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体は食べ物でできている「女性スポーツ勉強会」参加報告

体は食べ物でできている「女性スポーツ勉強会」参加報告
Topics! 2016/02/08

 

「どうぞ、金メダルに触ってみてください」
会場に入るなり、そう声をかけられた。声の主は、モントリオールオリンピック(1976年)女子バレーボールで金メダルを獲得した元日本代表チームのメンバーだ。モン・スポ(NPO法人バレーボール・モントリオール会)としてスポーツを通した社会貢献活動を実施している。

 

第4回女性スポーツ勉強会

 

「知ってるようでしらない 女性スポーツについて学んでみよう! 第4回女性スポーツ勉強会」(主催 モン・スポ、総合型地域スポーツクラブ女性ネットワーク(仮称))が2016年2月5日(金)、東京ウィメンズプラザ(東京都港区)で開催された。今回のテーマは「減量とそのトラブル、悩み、そして解決法」。総合コーディネーターは、テレビ朝日スポーツコメンテーターの宮嶋泰子氏。有森裕子氏ら5人を講師に迎え、アスリート、スポーツ関係者、医療関係者、学校、自治体、企業などから約280名が参加した。

 

キーマンはお母さん!
減量を伴う競技に取り組む女性アスリートが抱えるトラブルは、親や指導者が正しい情報を持つことで回避できる可能性が高い。

講師として登壇した有森裕子氏(バルセロナ・アトランタオリンピックメダリスト)は、高校1年生から始めたマラソン経験の中で起きた健康上のトラブルについて語り、当時の学校における情報不足を指摘した。

マラソンランナーの骨粗鬆症問題が取り上げられるなか、1991年の世界陸上での健康診断で、骨密度が高かったという有森氏。骨が作られる時期に、大事な栄養素をきちんと摂れていたからだ。「食」への関心が高い家庭環境に育ち、好き嫌いが多かった自分に工夫をして食べさせたお母さんのお蔭だと気づいたそうだ。

 

女性アスリートが抱えるトラブル

 

同じく講師として登壇した小原日登美氏(ロンドンオリンピック レスリング・女子48㎏級金メダリスト)は、「オリンピックを目指して―減量と体の変化」と題し、初潮から出産までのトラブルや治療の経緯を話してくれた。

小原氏は月経トラブルを感じるとすぐにお母さんに相談し、婦人科医を受診した。中学生の時から婦人科医に相談する環境ができていたそうだ。大学入学のため上京する際も、婦人科医への紹介状を持たせてくれた。相談できるお母さんの存在は大きい。
一度引退し、15カ月のブランクを経て、階級を変更して復帰した小原氏。体脂肪率は最低で4%になり、無月経になったそうだ。医師と相談のうえ、オリンピックが終わってから治療することにしたという。小原氏のトレーナーは男性だったが、体についての悩みも相談しやすい関係だったそうだ。指導者が女性アスリートの体について理解し、正しい知識を持つことが大切だ。

 

女性の身体とスポーツ

 

管理栄養士の高橋千恵美氏(シドニーオリンピック・セビリア世界陸上10000メートル代表)は、現役時代、チームに栄養士がいなかったため、自分で情報を集めていたという。引退後、悩んでいる選手を見て役に立ちたいと思い、大学に入学し管理栄養士の国家資格を取得したそうだ。この日は、代謝を上げる栄養素や減量するための食事と調理法など、具体的なアドバイスをしてくれた。

「女性の身体とスポーツ」について語った整形外科医師の中村格子氏は、疲労骨折の原因にはトレーニング環境と選手個人の身体に起因するものと2通りあると説明した。
「ちゃんとした原因究明をしない指導者が多い」と指摘、指導者は選手の状態を客観的に評価し、判断することが大切だと述べた。

また、オリンピックや世界選手権代表選手の強化支援に関わる医・科学サポート活動をしてきた三重大学の杉田正明教授は、選手のコンディション管理についてデータを用いながら説明した。

早く走れた人ほど鉄分の貯蔵率が高いことから、女子中学生・高校生の親や指導者が鉄剤の注射を打たせようと病院を訪れる傾向があると警鐘を鳴らす。注射を打つのは、経口摂取ができない場合の治療。治療以外の目的で鉄剤を直接入れることは、体を壊しかねない危険な行為だ。
高橋氏が講演の中で発した「生涯の健康維持を考えるべき」という言葉を親や指導者に届けたい。

 

人の体は食べ物でできている。
シンポジウムでは、宮嶋泰子氏がファシリテーターとなり、客席にいたアスリート達も巻き込みながらテーマを掘り下げていった。女性アスリートを取り巻いてきた環境の実態が語られる度に、「エ~ッ!」という声が上がった。

次回の勉強会には、現役のスポーツ女子にも参加をおススメしたい。

必要な栄養素、バランスのよい食事の仕方、パフォーマンスを上げる食事メニューなど、
女性スポーツの環境を整えるには、食事の大切さについて発信することが肝要だ。

骨粗鬆症の問題に至っては、骨が作られる10代~20歳の時期の食事が大事になってくる。
成長期の子供の食事を管理するお母さんに、正しい知識を持たせることが課題である。

「スポーツ女子の自分磨きを応援するWebマガジンRanRun」では、今回の勉強会の内容を踏まえて正しい情報をキャッチし、随時、ヘルスケア(毎週月曜日更新)とフード(毎週火曜日更新)のコンテンツの中で発信していく予定だ。

 

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