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アスリートインタビュー

米国で活躍する女子プロアメリカンフットボーラー 金高恵美選手

米国で活躍する女子プロアメリカンフットボーラー 金髙恵美選手
ピープル 2016/05/05

男子に混じってアメフトに取り組んだ学生時代。現在は、米国女子プロアメフトチーム「Seattle Majestics」に所属し、オフェンスタックル、ディフェンスタックルとして活躍する金髙恵美選手に、アメフトの魅力、アメリカでのライフスタイル、スポーツで培った力などについて話を伺った。

 

アメフトを始めたきっかけ

アメリカンフットボールにハマったのは、13歳のころです。TVで日本選手権を見たことがきっかけでした。夢も希望も願えば叶えられると信じて疑わなかった中学時代、「私もカッコよくなりたい!」と突っ走って、そのまま今に至っています。
当時は中学生でプレイできるチームがなくて、お年玉で購入したボールを学校に持って行き、友達と無理やりキャッチボールしていました。

 

アメフトの魅力

アメフトは完全分業制なので、必ず自分ができるポジションがあります。私の務めるオフェンスラインは、球技でありながらパスを取ったら反則になります。人とぶつかることは怖くないですが、ボールが怖い私にはピッタリのポジションです。
また、戦略次第で個々の能力が劣るチームでも、勝つことができるのもアメフトの魅力です。1プレイ毎にプレイが止まるのがアメフトの特徴。ただの休憩時間ではなく、その僅かな時間で作戦を立てています。

 

アメフトの魅力

 

学生時代

高校はもちろんアメフト部のある学校に進学しました。当然、選手は男子だけ。入学と同時に「選手として入部したい」と直談判しましたが受け入れてもらえず、マネジャーをすることになりました。2年生に進級するタイミングで、コーチから「まだ選手をやりたいなら…」と声がかかり、晴れて選手になることができました。しかし、連盟から「何かあった時に責任が取れないから」との理由で公式戦には出場することができませんでした。

 

大学に進学し、再びアメフト部の門を叩きました。ここでも選手は男子だけ。運よく同好会から部に昇格したばかりだったので、経験者としてすんなり受け入れてもらうことができました。
しかし、秋のシーズンが終わる時に学生連盟から直接電話があり、「来年以降は女子選手の登録は認めない規約を作る」と言われました。キャプテン、監督、コーチと相談し、何とか認めてもらえるように働きかけ、条件付きでしたが、女子選手の登録が認められることになりました。

 

シーズン前にみんなで合宿した時に、同期が「みんなの布団敷いときました!」と言って、私の布団も大部屋に敷いてくれました。選手として認められていると喜んでいいのか、女性として終わっていると落ち込むべきか、悩みながらも一緒に寝たのは、良い思い出というか、良い話のネタです。

 

シアトルでの生活

<食事について>

シアトルは海沿いの街なので、新鮮な魚介類がたくさんあります。アメリカの食事で分厚いステーキを期待してきましたが、シーフードを食べる機会が多いです。フルーツ類はとても安く、小玉スイカが$1で驚きました。おやつとしてリンゴを丸齧りしていたのはイメージ通りです。日系スーパーもあるので、日本の食材も手に入りますし、特に大きな違いは感じていません。

 

<ファッションについて>

NFL(National Football League)チームのシアトルシーホークスの試合がある日は、男性でも女性でもほぼユニフォームを着ています。普段着としてもシーホークスの帽子、パーカー、Tシャツは良く見かけます。春になり、MLB(Major League Baseball)も始まると、シアトルマリナーズのグッズを身に着けている人も良く見かけるようになりました。
アメリカにおいて、4大スポーツはとても生活に密着しているのだと感じています。

 

<日本とアメリカの考え方の違い>

日本で女性がスポーツを続けていると、必ず直面する年齢、結婚、出産の壁。アメリカでは全く関係ありませんでした。結婚、出産を経験している選手もたくさんいますし、50歳近い年齢でもRookieの選手もいます。それが特別なことではありません。
日本の女子選手も、もっと欲張って良いと思うし、周囲ももっと理解、協力すべきだと感じました。

 

シアトルでの生活

 

プロチームに所属するということ

日本国内では試合すらできなかったので、毎週末試合ができることはとても楽しいです。
試合でも練習でも、自分より大きい相手、パワーのある相手と当たるので、1対1ではなかなか勝つことは難しいですね。

 

プロチームでも金銭面の苦労があります。プロと言っても、練習場所、試合会場の確保、遠征費などなど、スポンサーからの援助、興行収入だけでは賄いきれず、結局は選手の持ち出しになります。
日本でも定着してきたクラウドファンディングをしたり、ユニフォームを着て街に繰り出し直接寄付のお願いをしたりと、チーム全体で収益をあげるための活動もしています。

 

スポーツを通して培った力

<気持ちの切り替えの速さ>

アメフトは1プレイずつプレイが止まり作戦会議をしますが、前のプレイの事を考えている余裕はありません。たとえプレイが失敗だったとしても、すぐに気持ちを切り替え、次のプレイに集中することが求められます。
普段の生活で嫌なこと、辛いことがあっても、ダラダラと悩まずに、できるだけ早く解決するようになりました。

 

<チームワーク作業>

完全分業制のアメフトでは、自分のタスクを全うすることが求められます。それぞれが別の事をしていても、全員が自分のタスクを全うすることで、一つのプレイが完成するわけです。
私は医療業界で働いていました。医師・看護師・医療技術者等、それぞれができること、やるべきことが異なりますが、チームとして患者様の治療にあたります。
みんながみんな同じことをすることがチームワークではなく、足並みを揃え、出しゃばりすぎず、出遅れず、自分のテクニックを磨きつつ、周囲に合わせていく考え方は、アメフトをしている私にはとても馴染みやすいものでした。

 

 

金髙恵美

 

今後の目標

ワールドチャンピオンを目指して頑張っています。将来的には、日本代表チームを結成したいと思います。

 

スポーツ女子へのメッセージ

今後、人生の岐路が何度か訪れると思いますが、続けるか辞めるか悩んだ時は、まずは続ける道を探してみてください。「何かのために大好きなスポーツを諦めることはない」と、アメリカに来て感じています。
両方掴み取ったらいいんです!もっともっと欲張っていきましょう!

 

モチベーションを上げる曲

らっぷびと/All Day, All Night

 

<プロフィール>

金髙恵美(かねたか・えみ)

東京医科歯科大学卒業
東京都立三田高校でアメフトを始め、東京医科歯科大学在学中は大学のアメフト部と社会人女子アメフトチーム「Lady Kong」に所属。
2013年女子アメフトチーム「Tokyo BLAZE」を設立。
現在、米国女子プロアメフトチーム「Seattle Majestics」に所属し、オフェンスタックル、ディフェンスタックルとして活躍中。

 

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