
YouTubeやメディアでも活躍する内科医・橋本将吉先生(ドクターハッシー)が、ヘルスリテラシーを高めるための実践的な 健康知識をお届けする連載。
医師だからこそ伝えられる“正しい情報”を月替わりテーマで解説します。
「夏が終わったのにまだ疲れが抜けない」「8月が過ぎたのに、なんとなくだるい」そんな症状を感じていませんか?それは「残暑バテ」かもしれません。
第15回は、夏の疲れを引きずらないための、医学的に正しい「回復のための休み方」をお伝えします。
内科医の橋本将吉(ハシモトマサヨシ)です。
「夏バテは夏の話でしょ?」と思っている方も多いかもしれませんが、実は夏本番よりも8月後半〜9月にかけての方が、心身の疲れが表面化しやすいのです。
これが「残暑バテ」と呼ばれる状態です。
今回は、残暑バテのメカニズムを整理しながら、秋を元気に迎えるための「回復の休み方」を具体的にお伝えします。
「残暑バテ」とは何か?夏バテとの違い
夏バテは、主に夏のピーク(7〜8月初旬)における高温・多湿・強い紫外線によって体力が消耗し、食欲不振・だるさ・倦怠感として現れるものです。
一方、残暑バテは夏のダメージが蓄積したまま、秋口に向けて一気に噴き出すものです。
夏の間は交感神経が緊張状態を保つことで「なんとか動けていた」状態が、気温が少し下がり始めるとともに緊張が緩み、蓄積した疲れが一気に表面に出てきます。
夏の間に「意外とそこまで疲れなかった」と感じていた人ほど、残暑バテにかかりやすいのはこのためです。

あなたは大丈夫?残暑バテのサインをチェック
☑ 朝起きても疲れが抜けた感じがしない
☑ 食欲が戻らない、または食べ過ぎてしまう
☑ 夏の間はできていたことが、面倒に感じるようになった
☑ 気温が下がってきているのに、身体が重い
☑ 肌の調子が悪い・乾燥しやすくなった
☑ 夜、なかなか眠れない・眠りが浅い
☑ なんとなく気分が落ち込みやすい・やる気が出ない
3つ以上当てはまった方は、残暑バテのサインが出ている可能性があります。
症状が強い・長く続く場合は医療機関への相談をおすすめします。
残暑バテが起きる3つのメカニズム

残暑バテは「夏が終わったから大丈夫」ではなく、夏の間に積み重なった3つのダメージが秋口に同時に噴き出すことで起きます。
① 自律神経の「夏モード」からの切り替え失敗
夏の間、自律神経がフル稼働している状態が続いた後、気温が少し下がり始めると自律神経がうまく切り替わらず、夏モードのまま秋を迎えてしまうことがあります。
② ミネラル・ビタミンの慢性的な枯渇
夏の発汗でナトリウム・カリウム・マグネシウムが継続的に失われ、食欲低下による食事量の減少でビタミンB群も不足しがちに。これが慢性的なだるさの原因の一つです。
③ 睡眠負債の蓄積
真夏の高温で睡眠が浅くなる夜が続いた結果、「睡眠負債」が積み上がり、秋口に一気に疲れとして表面化します。
医師が教える「回復のための休み方」5つの鉄則
残暑バテの回復には、運動・食事・入浴・睡眠という4つの柱を意識的に整えることが近道です。
どれか一つを頑張るより、この4つを「ゆるく・丁寧に」続けることが大切です。
鉄則① ただ休むのではなく「積極的な回復」を意識する
💡 POINT:回復には「受動的回復(パッシブリカバリー)」と「能動的回復(アクティブリカバリー)」の2種類があります。残暑バテには後者が効果的です。
じっとしていると血行が停滞し、老廃物が排出されにくくなるため、慢性的な疲労の蓄積には「ただ休む」だけでは回復が遅くなることがあります。
ウォーキング10〜20分・ぬるめの入浴・消化にやさしい食事など、身体に軽い刺激を与えながら回復を促すアクティブリカバリーの方が、残暑バテには向いています。

鉄則② 「胃腸を立て直す食事」で内側から回復する
💡 POINT:冷たいものや脂っこいものを避け、消化にやさしい食事を選びましょう。
温かいスープ・雑炊・蒸し野菜・白身魚など消化にやさしく栄養価の高い食事を選ぶことが大切です。
特に意識して摂りたい栄養素は、ビタミンB1(豚肉・大豆・玄米)、マグネシウム(豆腐・ナッツ・海藻)、たんぱく質(卵・鶏肉・魚)の3つです。

