• 木. 8月 20th, 2026

RanRunの10年 編集長が綴る10年②「スポーツで培う力」を探して

前回は、RanRunが生まれるきっかけとなったエピソードをご紹介しました。              
大学のキャリアセンターを訪ねる中で、スポーツと学業を両立する女子学生たちに、企業が求める資質を数多く備えている人が多いことがみえてきました。

そこで、私たちはスポーツ女子の学生生活を知るため、直接取材を始めました。
最初に話を聞いたのは、東京女子大学ラクロス部の主将です。

当時のラクロスは、大学生になってから競技を始める学生がほとんどでした。
ほぼ全員が初心者からのスタート。
部内での役割分担、チーム作りのための工夫、競技のスキル向上だけでなく、組織マネジメントもしっかり考えて実践していることを知りました。
これこそが、大学スポーツならではの魅力ではないでしょうか。

驚いたことは、どこの大学のラクロス部も練習場所の確保に苦労していたことです。
朝練が中心で、始発電車で通う学生も少なくありません。
「ラクロス部は授業に遅刻する学生はいないんです。だから先生たちの間でも評価が高い」
と、ある大学のキャリアセンターの方が教えてくれました。

就職活動の時期には、練習場所にスーツを持参し、朝練を終えると、急いで着替えて企業説明会に向かう姿もありました。
練習のない日は、アルバイトをしている学生がほとんど。
課題のレポート作成、試験勉強など学業もおろそかにはしていません。
とにかく、毎日が忙しい。
充実した学生生活が眩しく感じました。

この人たちに情報を届けるなら、通学時間にスマホで気軽に読むことができる記事がいい!
学生が紙媒体を読む機会が少ないことは、それまでの編集経験から分かっていました。
RanRunは最初からWebメディアとして立ち上げることを決めていましたが、ラクロス部の取材を重ねる中で、よりそのスタイルが明確になっていきました。
限られた時間の中で情報を得る彼女たちにとって、スマートフォンで手軽に読めるWebメディアは最適だったのです。

取材を重ねるたびに、新たな課題がみえてきました。
スポーツ女子の魅力を、どうすれば企業や社会に伝えられるだろうか。
それを表す言葉を探すことでした。

スポーツを通して培われる力とは、一体何なのでしょうか。
「リーダーシップ」
「協調性」
「最後までやり抜く力」
そうした言葉だけでは、どこか漠然としています。

なにより、彼女たち自身に自分事として感じ、培った力として実感してもらいたい。
より具体的な事例を集め、その本質を探ることにしました。

そんな時、素敵な出会いがありました。
スポーツ分野のシンクタンクとして、スポーツ政策やスポーツライフに関する調査・研究を行う公益財団法人 笹川スポーツ財団(SSF)です。

「スポーツを頑張ってきた学生の魅力を、本人たちと、社会に伝えたいです。スポーツによって培われる力について、具体的に示す事例が欲しいです。」

すると返ってきたのは、意外な答えでした。
「トップアスリートに取材できるといいですよね」
思いもよらない提案でした。
オリンピックをテレビで観ていた私にとって、オリンピアンは雲の上の存在です。

そして紹介していただいたのが、JOC(日本オリンピック委員会)でした。
「オリンピアンに取材ができるかどうかはわかりませんが、JOCの広報担当者に相談してみてはいかがでしょう。」

オリンピアンへの取材は、競技を所管する連盟や、選手が所属する企業への打診から始まります。
「私たちは、オリンピアンへの取材を通し、スポーツを通して磨かれる人としての魅力を知りたいのです。」

「よくわからないけれど、協力しましょう」
取材の目的は想定外だったかもしれませんが、ありがたい言葉をいただきました。

JOCのご協力を得て、現役の選手や、引退して企業で働いている元日本代表選手たちに話を聞くことができたのです。
まさか、自分がオリンピアンに取材する日が来るとは思ってもいませんでした。

初めて話を聞いたのは、ボート日本代表の大石綾美選手でした。
国立スポーツ科学センターで合宿中のところに、編集部のインターン生と一緒に伺い、緊張しながら取材したことをはっきりと覚えています。

その後も、何人ものオリンピアンに話を伺うことができました。

実際に話を伺ってみると、競技の話以上に印象に残ったことがありました。
「負けた経験」
「挫折」
「仲間への感謝」
「目標を立てること」
「自分を律すること」
どの選手も、自分の言葉で経験を語ってくれました。

そして、その言葉には共通点がありました。
勝つことだけではなく、スポーツを通して、人としての成長を語っているのです。

私たちが探していた答えは、
スポーツを通して磨かれる「人としての力」でした。

これこそが、大学のキャリアセンターが言っていた『有能な人材』の理由ではないでしょうか。
スポーツで得られるものは、記録や勝敗だけではありません。
社会へ出てからも生きる力が、確実にそこにありました。

RanRunは、それを伝えるメディアでありたい。
創刊当初から、質問の内容は一貫していました。

「競技の魅力を教えて」
「辛かったこと、それをどう乗り越えたかを教えて」
「競技を通して、自分で思う人として成長したことは?」

競技の向こう側にある”人”を伝えたい。
それが、今も変わらないRanRunの編集方針です。

ところで、皆さんはJOCがトップアスリートの就職支援活動も実施していることをご存じでしょうか。
オリンピックや世界大会で活躍したトップアスリートは、その実績自体が大きな強みになります。
しかし、競技生活を送るうえで、企業にどう貢献できるかを語れなければなりません。
セカンドキャリアのことも考える必要はありますし、彼らなりの就職活動が必要です。

大学には、トップアスリートではないスポーツ女子がたくさんいます。
毎日練習を重ね、学業と両立し、仲間と切磋琢磨しながら学生生活を送っています。
それでも就職活動では、一人の学生として企業と向き合わなければなりません。
私たちが応援したかったのは、そういう学生たちでした。

メダルを獲る選手だけではありません。
毎日仲間と汗を流し、努力を積み重ねる学生たちにも、社会に誇れる魅力があります。
そこには、競技や世代を超えて共通する”人間力”がありました。

競技レベルに関係なく、スポーツを続ける中で身に付く力があります。
その魅力を企業や社会へ伝えたい。
RanRunは、その架け橋になるメディアを目指しました。

では、「スポーツで培われる力」とは具体的にどのような力なのでしょうか。
10年間の取材を通して、その答えは少しずつ形になっていきました。

次回は、トップアスリートたちの言葉から見えてきた「スポーツで培われる力」の正体について、ご紹介します。

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