとした物忘れを指摘されることなどがそれにあたります。

「閉じこもり」は病気ではなく、ひとつのライフスタイルです。
今のままでいいと思っている高齢者も多く、自宅の中で十分に健康管理ができていれば個人の見解として尊重されるべきなので、対応が難しい側面もあるため、相手の人格を尊重した関わり方、その人らしさが失われないための配慮が必要です。

まずは高齢者と向き合う家族は「過度に年寄り扱いをしないこと」そして、高齢者の方には「少なくても週に1~2回は“外”に出る」ことを心掛けていただきたいと山崎先生は提言します。

参考 文京学院大学オピニオンレター Vol.28

文京学院大学オピニオンレターVol.28

 

 

山崎 幸子准教授 プロフィール
文京学院大学 人間学部心理学科准教授

老年心理学、臨床心理学が専門。
研究テーマは、高齢者の閉じこもり、うつに対する心理的支援のあり方、高齢期の不適応に及ぼす家族機能の影響。
早稲田大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了後、福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座学内講師、福島大学人間発達文化学類兼任講師などを経て現職。
主な著書(共著)に『臨床心理学への招待[第2版]』(ミネルヴァ書房、2020 年)
『これからの在宅医療-指針と実務-』(グリーンプレス、2016 年)『心理学の視点 躍動する心の学
問』(サイエンス社、2015 年)『老年心理学 改訂版』(培風館、2012 年)『医療系のためのやさしい統計学入門』(診断と治療社、2009 年)など。

 

 

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