• 金. 3月 1st, 2024

「社会福祉ヒーローズ」賞 ファイナリスト7人決定

全国社会福祉法人経営者協議会(東京都千代田区)が、福祉現場の第一線で活躍する若手を表彰する、2023年度の「社会福祉ヒーローズ」賞の受賞者(ファイナリスト)7人を決定しました。
7人は日本一の「ベストヒーロー賞」を決める全国大会(2/27東京開催)に出場します。

今回、受賞された方々は、創意工夫を凝らし、“新たな福祉”に挑戦する、1都4県(新潟、東京、愛知、兵庫、大分)の7人で、その挑戦や向上心を讃えます。

受賞者は、<94歳の老人ホーム利用者と絵本を制作して全国の図書館に寄贈><認知症の方のケアにプログラミングやITを活用>といった介護・福祉業界の常識にとらわれない活躍、さらに<障がい者の仕事を創出しながら地域の伝統文化を次世代に承継><「福祉従事者」と「企業」の協働による障がい者雇用の拡大><保育の魅力と専門性をSNSを活用して発信>といった社会課題の解決を目指す面々です。

7人のうち、兵庫県の溝田ラビ(みぞたらび)さんは20歳で歴代最年少の受賞となり、足立裕介(あだちゆうすけ)さんは新潟県初の受賞者です。

「社会福祉ヒーローズ」は2018年に創設した賞で、介護や保育、障がい者支援などに従事する20~30代の若手職員を対象にしています。
「社会福祉の甲子園」として、「福祉の世界を変える意欲と実績のある若手」を基準に、これまで34人を表彰しています。

2022年度ベストヒーロー賞の紹介記事

6回目を迎える今回は、全国から58人の応募があり、大学教授や福祉関連の学生起業家ら有識者が7人を選出しました。

それぞれの取り組みをご紹介します。

社会福祉法人 フラワー園 吉田貴宏さん (愛知県)
94歳と作った絵本を全国に、アイドルをプロデュースも、独創的な活動

フラワー園吉田貴宏さん

愛知県名古屋市の特別養護老人ホーム「あんのん」(社会福祉法人フラワー園 運営)に勤務する吉田貴宏さんは、施設長を務めながら、ラジオパーソナリティとしても活動し、また福祉を志す若者を育てるなど、従来の「特別養護老人ホーム」の活動の枠にはまらない挑戦を続けています。
これまで、94歳の利用者と職員らで絵本の出版(三恵社)を手がけたほか、「介護・福祉職を憧れの職業に」を合言葉に、施設で働くヘルパーさんら、20〜30代の女性6人のアイドルグループを結成(2018年5月)。

フラワー園吉田貴宏さん活動写真

2枚のオリジナル曲を携えて、日本全国から海外まで、福祉系イベントなどに出演し、歌や踊り、トークで介護の魅力を発信しました。
そのほか、施設の庭に地域住民が無料で利用できる足湯を開設するなど、活躍は多岐にわたります。
全ては、「介護の仕事の魅力である生き甲斐支援」を、信頼できる「仲間」とともに発信をするためです。

今回の取り組みである絵本は、高齢の女性利用者に「天国のおじいさんの所に行きたい」と言われた介護福祉士の男性が、その女性を通じて自らが果たすべき役割や支援の本当の意味に気づいていく物語で、94歳の利用者が17枚のイラストを担当しました。
絵を描くことが好きな利用者に、吉田さんが提案。

フラワー園吉田貴宏さん活動写真2

その絵本を全国の方に手に取ってもらおうと、47都道府県の図書館に寄贈完了とともに、読み聞かせ動画をYouTubeにて配信しています。
現在は「日本すべての小中学校への寄贈」を目標に掲げており、地元教育委員会を通じて名古屋市へは寄贈を完了しました。
寄贈拡大に向けては、介護職従事者を対象としたクラウドファンディングを活用する予定で、絵本の寄贈プロジェクトは続いています。

社会福祉法人 弘陵福祉会 溝田ラビさん(兵庫県)
歴代最年少20歳で受賞、認知症の方をプログラミングやITを駆使して支援

弘陵福祉会 溝田ラビさん

きっかけは2年前。認知症の方が介護ロボットと遊んだり、YouTubeを見たりするのが大好きなことを知りました。
デジタル機器に抵抗がない姿は、「画期的な発見だった」と言います。
その後は、仮想現実(VR)ゴーグルを使って明石海峡大橋などの観光スポットを擬似旅行して楽しんでもらうイベントを開催したり、利用者自らが遠隔操作する分身ロボットを使った取り組みの実証実験を行っています。

