日本人の2人に1人が「がん」と診断される時代
「国立がん研究センターがん情報サービス」の最新がん統計(2020年データ)によると、日本人が一生のうちにがんと診断される確率は男性62.1%(2人に1人)、女性48.9%(2人に1人)と報告されています。
がんが日本人の死因1位となって30年以上になりますが、2022年の統計データでも日本人ががんで死亡する確率は、男性25.1%(4人に1人)女性17.5%(6人に1人)という現状があります。
がんの90%は早期発見できれば治る
国立研究開発法人国立がん研究センターが全国がんセンター協議会協力を得て、加盟32施設の診断治療症例について部位別5年生存率、10年生存率を集計し2021年に公表したデータでは、ステージⅠでの早期発見による5年生存率が非常に高く、乳がんや前立腺がんでは100%となっています。
がんの早期発見には、「全身」の「早期がん」を「定期的」に調べる必要がある
線虫がん検査「N-NOSE」
画期的ながん一次スクリーニング検査『N-NOSE』をさらに進化させることに成功した株式会社HIROTSUバイオサイエンス(本社:東京都)が2024年9月20日、記者説明会を開催し、最新の研究成果について説明しました。
線虫がん検査「N-NOSE」とは、微量の物質でも地球一の検知能力を持つという線虫という生物の嗅覚を用いて、がんの匂いを高精度に見分けるものです。
線虫がん検査では、全身15種類のがんをステージⅠから検知し、早期のがんのリスクの有無を判定することができます。
早期発見が非常に難しいとされるすい臓がんにおいても、早期のがんのリスクの判定に成功しており、年度内に発売予定の新商品では、判定できるがんの種類がこれまでの15種から23種へと大幅に拡大するそうです。
線虫は飼育コストが安いため、安価で検査することができ、尿で検査できるという簡便性、全身網羅的であることも特徴です。
全く新しいがんスクリーニングシステムの構築
現状、自覚症状が現れてから精密検査を受ける人が多く、がんが見つかった時には進行してしまっているケースがほとんどです。
「N-NOSE」は、自覚症状が現れる前の「入口」で、がんのリスクを知るための検査です。
無症状でも、簡便でリーズナブルに精度の高い検査を受けることで、自身のがんリスクを知り、ハイリスク判定の人は次のステップに進むというシステムづくりを目指しています。
ハイリスク判定が出た方は、看護師をはじめとする専門スタッフによるサポートを無料で受けることが可能なため、がんの早期発見につながる可能性が高くなります。
「N-NOSE」のメカニズム
嗅覚に優れた線虫には、健常者の尿からは“離れ”、がん患者の尿には“寄る”という特有の性質があります。
早期発見の難しい「ステージⅠの早期がん」にも反応します。
多くの次世代型検査がAIを用いているのに対し、「N-NOSE」は生物のセンシング能力だけで高精度の解析ができます。
今回の「N-NOSE」の次世代技術の発表では、嗅覚による線虫の動きに関する大量の画像データ処理にAIを使うことで、「N-NOSE」も精度向上とがん種特定が可能となったことも発表されました。
従業員のがん予防対策は企業の重要課題のひとつ
がん罹患者の約半数(41.9%)が就労世代です。
従業員の長期職務離脱の防止の課題解決、胃カメラや婦人科検診の受診率向上、福利厚生の充実などを目的として、「N-NOSE」を導入する企業が増えています。
法人導入数は2年間で約21倍にも上り、累計導入実績は2000社を突破しました。
導入企業からは、従業員の健康意識が高まったというコメントもあるそうです。
線虫がん検診について以前よりCMを見て、画期的ながん検査だと思っていました。
今回、記者発表会に参加させていただき、「N-NOSE」の仕組みや精度の高さを知ることができました。
尿を取るだけで、比較的安価で受検できるので、より多くの法人で導入が進められるのではないでしょうか。
今後のがん検診についての動向を追っていきたいと思いました。
取材 学生スタッフ 小澤 彩華(昭和女子大学3年)