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20代前半は人生の宝物、縁は後の財産になる

先達に学ぶ第5回は、政治家でジャーナリストの井戸まさえさん。NPO法人「親子法改正研究会」代表理事、「民法772条による無戸籍児家族の会」代表として、法の狭間で苦しむ人々の支援を行っている。13年間に渡る支援活動をまとめた『無戸籍の日本人』(集英社)を2016年1月10日上梓した。文字通り社会を引っ張る女性リーダーの一人である井戸さんに話を伺った。

 

リーダーの資格

リーダーシップをとるということは、リスクを請け負うことだと井戸さんは言う。政治活動でもジャーナリストとして発信することにしても、匿名の中傷やバッシングなどは避けられない。言われても跳ね返すだけの力を持っていないと辛さに潰されてしまう。
スポーツをやってきた人は、負ける体験を通し挫折を知っている。「スポーツでメンタルを磨いた人は、リーダーになる資格があると思いますよ」と井戸さん。ご自身も中学時代は陸上をやっていたそうだ。

 

学生時代

大学進学のために仙台から上京した当時の井戸さんは、自分が政治家になるなどとは思いもしなかったそうだ。高学歴な男性と結婚し、社長夫人や外交官夫人となって優雅な生活を夢見ていたのだとか。
約30年前の女子大生の就活は、4年生大学よりも短大が有利、1人暮らしの学生にいたっては入社試験を受けられる企業が限られていた。苦労して就職しても条件が悪かったり、能力があっても発揮できない環境だったりと、男性との差別や理不尽なことの多い時代だった。

 

サークルの先輩の誘いで始めた出版社のアルバイトを通し、勉強するようになったそうだ。アルバイト先にいた「輝いている女性」に触発されたと振り返る。
男性を支える女性を目指していた井戸さんだったが、大学卒業後は松下政経塾の門下生となった。
学生時代の縁が、今、人脈として活きているという。大学時代、政経塾時代の仲間が、時を経て、今、支えてくれている。

 

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女性政治家

松下政経塾を卒塾後、結婚ではなく就職の道を選択した。自分の居場所を確保してから、社会を変えていく活動(政治)に入るべきと判断したそうだ。井戸さんは、県議会議員を2期、衆議院議員を1期経験し、目下次の選挙に向けて準備をしている。
女性議員には2種類いるという井戸さん。ひとつは男社会の中で折り合いを付けながら、政党や実力者の庇護の元に活動する人、もうひとつは長いものには巻かれないが故に人より多くの苦労をしながらも議席を獲得するために現場で戦う人だ。後者である井戸さんは、ミッションとして戦いを辞めることができないと苦笑する。どちらをとっても女性にはキツイ世界だと井戸さんは言う。女性議員は増やさなければならないが、気安く女性にやればいいとは言えないと語る。

 

今の一番の目標は次の選挙に勝つこと。真面目にやっていても、有権者に対してなかなか伝わらないもどかしさがある。毎朝、駅頭に立ち街頭演説をする。一通りの家事を終えてから活動に出かける生活を続けてきた。5人の子育てをしてきた井戸さんならではの生活者の視点がある。生活における矛盾を解決することが政治だ。

 

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街頭演説中の井戸まさえさん

 

政治家として目指す社会

教育によって自分は変わったという井戸さん。東京女子大学の教育の根幹にあるのは、初代学長である新渡戸稲造の教育理念「Service and Sacrifice(犠牲と奉仕)」。女性が1人の人間として生きることの尊さを教えた理念を新渡戸先生から直接学んだという先輩に出会い、引き継いだという。

 

また、大学では日本史を専攻したこともあり、今の日本の礎を築いた明治期の人達は凄いと語る口調にも熱がこもる。「彼らの何千分の一でも頑張りたい」と言う。井戸さんが目指す「豊かな社会」とは「選択肢の多い社会」。どんな生き方も応援してもらえる社会を表す。

 

近著『無戸籍の日本人』には、色々な理由で戸籍を持つことができなかった人達が紹介されている。法制上のおかしなルールに苦しめられている人達がいる。「声を出せない人達を放っておけない」と井戸さん。無戸籍者からの相談は今も続いている。取材中も携帯電話に相談者からの電話が入っていた。
「自分の手に負えないことは手伝おうよ」それが井戸さんの活動方針だ。

 

投票する権利もあれば、投票される権利(被選挙権)もある。「投票に行くという行為は歴史的な行動。選挙権のある20代の人も歴史を作っている1人なのよ」と言い、「私はミッションとして被選挙権を行使し続ける」と井戸さんは宣言する。

 

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ライフスタイル

5人の子供を母乳で育てたという井戸さん。3時間睡眠の生活が15年続いたので、体がそれに慣れてしまっているのかもしれないと言う。保育所に預けている時も、3時間おきに母乳を飲ませに保育所に通った。そのため、保育所で何がおきているかがよくわかったそうだ。
また、一緒に笑って支えてくれる友達との会話が、日々の支えになっている。
それでも電池切れした時は、マッサージを受けに行き睡眠をとるのだとか。

 

学生へのメッセージ

20代前半は宝です。これから幸も不幸も色々なことが降ってくるでしょう。50代になると何もない人はいません。自分が望まないことに対峙しなければならなくなった時、学生時代に出会った「人」や「もの」「本」などが支えてくれます。きっと20代は宝のような日々だったのだと実感する日が来ます。今、辛いこともいつか「宝」に変わります。自信を持って社会に出て欲しい。

 

モチベーションを上げる曲

Queen / Bohemian Rhapsody

 

<井戸まさえ氏プロフィール>

出身地 宮城県仙台市
東京女子大学卒業 松下政経塾九期生
東洋経済新報社勤務を経て、経済ジャーナリストとして独立
兵庫県議会議員(二期)、衆議院議員(一期)
NPO法人「親子法改正研究会」代表理事、「民法772条による無戸籍児家族の会」代表
著書『子どもの教養の育て方』『小学校社会科の教科書で、政治の基礎知識をいっきに身につける』
(共に東洋経済新報社・佐藤優氏共著)
『無戸籍の日本人』(集英社)

 

撮影協力:風雅すたいるカフェ
東京都新宿区神楽坂3丁目2