• 水. 10月 14th, 2026

【学生×未来社会】「調べて終わり」にしない。佐賀大学の学生4人が挑む、地域の自然と文化を守る活動

佐賀県唐津市の自然豊かな里山で、大学生たちが地域の未来につながる活動に取り組んでいます。
佐賀県初の環境省認定「自然共生サイト」である唐津市相知町横枕で、佐賀大学の学生4人が生物多様性調査に参加しました。
地域に伝わる「井堰(いせき)まつり」に合わせて水生生物を調査し、自然環境と人々の暮らしのつながりを学び、
調査で得た知見を地域に伝える取り組みも進んでいます。

地域の伝統行事に合わせて生物調査

NPO法人唐津Farm&Foodが2026年10月4日、佐賀県唐津市相知町横枕で、第2回生物調査を実施しました。
調査には、佐賀大学の徳田誠教授(システム生態学研究室)の協力のもと、同大学の学生4人が参加。
地域で年に一度行われる「井堰まつり」に合わせて、水を落とした井堰の中で水生生物を中心に調査しました。

横枕を流れる厳木川には、水位を調整するための堰があります。
地域では年に一度、堰の底にたまった土砂を流すために水を落とし、その際に捕れた鮎やウナギ、ツガニなどを地域の人々でいただく「井堰まつり」が昔から続いています。

今回、学生たちは水を落とした井堰の中に入り、ブロックのすき間などに網を入れながら生きものを探しました。
当初は周辺の山や田んぼなども調べる予定でしたが、多くの生きものが見つかったため、午前中は井堰の中での調査に費やしました。

ブロックのすき間に網を入れて、生きものを探します

確認されたのは、魚類、エビ・カニ類、貝類、昆虫などで、希少な生きものも複数確認されています。
写真は、ツガニの名で親しまれるモクズガニです。

詳しい調査結果は今後整理して公表する予定で、希少種の具体的な名前は保全のため公表していません。

50匹以上の鮎を確認。自然と共に暮らす地域の文化

近年、横枕では気候の変化や鵜などの影響もあり、井堰まつりで鮎がなかなか捕れない年が続いていたといいます。
しかし今年は、学生4人が川に入り、50匹以上の鮎を捕ることができました。
捕れた鮎は食べる分だけを残し、それ以外は川へリリース。
昼食には地域の人々と学生が集まり、鮎を囲んでバーベキューを楽みました。

地域に受け継がれてきた行事と、大学生による生物調査。
自然の恵みをいただきながら、そこに暮らす生きものを知る機会にもなりました。

午後には、8月の第1回調査で設置した赤外線カメラの見回りとSDカードの交換を実施。
確認したデータの一部には、横枕を歩き回る大きなイノシシの姿も記録されていたそうです。

8月に設置した赤外線カメラの見回り

生物調査から情報発信へ。芸術分野の学生も参加

今回の活動で注目したいのは、生物調査だけにとどまらない取り組みです。
参加した学生のうち1人は、芸術分野を学んでいる学生です。
調査によって明らかになってきた横枕の自然や生きもの、地域の暮らしについて、子どもから大人まで楽しみながら知ってもらえるよう、ZINE(小冊子)やパンフレットづくりにも協力しています。

自然環境を調べることと、その価値を人々に伝えること。
異なる専門分野で学ぶ学生が、それぞれの知識や経験を生かしながら、地域の自然を未来へつなぐ活動に参加しています。

水を落とした井堰の中で、みんなで網を入れて生きものを探します(2026年10月4日・横枕)

「調べて終わり」にしない。地域の未来につなぐ

NPO法人唐津Farm&Foodの副理事である木下翔太氏(横枕農園)は、今回の活動について次のようにコメントしています。

「近年は気候の変化や鵜などの影響もあり、井堰まつりでも鮎がなかなか捕れない年が続いていました。しかし今年は、元気な学生4人が川に入って大活躍。生物を『調べて終わり』にするのではなく、どんな生き物が暮らしているのか。なぜこの環境が残っているのか。地域の暮らしや文化と自然がどうつながっているのか。少しずつ記録し、地域内外の皆さんに伝えていきたいと思います。」

また、同法人の副理事である小嶋宏明氏は、地元の大学との連携について「地元の自然環境は、地元の大学のみなさんがいちばんよく知っています。佐賀大学の徳田先生と学生が、地域とのつながりを大切にしてくださっているおかげです」と話しています。

季節を変えて調査を継続。自然環境の管理に生かす

調査が行われた「相知町横枕自然共生区域」は、2023年度後期に佐賀県で初めて環境省の自然共生サイトに認定された里山で、対象面積は36.67ヘクタール。
2025年度には生物多様性増進活動促進法に基づく認定へ移行しています。

これまでの調査では、約140種の生きものが確認されています(暫定値・精査中)。
今回の生物調査は、環境省の令和8年度生物多様性保全推進交付金を活用した事業の一環として実施されました。
調査は季節を変えて年3回行う計画で、次回は11月下旬を予定。
同じ手法で継続的に記録を重ね、横枕の自然環境に合った管理指標づくりにつなげていきます。

大学で学んだ知識を地域の現場で生かし、調査の成果を人々に伝えていく。
学生たちの参加は、地域の自然や文化を次の世代へつないでいく取り組みのひとつとなっています。

事業概要

  • 事業名:相知町横枕自然共生区域 生物多様性モニタリング高度化・地域主体管理体制構築プロジェクト
  • 実施団体:NPO法人唐津Farm&Food
  • 制度:環境省 令和8年度 生物多様性保全推進交付金(生物多様性保全推進支援事業)
  • 実施期間:2026年6月1日~2027年2月28日
  • 協力:佐賀大学 徳田誠教授(システム生態学研究室)、横枕地区のみなさん

詳細:NPO法人唐津Farm&Food公式サイト

写真提供:NPO法人唐津Farm&Food

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