• 日. 9月 13th, 2026

「諦めている場合ではない」環境危機時計は9時39分、若い世代の希望を未来の行動へ

2026年の「環境危機時計®」が示した時刻は「9時39分」――。
公益財団法人旭硝子財団が9月8日、日本科学未来館で「『環境危機時計®』調査第35回記念 時刻発表会 2026」を開催しました。
世界の有識者が感じている地球環境への危機感を時計の時刻で表す「環境危機時計®」。
2026年の世界平均時刻は前年から6分進み、「極めて不安」を示す9時39分となりました。

一方、同時に発表された「第7回 生活者の環境危機意識調査」では、未来への希望を感じさせる結果も示されています。
環境問題を「解決できる」と考える割合は、大人世代では27%だったのに対し、高校生世代では51%。
若い世代の過半数が、環境問題は解決できると考えていました。

環境危機が深刻さを増すなか、私たちは未来をどう捉え、何をすればいいのでしょうか。
会場となった日本科学未来館では、シンボルである直径6mの球体ディスプレイ「ジオ・コスモス」に、2026年の環境危機時計「9時39分」が映し出されました。

境危機時計

発表会には、科学者・宇宙飛行士の毛利衛氏、気候科学者の江守正多氏、登山家・タレントの野口絵子氏が登壇。
それぞれの視点から、地球環境の現在と未来について語りました。

宇宙から地球を見た毛利衛氏の時計は「11時34分」

宇宙からの視点と、「地球生命として生き伸びる」ための行動の重要性を語る
基調講演に登壇したのは、宇宙飛行士で日本科学未来館名誉館長の毛利衛氏です。

毛利衛氏

毛利氏は「ジオ・コスモス」を使い、宇宙から見た地球の姿を紹介。
環境危機時計を「地球の状態を知る手段」と捉え、地球環境の尊さと現在直面している危機について語りました。

登壇者自身の環境危機意識から算出する「私の環境危機時計」では、毛利氏は「11時34分」。

非常に高い危機感を示す時刻となりました。

環境危機時計を持った毛利氏

それでも、毛利氏が伝えたのは悲観ではありません。
「地球生命として生き伸びる」というメッセージを掲げ、地球の修復はまだ間に合うと強調。
科学技術をはじめとするさまざまな知恵を結集し、決して諦めず、持続的に生き残っていこうと行動を呼びかけました。

高校生の51%が「環境問題は解決できる」

発表会では、旭硝子財団が日本の一般生活者を対象に実施した「第7回 生活者の環境危機意識調査」の結果も紹介されました。
注目したいのが、環境問題の解決可能性についての世代差です。
大人世代で「解決できる」と回答した人が27%だったのに対し、学校でSDGsなどについて学んできた高校生世代では51%に上りました。
危機に直面している若い世代が、必ずしも未来を悲観しているわけではありません。
むしろ、「未来は変えられる」と考えている若者たちがいることが見えてきます。

「若者の前向きな姿勢は大人世代の希望」

理想の速度ではなくとも対策は進んでいる。危機感と解決策をセットに、前向きな行動と発信へ
続いて行われた特別対談には、気候科学者の江守正多氏と、登山家・タレントの野口絵子氏が登壇。

高校生世代の過半数が「環境問題は解決できる」と回答した結果について、野口氏は「未来を変えようとする子どもたちのアクションの表れ」と分析。

野口絵子氏


江守氏も、若者の前向きな姿勢は大人世代にとっての希望であり、「諦めている場合ではない」と背中を押されると応じました。

また、環境危機を社会へどう伝えていくのかについて、江守氏は、危機感だけではなく「解決できる」という説明もセットで伝えることが重要だと指摘。
理想とする速度ではなくても、対策は進んでいるという前向きな事実を伝える意義について語りました。

江守正多氏

二人の「私の環境危機時計」は、偶然にも同じ「8時54分」。

「私の環境危機時計」を持った江守氏と野口氏

野口氏は、食育活動などの経験から自然が元に戻ろうとする力を信じ「まだ遅くない」と訴え、江守氏も若い世代の前向きな意識に刺激を受けながら、社会全体で行動を起こしていくことへの期待を示しました。
そして、暮らしと自然の結びつきへの意識や、SNSでの情報収集など今日からできる身近な一歩を呼びかけました。

環境危機時計は「行動を起こすための時計」

「9時39分」。
時刻だけを見れば、不安を感じる数字かもしれません。
しかし、旭硝子財団の杉本直樹専務理事は、環境危機時計について「単に不安を知らせるためのものではない」と説明しています。

旭硝子財団の杉本直樹専務理事

時計が示す数字だけでなく、その背景にある一人ひとりの意識や危機感を共有し、「これから何ができるのか」を考え、対話を生み出すきっかけにすること。

未来を悲観するためではなく、“行動を起こすための時計”に
島村琢哉理事長も発表会の最後に、環境危機時計は未来を悲観するためではなく、私たちが今どこにいるのかを知り、これから何ができるのかを考えるための時計でありたいと語りました。

島村琢哉理事長

環境問題という言葉は、あまりにも大きく、自分一人が何かをしても変わらないと思ってしまうことがあります。
しかし、「解決できる」と考えている高校生世代が過半数いることを、私たち大人はどう受け止めるでしょうか。
危機を知ることと、希望を持つことは矛盾しません。
現在地を知り、できることを考え、行動する。
環境危機時計の「9時39分」は、その一歩を始めるための時刻なのかもしれません。

【開催概要】
「公益財団法人旭硝子財団『環境危機時計®』調査第35回記念 時刻発表会 2026」

開催日:2026年9月8日(火)
会場:日本科学未来館
主催:公益財団法人旭硝子財団
登壇者:
毛利衛氏(科学者・宇宙飛行士/日本科学未来館名誉館長)
江守正多氏(気候科学者/東京大学未来ビジョン研究センター教授)
野口絵子氏(登山家・タレント)
島村琢哉氏(公益財団法人旭硝子財団 理事長)
杉本直樹氏(公益財団法人旭硝子財団 専務理事)

司会:櫻田彩子氏(エコアナウンサー)

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