弘陵福祉会_利用者と溝田ラビさん

現在、プログラミング技術を生かして挑戦しているのは、認知症の利用者が遊びながらリハビリ・レクリエーションを楽しめる動画コンテンツの制作です。
プロジェクターに、自身の動画コンテンツを組み込み、それを、認知症の利用者が遊べるように、一緒にコラボしてきたオリィ研究所が作るOriHime(オリヒメ)という分身ロボットで遠隔操作します。

また、堪能な語学力を生かし、通訳を買って出て、利用者と外国人介護士の架け橋になるべく尽力しています。
溝田さんは、歴代最年少となる20歳での受賞です。(これまでの歴代最年少は25歳)

社会福祉法人 暁雲福祉会 丹羽信誠さん (大分県)
社会福祉法人と企業が協働し、知的障がい者の雇用を創出

暁雲福祉会 丹羽信誠さん

大分県の障害福祉サービス事業所「ウィンド」(社会福祉法人暁雲福祉会 運営)で、副施設長を務める丹羽信誠さんは、知的障がい者の福祉的就労と一般就労の実践に取り組んでいます。
過去に、従来では一般就労が難しいと言われた知的障がい者の雇用に取り組む「キヤノンウィンド株式会社」に福祉専門職として9年間在籍。
ひとりひとりの障がい特性に着目し、「職域の拡大」「スキルマップの作成による視える化」「合理的配慮の具体化」「障がい特性に配慮した治工具の検討・試作・導入」「アビリンピック(障がい者が技能を競い合う大会)への挑戦」をテーマに、福祉現場と全くフィールドの違う企業担当者と共に協力し合いながら、多くの雇用と就労定着に携わりました。
現在も「就労支援マネージャー」として「ウィンド」で、企業内実習や一般就労を果たした社員たちの就業定着に取り組んでいます。

暁雲福祉会 アピリンピック大分県大会で選手と丹羽さん

常に心がけていることは知的障がいのある社員の「可能性の広がり」と、その可能性を信じて就労支援に関わるチーム全員の「笑顔」です。
障がい特性を理解し、社員ひとりひとりがどうすればもっとわかりやすく作業を理解し学ぶことができるのかを、「福祉従事者」と「企業」の協働によって考え続けた結果、障がい者が携わることのできる作業数を2種類から約60種類へと拡大。
加えて、知的障がい者の平均勤続年数を超える高い就業定着率を実現しています。

「できるかもしれない」を「できる」に。
これまでの現場経験から、障がい者雇用において就職がゴールではなく、「働き続けられる環境を保障し続けること」が大事であると考え、「従来の枠を超えた<協働>を目指した福祉」に挑んでいます。
※厚生労働省の「平成30年度障害者雇用実態調査」によると、知的障がい者の平均勤続年数は7年5カ月

社会福祉法人 中越福祉会 足立裕介さん (新潟県)
県内初受賞、障がい者の労働環境を生みながら伝統や文化を次世代に承継

中越福祉会 足立裕介さん

新潟県長岡市の就労継続支援B型の事業所「みのわの里工房こしじ」(社会福祉法人中越福祉会 運営)で、職業指導員として働く足立裕介さんは、障がい者がアートや協働、社会参加を通じて地域社会に貢献できるような環境や仕組みづくりに取り組んでいます。
なかでも注力するのが、障がい者の労働環境を生み出しながら、障がい者自らが地域の伝統や文化を次世代に承継する取り組みです。
例えば、法人内の事業所で、昔ながらの塩の加工や役目を終えたバッグを次に繋ぐ(再利用する)ための解体作業を他社と協業して行っています。

中越福祉会 制作風景

2023年からは、地元の名物を残すプロジェクトにも挑戦しています。
2004年の中越地震を機に廃業したお店の「三色団子」を製造・販売できる支援体制を事業所内に設け、地域の方のこの団子への思い出を障がい者が承継できるように動いています。
消えゆく地域文化を残せる場を設け、障がい者の働く場所を確保し、彼らが主体となって社会に貢献していく活動です。

社会福祉法人 立川市社会福祉協議会 高橋美季さん (東京都)
「地域福祉アンテナショップ」の取り組み

立川市社会福祉協議会 高橋美季さん

東京都立川市の総合福祉センター「立川市社会福祉協議会」(社会福祉法人立川市社会福祉協議会 運営)で、“地域福祉コーディネーター”として働く社会福祉士の高橋美季さんは、住民主体による福祉のコミュニティーづくりに取り組んでいます。
そのひとつが、「地域福祉アンテナショップ」。
このアンテナショップは、企業や公共団体、個人等が所有している空きスペースや空き部屋を活用して、近隣住民や関係団体が気軽に相談や情報交換をしたり、サロンやコミュニティカフェを開いたりすることができる“つながる場”です。

