• 日. 11月 9th, 2025

腸から未来を整える!ビフィズス菌が切り拓く、スマートな健康長寿社会。生活習慣と腸活で老化速度をコントロール

世界が注目するPace of Aging(老化の速度)、老化は調整できる時代へ
人によって老化速度は最大6倍も違うという研究結果が報告されています。
遺伝だけでなく、生活習慣や腸内環境によって速度が変わることもわかってきました。
そこで注目されているのが「腸内細菌」。
とくにビフィズス菌には、老化や生活習慣病の予防につながるパワーが秘められています。

一般社団法人ウェルネス総合研究所が2025年7月9日に開催した「世界長寿サミット」メディア向け勉強会で、森永乳業株式会社の研究フェロー 阿部文明氏が「健康長寿社会を目指すビフィズス菌の役割」と題して講演されました。
高齢化が急速に進行している日本では、加齢に伴う様々な病気・症状(糖尿病、高血圧、認知症、フレイル、がんなど)が社会課題になっています。
阿部氏は、海外の研究者や食品メーカーが日本の高齢化社会への対応策に強い関心を持っていると紹介しました。

老化は一定に進むわけではない!たんぱく質の変化が急激に起こる年齢がある

Pace of Agingとは、個人ごとに異なる老化のタイミングと速度を指す概念です。
老化は予防・治療可能な「病気」として、老化の速度を測定し、生活習慣や医療介入によってコントロールし、個々の健康寿命を延ばし、質の高い生活の実現を目指します。


阿部氏が紹介した研究事例
■スタンフォード大学の研究グループが行った試験では、18~95歳の4,263人を対象に血液中の2,925タイプのたんぱく質の変化を観察し、34歳・60歳・78歳にたんぱく質の急激な変化が観察された。
→老化が加齢に伴い一定に進むわけではないことが示された。
■ニュージーランドで行われたダニーデン研究(1972年~73年に生まれた1000人を26歳から45歳まで追跡調査)では、老化速度には個人差があるという結果が観察された。
■デンマーク大学のクリステンセン教授らのグループが行った双子を対象とした調査では、遺伝子が同じであっても外見の印象は異なり、老けた印象があるほど死亡リスクも高いという結果が観察された。

“老化”にアプローチするビフィズス菌の可能性

阿部氏は、「12の老化指標」において、ビフィズス菌により改善の可能性がある項目が多く、ビフィズス菌が老化の抑制と深い関係があるのではないかと話しました。

腸内細菌は年齢とともに変化します。
高齢になると腸の中でビフィズス菌が減少し、代わりに悪玉菌が増えてしまう傾向にあります。
近年WHOでは「The first 1000days(最初の1000日)」と、妊娠から2歳の誕生日までの期間が、その後の健康に大きな影響を与えると示しています。
ビフィズス菌は、悪玉菌を抑える「酢酸」や「酪酸」を産生し、腸のバリア機能を整えてくれる頼れる存在です。

母乳が選んだビフィズス菌のパワーとキーとなるILA

ビフィズス菌は、「ヒト常在性ビフィズス菌(HRB)」と「ヒト非常在性ビフィズス菌(nHRB)」に分類されます。
HRBは母乳との親和性が高く、母乳から自然に増殖しますが、nHRBは母乳中では生育しません。
このHRBは、インドール-3-乳酸(ILA)という、免疫機能の強化や、脳のパフォーマンスアップ、がん予防にも効果が期待される物質を作ることができます。
阿部氏は、このILAの産生こそが健康長寿へのキーとなると紹介しました。

ビフィズス菌と脳腸相関

森永乳業は50年以上にわたって、ビフィズス菌と健康の関係を研究してきました。
実際に高齢者の便通改善、インフルエンザ予防、さらには認知機能のサポートまで効果が確認されています。
脳腸相関に着目し、軽度認知障害(MCI)の方を対象にした試験で、認知機能スコアの顕著な改善を示す結果を得ており、ビフィズス菌の加齢に伴う認知症対策への貢献に期待が高まります。

また、ビフィズス菌は、がん治療を支える抗がん剤(免疫チェックポイント阻害剤)との相乗効果についても、世界的に著名な科学雑誌「サイエンス」に掲載されています。

ビフィズス菌を活用することで老化の速度を少しでも緩やかにし、実年齢よりも若々しい状態を保ちながら健康を維持していただきたいと阿部氏は話しました。

若いうちから始めたい“腸内エイジングケア”
腸を整えることは、カラダもココロも“健やかに若く”保つための第一歩。
若いうちから“腸活習慣”を始めるのは、未来の自分への最高の投資なのかもしれませんね。

取材 RanRun編集部 やなぎ ゆき

登壇者プロフィール

阿部文明 (あべ・ふみあき)氏
森永乳業株式会社 研究本部フェロー

1987年に森永乳業株式会社に入社。
主にビフィズス菌、乳酸菌の研究に従事し、ビフィズス菌末の利用技術に関する研究により農学博士号を取得し、国内外で数多くの研究報告を行う。
同社機能素材事業部長、食品基盤研究所長、素材応用研究所長、研究本部長を経て現職。特定非営利活動法人・国際生命科学研究機構(ILSI Japan)副理事長、一般社団法人・健康食品産業協議会理事、業界団体「健康と食品懇話会」相談役。

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