全国2,459人の身体活動調査から考える、人生後半のウェルビーイング
「毎日、運動をしているから大丈夫」「仕事を引退したら、のんびり過ごしたい」。
健康に気を配っている人も、自由な時間を楽しんでいる人も、気づかないうちに長時間座って過ごしているかもしれません。
読書やテレビ、パソコン、趣味の時間。座って過ごすことは、私たちの暮らしの一部です。
しかし、座っている時間が長すぎることは、健康上のリスクと関連することが分かっています。
笹川スポーツ財団と明治安田厚生事業団が2026年10月7日に発表した「活動量計による身体活動・スポーツの実態把握調査2025」では、日本人の座位行動や身体活動の実態が明らかになりました。
これまでの生活を振り返りながら、これからの健康寿命と、身体を動かしやすい暮らしについて考えてみましょう。
日本人は起きている時間の約6割を座って過ごしている
今回の調査では、全国47都道府県の20~79歳の男女2,459人を対象に、活動量計を用いて身体活動や座位行動の実態を調べました。
その結果、1日あたりの座位行動時間の中央値は523.7分。
約8時間44分にのぼりました。
活動量計の装着時間に占める座位行動の割合は57.4%。
起きている時間の約6割を座って過ごしていることになります。
さらに、全体の30.1%が1日10時間以上の座位行動をしていました。
座位行動とは、椅子に座っていることだけではありません。
起きている間に座ったり横になったりして、エネルギー消費が少ない状態で過ごすことも含まれます。
テレビを見たり、読書をしたり、パソコンで調べ物をしたり。
楽しい時間であっても、長く続けば座位行動の時間は積み重なっていきます。

座りすぎは、健康にどのような影響を与える?
長時間の座位行動は、健康にどのような影響を与えるのでしょうか。
今回の発表資料では、2019年に医学誌『BMJ』に掲載された研究を引用し、座位時間が長くなるほど総死亡リスクが高くなることが紹介されています。
総死亡リスクとは、病気や事故など、原因を問わない死亡のリスクを指します。
また、2026年に医学誌『The Lancet』に掲載された研究として、集団全体で座位時間を1日30分減らすことができれば、総死亡を3.0~7.3%抑制できる可能性が紹介されています。
これは研究に基づく推計であり、一人ひとりの死亡リスクがその割合だけ減るという意味ではありません。
カナダの成人向け「24時間行動ガイドライン」では、座位時間を1日8時間以下に抑えることが推奨されています。
座ること自体が悪いわけではありません。
しかし、長時間座り続ける生活については、見直す余地がありそうです。

運動習慣があっても、座りすぎている人がいる
健康のためにウォーキングやスポーツを楽しんでいる人もいるでしょう。
ところが、今回の調査では、運動・スポーツを実施している成人の32.5%が、1日10時間以上の座位行動をしていました。
また、運動・スポーツを実施している成人でも、43.3%が身体活動の推奨量に達していませんでした。
運動する習慣があることと、日常生活全体で十分に身体を動かしていることは、必ずしも同じではないのです。
例えば、朝にウォーキングを楽しんでも、その後の時間をずっと座って過ごしていれば、座位時間は長くなります。
大切なのは、運動の時間だけでなく、日常生活の中で身体を動かす機会にも目を向けることです。
身体活動は、スポーツだけではない
健康づくりというと、ウォーキングや筋力トレーニング、スポーツなどを思い浮かべるかもしれません。
しかし、身体活動には、日常生活の中で身体を動かすことも含まれます。
買い物に出かける、掃除をする、庭の手入れをする、地域の活動に参加する。
こうした動きも身体活動の一部です。
身体活動の強度を表す単位に「メッツ(METs)」があります。
安静に座っている状態を1メッツとし、その何倍のエネルギーを消費するかを示します。
今回の調査では、1.6メッツ以上3メッツ未満を「低強度身体活動」、3メッツ以上を「中高強度身体活動」として分析しています。
運動が苦手な人も、特別なスポーツを始めなければ健康づくりができないわけではありません。

【日常生活の動きと身体活動】
人生後半、身体を動かす機会はどう変わる?
現役時代には、通勤で駅まで歩いたり、職場内を移動したりと、意識しなくても身体を動かす機会があったかもしれません。
定年退職を迎えると、生活のリズムは変わります。
自由な時間が増える一方で、通勤などによる身体活動の機会が減ることも考えられます。
今回の調査では、高齢者の55.0%が身体活動の推奨量を満たしていました。
一方で、推奨量の半分未満にとどまる人も18.5%いました。
高齢者の身体活動量には個人差があり、十分に身体を動かしている人もいれば、活動量の少ない人もいます。
健康状態や体力、暮らし方は人それぞれです。
だからこそ、年齢を重ねたら一律に運動量を増やすということではなく、自分の状況に合った方法で身体を動かせることが大切ではないでしょうか。

身体を動かしやすい地域では、活動量も多い
今回の調査で注目したいのが、暮らしている地域の環境と身体活動の関係です。
「自動車がなくても生活しやすい」と感じている人では、身体活動の推奨量を満たしている割合が52.4%だったのに対し、そうでない人では44.3%でした。
また、「歩く機会が多い」と感じている人では50.2%、そうでない人では42.6%でした。
利用しやすい運動場所が多い地域でも、推奨量を満たす人の割合が高い傾向にありました。
これらは地域環境と身体活動の関連を示す結果であり、環境を整えるだけで必ず活動量が増えると証明したものではありません。
それでも、健康づくりを個人の努力だけで考えるのではなく、暮らしの環境にも目を向ける必要性を示唆しています。

これからの健康寿命を支える、身体を動かしやすい社会へ
これまでの暮らしの中で、長い時間を座って過ごしてきた人も少なくないでしょう。
しかし、これからの毎日をどう過ごすかは、今から考えることができます。
散歩を楽しめる道があること。
買い物や地域の集まりに気軽に出かけられること。
途中で休める場所や、利用しやすい公共交通機関があること。
こうした環境は、年齢を重ねても外出しやすく、社会とのつながりを持ち続けられる暮らしを支えるものです。
もちろん、自宅で読書や趣味を楽しむ時間も大切です。
座る時間をすべて減らすことが目的ではありません。
大切なのは、座って楽しむ時間と、身体を動かす時間の両方を、無理なく日常生活に取り入れられること。
「もっと運動しましょう」と個人に呼びかけるだけでなく、誰もが自然に身体を動かせる環境を整えていくこと。
健康寿命を支えるために、これからの地域社会に求められる視点ではないでしょうか。

調査概要
調査名: 活動量計による身体活動・スポーツの実態把握調査2025
実施機関: 公益財団法人笹川スポーツ財団、公益財団法人明治安田厚生事業団
発表日: 2026年10月7日
調査時期: 2024年11月、2025年11月
調査対象: 全国47都道府県の20~79歳の男女
解析対象者: 2,459人
調査方法: 活動量計を7日間装着し、身体活動量や座位行動時間などを測定。質問票による調査も実施。
※記事中の座位行動時間や身体活動量の数値は、特記のない限り調査結果の中央値または該当者の割合です。「約6割」は、睡眠時間を含む24時間ではなく、活動量計の装着時間に占める座位行動の割合を指します。
出典・参考資料
- 笹川スポーツ財団・明治安田厚生事業団「活動量計による身体活動・スポーツの実態把握調査2025」
- 川上諒子氏による調査結果の発表資料
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」
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