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「多くの学生に活動を知って参加して欲しい」
オリンピックメダリストの有森裕子氏が理事長を務めるスペシャルオリンピックス日本(Special Olympics Nippon)の活動をご存知ですか。
知的障がいのある人達に、日常的なスポーツトレーニングと成果の発表の場を提供し、社会参加を応援する組織です。
ユニファイドスポーツ元年を迎え、スポーツを通して考える「知的障がい者と健常者が互いに歩み寄る共生社会の実現」をテーマに、有森氏と同法人の理事でもある文京学院大学教授伊藤英夫氏がプレス向けに対談を行いました。(2019年1月9日 文京学院大学本郷キャンパス)

RanRunの取材をしていると、スポーツ女子の多くがスポーツを通してコミュニケーションスキルを磨いたと話します。
「自分の意見を言えるようになった」「相手が何を考えているか意識するようになった」など競技の種類に関係なく、自己の成長を実感しています。
知的障がいのあるアスリートと、知的障がいのないパートナーが共にチームを組み、スポーツを楽しむユニファイドスポーツは、よりコミュニケーションスキルの向上につながり、「人間力」を磨く場になりそうです。
共生社会の実現に向けたスペシャルオリンピックスの活動を多くの学生に知って参加して欲しいと話す有森氏と伊藤氏。
スポーツ、医療、福祉、教育などを学ぶ学生には、学びの発展の場としてご紹介したいと思います。

スポーツの場を提供する組織

パラリンピックの開催を機に障がい者スポーツが認知されるようになりましたが、知的障がいのある人たちには、なかなかスポーツをする機会がありません。
日本では障がいを持たない人の多くが、保育園や幼稚園、学校で体育の時間があり、スポーツをする機会を当たり前のように持っています。
有森氏が誘いの電話でスペシャルオリンピックスへの参加を決めたひと言は、「スポーツの場を提供する組織」だったと言います。

知的障がいのある人たちにスポーツをする機会を提供することが、スポーツの楽しさを知り、健康を増進し、社会性を身につけることにつながります。
また、そうした機会を設けるには沢山のボランティアの協力が必要になります。
関わることで障がいのある人とない人の間でコミュニケーションが生まれ、お互いを知る機会になります。

「スポーツを通して変化を生むことができる」と有森氏。
スペシャルオリンピックスの創設者は、故ケネディ大統領の妹である故ユニス・ケネディ・シュライバー氏。
知的障がいのあった姉の体調の異変に周囲がなかなか気づけなかった経験から、自宅の庭を開放しスポーツをする場を提供し活動はスタートしたそうです。

スペシャルオリンピックス ヘルシー・アスリート®・プログラム(HAP)
知的障がいのある人は、自分の体調の変化・不調を伝えることが困難です。
スペシャルオリンピックスでは、競技会の際に楽しい雰囲気の中で様々な種類の健康チェックを無料で受けられる取り組みを実施しています。
伊藤氏は2001年からボランティアとして聴覚検査を担当されているそうです。
日常生活ではわからない身体の異常に気付くことができる貴重な機会になっているといいます。

スペシャルオリンピックスはボランティアの協力で成り立っていますが、HAPのような取り組みは専門性が求められるため、パラメディカルの協力が必要になります。
医療系学生にもなにかできることがあるのではないでしょうか。

スペシャルオリンピックスの競技会では、予選会は組分け、本選では全員が表彰される仕組みになっており、アスリートが楽しく参加できる工夫がされています。
全員が表彰されるのは1試合に出場する人数が最大でも6名(チーム)で組まれるため、必然的に全員が入賞することになります。

ユニファイドスポーツ
ユニファイドスポーツは、知的障がいのあるアスリートと、知的障がいのないパートナーが共にチームを組み、障がいのある人だけでチームを編成することはありません。
同程度の年齢と競技能力のアスリートとパートナーがほぼ同数でチームメイトとなり、競技能力に関わらず誰もが参加することができます。
競技性が高く世界大会が開催されるユニファイドスポーツ、競技能力の高いプレーヤーが競技能力の低いチームメイトのメンター的な役割を担いサポートするユニファイドスポーツ・プレーヤーデベロップメント、アスリートとパートナーのための包括的なレクリエーションの機会となるユニファイドスポーツ・レクリエーションの3つのモデルで展開しています。
ユニファイドスポーツは障がいのある人とない人が一緒にプレーをすることで、お互いを知り、コミュニケーションの取り方を知るよい機会になるといいます。
延いては、その普及が共生社会の実現につながります。

2018年にシカゴでサッカーユニファイドカップが開催され、日本から1チームが参加しました。
今年2019年は東京都大田区でバスケットボールの全国大会が開催されます。
対談で紹介されたPVはサッカー元日本代表の北澤豪さんがナレーションをされていました。
ドリームサポーターとして関わるトップアスリートも増えているそうです。
スペシャルオリンピックス日本の応援ソング「YOUR SONG」は、GLAYのTERUさんが楽曲を提供。
スペシャルオリンピックスは現在、世界172カ国で490万人のアスリートと100万人のボランティアが参加する国際ムーブメントに発展しています。

ボランティア参加
スペシャルオリンピックス日本(http://www.son.or.jp/)の支部が全国で活動しています。
競技会や練習時など、学生が関われることは多いと思います。
各支部へのコンタクトは、スペシャルオリンピックス日本の事務局にご確認ください。

(2019年1月掲載記事リライト)