鉄則③ 「38〜40℃のぬるめ湯で15分」が疲労回復の黄金法則
💡 POINT:熱すぎるお湯は交感神経を刺激して逆効果。ぬるめの湯に長めに浸かることが副交感神経を優位にするコツです。
ぬるめのお湯に15〜20分浸かることで、全身の血行促進・筋肉のリラックス・自律神経の安定が促されます。
できれば週3〜4日は湯船に浸かる習慣をつくってみてください。

鉄則④ 「睡眠時間と質」にこだわる
💡 POINT:夜23時〜深夜2時は「成長ホルモンのゴールデンタイム」?そんな認識にも注意が必要です。
睡眠時間だけでなく、睡眠の質を整えることも大切です。
成長ホルモンは、入眠後に訪れる深いノンレム睡眠のタイミングで多く分泌されます。
『夜23時〜深夜2時に寝なければならない』というより、毎日の就寝・起床時間をできるだけ一定にし、十分な睡眠時間を確保することを意識しましょう。

鉄則⑤ 「15〜20分の昼寝」で午後を立て直す
💡 POINT:20分以内の仮眠(パワーナップ)は、認知機能と集中力の回復に医学的な有効性が認められています。
30分以上の昼寝は深い睡眠に入ってしまい、夜の睡眠への悪影響につながります。
アラームをセットして「必ず20分以内」を守ることが大切です。

残暑バテ回復を妨げる「やりがちなNG」と対処法
残暑バテの回復を妨げる行動には共通点があります。
「頑張っているつもりが、実は回復を遠ざけている」パターンです。
❌ 「疲れているから」と1日中横になる
→ 血行が停滞してかえって疲れが取れにくくなります。
短い散歩やストレッチなど、軽く体を動かすことを意識しましょう。
❌ 食欲がないからと食事を抜く
→ 量を減らしてもよいので、回数は減らさないようにしましょう。
スープやヨーグルトなど、胃腸に負担の少ないものから始めてみてください。
❌ カフェイン・栄養ドリンクで誤魔化す
→ 睡眠の質を低下させ、夜の回復を妨げます。
午後3時以降はカフェインを避け、水や白湯に切り替えましょう。
❌ 「涼しくなったから大丈夫」と油断する
→ 9月こそ夏のダメージが出やすい時期です。
気温が下がっても、回復のルーティンをもうしばらく続けることが大切です。
おわりに
残暑バテは、夏のダメージが時間差でやってくる、身体からの正直なメッセージです。
「ただ休む」のではなく、軽い運動・温かい食事・ぬるめの入浴・良質な睡眠を意識した「積極的な回復」が、残暑バテを抜け出す最短ルートです。
夏の終わりを健やかに乗り越えて、実りの秋を元気いっぱいで迎えましょう。
橋本 将吉先生プロフィール

内科医。『西新宿セルフライフ内科クリニック』院長。
登録者数88万人超えのYouTubeチャンネル『ドクターハッシー/内科医 橋本将吉』にて 健康教育を発信している。2011年に「医学教育という専門領域から、日本と世界の明るい未来を創造する」という理念のもと、株式会社リーフェホールディングス(旧株式会社リーフェ)を設立。
医学生向けの個別指導塾『医学生道場』を運営するほか、2022年9月には健康や医学を医師から学べるサービス『リーフェアカデミー(旧:ヘルスケアアカデミー)』をリリースし、企業や学校等でのセミナーも展開している。
2023年11月には、現役医師の目線から日々を健康に暮らすためのアイテムを扱うライフスタイルブランド「ハシモトマサヨシ」を立ち上げ、乳酸菌飲料「乳酸菌V28」などの商品を展開している。
2026年7月には「西新宿セルフライフ内科クリニック」を開院し、院長を務める。
「櫻井・有吉THE夜会」「林修の今、知りたいでしょ!」「めざましどようび」など多数のテレビ番組に出演。著書に『薬のトリセツ』(自由国民社)、『「老いても元気な人」と「どんどん衰えていく人」ではなにが違うのか』(アスコム)などがある。
リーフェホールディングス:https://li-fe.co.jp/
医学生道場:https://igakuseidojo.com/
リーフェアカデミー:https://healthcare-academy.co.jp/
ハシモトマサヨシ:https://hashimotomasayoshi.co.jp/
