• 月. 5月 6th, 2024

血友病の子供にスポーツを!ハッピーシェアプロジェクト①

皆さんは、「血友病」という病気についてどの程度知っていますか?
日本には約6,000人の血友病患者さんがいて、そのほとんどは男性ですが、まれに女性の患者さんもいるそうです。
血友病は、血液を固める働きをするタンパク質「凝固因子(ぎょうこいんし)」が生まれつき不足しているために、出血すると血が止まりにくい病気です。ケガをしてはいけないとスポーツを敬遠しがちですが、適切な治療・準備をしたうえで、スポーツを通して筋肉を鍛えて関節を守り、関節内の出血を減らすという指導が進んでいます。
「血友病であっても日常生活にスポーツを取り入れて欲しい」と、同世代の子供と一緒にスポーツを楽しむ機会を作る「ハッピーシェアプロジェクト フットサル・ミーティング2016」(主催 バイエル薬品株式会社)が11月20日、ROX・3Gマルチコート(東京都台東区)で開催されました。

講師として指導にあたったのは、サッカー元日本代表でサッカー解説としてメディアで活躍されている福田正博氏、東京医科大学臨床検査医学分野 教授 天野景裕先生、東京大学医科学研究所付属病院 理学療法士 野口恵先生。
 「みんなと一緒にフットサルをやってみたい」そんな患児をサポートし、「楽しかった」思いを共有しようという「ハッピーシェアプロジェクト」。
今回は小学校低学年の児童25名が参加、その中には血友病の児童も8名参加していましたが、児童全員が同じようにボールを追いかけ走り回っていました。

スポーツ女子の皆さんの中には、子供達にスポーツの楽しさを伝える仕事に就きたいという学生も多いですよね。
血友病の子供がスポーツを通して体を鍛えるためには、適切な準備や注意が必要です。
指導者が病気についての知識を持ち、正しい対応の仕方を身に着けることで、患児もスポーツの楽しさを知ることができます。

【血友病について】

今回のイベントでは血友病治療専門医である天野先生が、参加した子供達に血友病についてわかりやすくお話をされていました。

天野先生は、模型図を使って出血した時の血を止める仕組みについて説明をします。
一次止血二次止血の仕組みについて、少しご紹介したいと思います。

血管が破れると、血液中の血小板が破れたところに集まって穴をふさぐ血栓を作ります。
これが一次止血です。

血管の穴をふさぐために、子供達が血小板に見立てた黄色いボールを順々に入れています。

穴がふさがったように見えますが、隙間ができていることを天野先生は指摘します。
血小板だけでは、血は完全には止まりません。
血液中の「血漿」という液体に溶け込んだ「凝固因子」がフィブリンを形成し、血栓を硬くすることで、しっかり穴をふさぎます。これが二次止血です。

フィブリンに見立てた白い袋を血小板の上にのせました。
このフィブリンを形成する凝固因子は13個あります。その8番目、9番目が足りない状態が血友病です。
8番のボールを投入することで、どう変わるか実験をしました。

出血は、頭の中、筋肉や関節の中など目に見えないところでも起こります。
体の成長に伴い、出血しやすい部位も変わっていくのだそうです。幼児から小学校低学年は、関節内での出血が起こりやすい時期です。
関節の中に血が溜まらないように注意しなければなりません。

予防法には、不足している凝固因子を注射薬で補う補充療法と、スポーツで筋肉を鍛える方法があると天野先生。
今度は、注射による止血を血液に見立てた赤い水を使って体験しました。

注射薬に見立てた液体を注入していきます。

「止まった!」
各グループから子供達の声が上がります。
スポーツをする前に予防注射をしておくことで、血友病でも一緒にスポーツができることを子供達は学びました。

(次回へつづく)

<講師紹介>

天野景裕(あまの・かげひろ)先生
東京医科大学医学部医学科 臨床検査医学分野 教授
1988年東京医科大学卒業。
同大学病院臨床病理科入局。
1995~1997年アメリカ・ミシガン大学留学
日本臨床検査医学会
認定臨床検査専門医
日本輸血・細胞治療学会認定医
日本救急医学会認定ICLSコースディレクター

2016年11月掲載記事リライト