• 水. 5月 8th, 2024

縁の下の力持ちのもうひとつ下で支えるマネージャー 一橋大学端艇部

支えていく以上、相手が何を考え、何に悩み、何を欲しているのかを理解する。
それができてこそ、「近くにいる人」ではなく「支える人」になれる。
コロナ禍で選手を支えるマネージャーの業務、活動をするうえでの想いについて、一橋大学端艇部(以下、ボート部)のマネージャーに話を聞いた。
コロナ禍のため、メールでのインタビューに協力いただいた。

ボート競技は、2000mの直線コースを速さで競う競技だ。
ボートに乗る人数、オールの種類で約7種目に分かれている。
速さを競う単純な競技のように思いがちだが、ルールが単純だからこそ奥が深い競技だという。

多岐に渡り数多くの仕事をするマネージャー業務
一橋大学ボート部は埼玉県戸田市にある艇庫の施設で寮生活をしている。
そのためマネージャーは、非常に幅広い活動を行なっている。
選手の食事管理、メンタルケアなど身体的な面から精神的な面まで支えているのだ。
また、広報、会計など部内外のアプローチなど運営面もマネージャー業務のひとつ。
「主務として、大会への出漕手続、部の備品管理、大学関係者などとのコミュニケーションまで行っており、自問自答する日々」と言うのは、代表幹事の尾邊琢真さん(経済学部4年)。
選手が努力する姿を日々間近で見てきているからこそ、試合本番直前はマネージャーにとっても、同じ空間にいるだけで緊張する瞬間だ。

2つのやりがい
尾邊さんは、マネージャー活動のなかでやりがいを感じる場面が2つあるという。
ひとつは選手・マネージャー問わず総力戦で試合に臨めた時。
もうひとつは、選手やコーチをはじめ、OBやOGなど一橋大学ボート部関係者に、「尾邊に主務を任せてよかった」と言ってもらえた時だ。
マネージャー業務は選手と比べ定量的な結果が見えにくい分、ふとした瞬間にそう言われることが、活動の励みになっている。
主務としての仕事定義は難しいが、「選手・マネージャーが一心に目の前の練習・仕事に向き合える環境づくり」を意識して活動してきた。
全部員が何事もなく本番を迎えられ、全力で戦えた時、マネージャーとしての存在意義を実感するそうだ。

選手の食事管理
食事を管理するのもボート部マネージャーの大切な業務だ。
食事メニューを考えるにあたって、「栄養と美味しさの両立」を1番に意識していると言うのは、マネージャー長の小澤奈未さん(商学部4年)。
食事が楽しみになるように、アスリートにとって必要な栄養・量に加え、選手の声も聞きながら味にも気を使うよう毎回意識しているそうだ。

コロナ禍での活動
コロナ禍で自宅練習を余儀なくされた昨年11月。
感染者を出してはいけないという思いの中で、部員に厳しい制限を強いた時は非常に心苦しかったと尾邊さんは言う。
さらに今年1月、2度目の緊急事態宣言が発令されてからは、大学から部活動全面禁止が通達された。
強豪の私立大学は戸田で練習を継続していた。
練習が継続できないかもしれないという不安と恐怖を抱え過ごしていたという。
一橋大学ボート部関係者の協力で、活動継続許可を得たことは今シーズンで最も大きな出来事だったと尾邊さんは振り返る。
今もなお、コロナ禍である現状は変わらない。
臨機応変な行動制限、定期的なPCR検査などコロナ感染対策の甲斐あって、今日まで感染者ゼロで迎えられている。

マネージャーから見た部の魅力
「未経験から、学生日本一を目指す」
この姿勢が何よりの魅力だと言うのは、広報幹事の小久保遥香さん(社会学部3年)。
一見不可能に思える挑戦に惹かれ、集まった部員たちが、選手・マネージャー問わず、大学生活4年間を懸けて本気で取り組んでいる姿は、一橋大学ボート部ならではの魅力だという。
また、部員たちの人柄も魅力のひとつだ。
共同生活だからこそ、家族のような雰囲気がある。
こうした関係性を築けているからこそ、ボートが2000m切った瞬間、マネージャーも心を揺さぶる体感を味わうことができるのだ。
ボートが2000m切った瞬間、出場している選手をはじめ、陸で応援しているマネージャー、ファン、その他たくさんの人々が歓声をあげて湧く光景は、とても印象的なのだという。

ファンクラブ設立
一橋大学ボート部は今年10月、「日頃から応援してくださっている方々との繋がりをより一層深めたい」という思いからファンクラブを設立した。
ファンクラブでは、部員1人1人のインカレに向けた思い、日頃の練習の様子などを配信している。
ファンクラブの入会について、今年度の入会は、入会費・年会費共に無料。
コロナ禍で観戦が制限される中、応援メッセージを直接届けることができるなど、様々な企画を用意している。

一橋大学ボート部マネージャーからのメッセージ
いつもたくさんのご声援、本当にありがとうございます。
皆様からのご期待に応えられるよう、これからも部員一丸となって挑戦して行きます。
これからも、どうぞよろしくお願いいたします!


東京オリンピックを経て数多くのアスリートが引退したが、彼らは引退会見で必ず支えてくれた全ての人々に向けて感謝の気持ちを述べていた。
特にアスリートの周りには、身体面をはじめ多くの分野で支えてくれる人が近くにいる。
それは大学スポーツにおいても同じであることを今回の取材で私は知った。
メディアを通して、アスリートの努力は一部でも知ることができる。
しかし、アスリートと同じようにスポーツに向き合い、努力している人たちがいる。
彼らの存在は、スポーツの世界になくてはならないものだ。
アスリートと同様にアスリートを支える人も持っている「スポーツの力」について、あらためて発信したいと感じる取材になった。
協力いただいた一橋大学ボート部マネージャーの皆さん、ありがとうございました。

RanRun学生スタッフ 茂村 優来(昭和女子大学2年)