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やった人にしか見えない「未来」のために、今を大切に

「練習中、汗をかいても水を飲めないのが辛かった」驚きの言葉からスタートした。
パフォーマンスを上げるためには、「食べること」が大切。RanRunのフードコンテンツでレシピの監修をお願いしている東京家政大学の内野美恵先生は、大学院生の時に「栄養」と「スポーツ」の関係について研究を始め、それがきっかけでパラアスリートのサポートをしてきた。内野先生に、「スポーツ栄養」のこと、栄養学生・スポーツ女子へのメッセージを聞いた。

 

飲みたい時に水が飲めていたら

内野先生は、中学高校とソフトテニスをやっていた元スポーツ女子だ。強豪校に所属していた高校時代、部活の練習はかなりハードなものだったそうで、食べられなくなったり、呼吸困難を起こす仲間もいたという。当時の日本のスポーツ指導は、根性論が主流。練習時間内に水を飲む時間が決められており、汗をかいて水分を取りたくても、水を飲ませてもらえなかった。「飲みたい時に、水を飲めないことが辛かった」と当時を振り返る。

 

「なぜ、水を飲んではいけないのだろう」疑問に思った内野先生は、独自で勉強を始める。すると、運動中に水を飲めないのは日本だけだとわかった。「水を飲んだら体がだるくなる」戦時中の軍隊の指導が、そのまま日本の体育指導プログラムに反映されてしまったようだった。

 

スポーツ科学の発達により、水を飲むことの大切さがわかってきた。運動による体温の上昇を抑えるために、水を飲むことは大切だ。「好きな時に水を飲めていたら、私のテニスの成績ももう少しよかったかもね」と笑う。

 

根性論でやってきた日本は、ソウル五輪でそれまで強かった競技でも勝てなくなる。根性だけでは勝てないことに日本はやっと気づく。当時アメリカでは、47歳のテニスプレーヤーが世界大会で勝つという偉業を成しとげ、「食事を大切にコンディショニングを気を付けた」と発した。その言葉が、内野先生の「栄養とスポーツ」の関係について興味を持つきっかけとなった。

 

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(アスリートとの座談会で 左は元競泳日本代表の加藤ゆかさん)

 

「栄養とスポーツ」の研究

大学院生の時、「栄養とスポーツ」について勉強したいと思った内野先生だったが、なかなか文献などもみつからない。シンポジウムを聞きに行くなどして、独自で勉強したそうだ。

 

自転車、トライアスロンなど自分の体がエンジンとなる持久性の競技に焦点を当て、選手の食事内容とパフォーマンスについて、自分の足で体験談を集め、事例研究した。

 

パラアスリートとの出会い

自転車のロードレース選手の栄養相談をするようになっていた内野先生は、書店で障がい者アスリートを対象とした冊子を目にする。車イス競技との出会いだった。冊子には、ボランティア募集の文字。自転車と車イスは同じタイヤが使われていることもあり、自分の研究が役に立てるのではないかと思ったそうだ。

 

毎週日曜日に練習に参加してみると、健常者とはまるで動きが違う。
健常者の場合は、厚生労働省が定める栄養摂取基準に基づき、栄養指導を展開する。しかし、障がい者の栄養摂取基準量はなく、障がい者の栄養に関する本や論文すらみつからなかった。自分で調査し、施行錯誤しながら栄養指導を行うしかなかったそうだ。

 

障がい者アスリートは、個人差が大きく全てがケーススタディであるため、選手と共に考えるスタンスが必要だ。対個人でサポートする「選手に寄り添うサポート」と内野先生は表現する。

 

1996年に開催されたアトランタパラ五輪、陸上競技で出場したサポート選手が良い結果を出した。栄養サポートの必要性が認められる
1998年長野で開催された冬季パラ五輪では、アイススレッジスピードレースの選手をサポート。メダルラッシュとなった。
2000年シドニー大会は、陸上の栄養コーチとして帯同し、2008年の北京大会、2012年のロンドン大会は日本選手団本部役員として帯同した。

 

2014年に厚生労働省管轄だった障がい者スポーツがオリンピックと同じ文部科学省に移管された。2020年東京オリンピック・パラリンピック開催が決定し、障がい者スポーツがこれまでになく関心を集めるようになった。
今年3月、内野先生も所属するJPC(日本パラリンピック委員会)の栄養サポートチームで、障がい者スポーツ栄養研究会を立ち上げた。パラアスリートへの栄養サポートの充実を目指す。

 

パラリンピックの開催国は、福祉環境が整うだけでなく「心のバリアフリー」を育てることにつながる。2020年の東京パラ五輪に向け、「弱者が共存できる社会づくり」を教育していければと語る。

 

【学生へのメッセージ】

スポーツ栄養を目指す学生へ

スポーツ栄養だけで仕事とするにはまだ難しい面がありますが、人と関わる仕事としてやりがいのあることです。今、機会がなくても、チャンスが来る時があるかもしれません。いつチャンスが来ても大丈夫なように、準備をしておくことです。いろいろな人と会って話をすることで「人間力」を高めてください。世代を問わず、人の意見を聞く、自分の意見を話す環境を貪欲に作っていくこと。

 

スポーツ女子の皆さんへ

結果を急がずに、自分を大切にしてください。先を見据えたものの捉え方が重要です。
今、食べているものが、あなたの体になります。しかし、食べてから結果が出るまでには、タイムラグがあります。直ぐに結果にはなりませんが、3カ月後、半年後につながっています。やらなかった人には見えない、やった人にしか見えない「未来」があります。

 

<プロフィール>

内野 美恵(うちの・みえ)さん

内野 美恵(うちの・みえ)
東京家政大学 ヒューマンライフ支援センター准教授
管理栄養士 公認スポーツ栄養士
*モチベーションの上がる曲 ゆず/アゲイン