立川市福祉協議会 BASE

例えば、子どもから高齢者までが集えるコミュニティスペースで、学生が高齢者にスマートフォンの使い方を教える会を開催したり、不登校の子が集う時間にゲーム大会を大きなスクリーンを使って開いたり、若年性認知症の方のピアノコンサートを企画したりしています。
地域に溶け込むことで、福祉への理解を促し、ボランティアの獲得につなげるなど、活動の輪を広げています。

高橋さんは「社会福祉協議会は、民間の社会福祉活動を推進することを目的とした、営利を目的としない民間組織です。そういうと難しいことに思えますが、幅広く、自由に、楽しく、創造力を持って活動しているのだということを、多くの方に伝えたい」と言います。

社会福祉法人 奉優会 角谷由子さん (東京都)
認知症の方と一緒になって没頭、“好き”が心を穏やかに

奉優会 角谷由子さん

東京都中央区の認知症対応型デイサービス「中央区立高齢者在宅サービスセンターマイホームはるみ」(社会福祉法人奉優会 運営)で、介護職に就く角谷由子さんは、作業療法の視点を取り入れながら、認知症の方に適切に向き合い、心穏やかにその人らしく過ごしてもらう時間を長くしています。
認知症には例えば、奇声を発しながら廊下を猛ダッシュで駆け回ったり、入浴拒否といった症状があり、角谷さんも実際に接してきました。

利用者とジェンガをする角谷さん

角谷さんが実践しているケアのひとつが「認知症の方の好きなことに、一緒になって没頭する」こと。例えば、ギターが好きならスタッフがギターを家から引っ張り出し、音楽が好きなら施設内に聴けるスペースをつくり、歌が好きなら一緒にカラオケをします。
好きなことをしている時間は心が落ち着くからです。
そうこうしていると、食事の時間に座ってもいられなかったのに、完食できるようになるなど、他のことにも好影響を与えます。

入浴拒否の場合は、毎日身体に触れます。
例えば、ソファーに温かいお湯を運び、足浴だけでも誘い続けます。
そうすることできちんと入浴できる回数が増えていくこともありました。
目標は「諦めないデイサービス」。
「どうしても発しがちな<座っていて>や<少し待っていて>といった言葉をゼロにすること」。
挑戦は続いています。


社会福祉法人 聖愛学舎 竹谷真衣さん (東京都)
オリジナルソングに作曲して振り付け、ミュージックビデオをSNS配信

聖愛医学者 竹谷真衣さん

東京都の稲城市の保育園「もみの木保育園 若葉台」と世田谷区の保育園「もみの木保育園 太子堂」の両施設(社会福祉法人聖愛学舎 運営)で、“保育士アンバサダー”として、保育の魅力を発信する竹谷真衣sさんは、保育に関わるオリジナルソング(理事長作曲)に合う振り付けを考案し、自らレコーディングを行っています。
それらをミュージックビデオにして、YouTubeなどのSNSに投稿し、保育の素晴らしさや楽しさを届けています。

竹谷真衣さんMV撮影風景

乳幼児向けダンスの創作にも励んでいます。
忍者やDREAMS(将来の夢)など子どもの興味関心からコンセプトを考案し、成長に応じた振り付けを考え、背景など美術まわりにもこだわり、動画を編集し、広く公開しています。ダンスは実際の保育でも使っています。
これらオリジナルの動画やダンスの制作のポイントは、職員の得意分野を生かすこと。
歌やダンス、美術や撮影など、得意な職員を巻き込み、彼・彼女らに主体的に協力してもらっています。
「子どもに主体性を求める今、保育士も同じように主体的に活動することが大切」と考えるからです。

竹谷真衣さん公益事業風景

また園内では、職員同士で保育という仕事の素晴らしさを語り合う時間を、意図的に作るように働きかけています。
職員のポジティブさが、子どもの成長に重要と考えるからです。
「子どもと遊んでいるだけ」というイメージの「せんせい」から、保育士は乳幼児期の専門職である「先生」というイメージに変えるべく活動しています。

社会福祉学生ヒーローズ賞 詳細

全国社会福祉法人経営者協議会は2023年度の「社会福祉ヒーローズ」から新たに、学生を対象にした「社会福祉学生ヒーローズ賞」を新設します。
この賞は、高校や大学、専門学校の団体やサークルで福祉の魅力を伝える、創意工夫あふれる学生による活動を表彰するものです。
今年度は、全国23団体から応募があり、以下3点を基準に審査し、5団体に授与します。

  • 学生ならではの視点があるアクションを含むか
  • 地域や学内の人たちに活動を通して福祉の魅力を伝えられているか
  • 地域や学内での活動の広がりが感じられるか