• 日. 5月 5th, 2024

モチベーションを上げ、パフォーマンスを向上させよう!

はじめまして。「メンタルケア」を担当させていただく、心理学博士で心理カウンセラーの高野雅司です。第1回目は、「モチベーションを上げる」というテーマでお届けします。

RanRun読者の皆さんは、それぞれ自分なりの目標をもって、日々さまざまなスポーツに打ち込む生活を送っていることか思います。
でも、いつでも前向きに「やるぞ!」「今日も頑張るぞ~!」と、モチベーションを保っていくのは大変だったりもしますよね?

なかなか思うようにいかなかったり、失敗して怒られたりして、「私ってダメだ~」「才能ないのかな…」などと気持ちが萎えてしまい、やる気が起きない、練習に身が入らない時もあるでしょう。
どうしたら、しっかりとモチベーションを保って、着実に向上していけるのでしょうか?

★「外からのモチベーション」と「内からのモチベーション」
モチベーションには、大きく2種類あります。
ひとつは、コーチや家族など「外からの影響による」外発的なモチベーション。
典型的には、練習中に監督が「上手いぞ!その調子だ!」と声を掛けたり、逆に「今度〇〇〇〇したら罰走だ!」などとハッパをかける、といったイメージです。

選手側からすれば、「ご褒美」(ホメられる、何かもらえる等)が欲しくて、または「罰」(怒られる、叩かれる等)を受けたくなくて、そのために頑張るということですね。

でも、より大事なのは、ふたつめの方。
「自分の内から湧いてくる」内発的なモチベーションです。

簡単に言えば「やっていて楽しいから、もっとやりたい!」という気持ち。
皆さん、好きだからこそ始めて、今も続けている競技ですよね?
何事においても、基本的に人は「自分自身で判断して選択し、行動し、達成したい」という欲求を持っています。
そうした欲求が満たされていると、内なるモチベーションは高まります。

★ 内からのモチベーションを高める具体的な方法
大事なポイントは、「長期的な夢」と「短期的な目標」とのバランスです。

1)長期的な夢 ~「原点にある思い」を繰り返し確認する
まずは、「この競技の中で自分が達成したいこと」を改めて明確にしておきましょう。
「目標のタイムをきる」「ライバルチームに勝つ」「〇〇大会に出場する(優勝する)」「〇〇選手のようになりたい」「オリンピックに出る」「プロになる」などなど。

自分が達成したい目標を、実際に繰り返し紙に書いたり、口に出して言うようにしてみてください。よく目にするように、大きく書いて壁などに貼っておくのもいいでしょう。
さらに、それを達成している理想的な自分がプレイする姿を、目を閉じて鮮明にイメージし、心の中で思い描いてもみます。

そのようにして、自分の「原点にある思い」に繰り返し触れ、自覚し続けるのです。
目標とする選手やチームの試合を繰り返し見たり、自分の夢や思いを語り合える仲間作りをすることも効果的でしょう。

2)短期的な目標 ~「小さな目標」を立て「小さな成功」を積み重ねる
大きな夢を持つことは大事ですが、そればかり意識していても上手くはいきません。
むしろ「なんでそう出来ないんだ!「やっぱりダメだ…」といった気持ちに結びついてしまうことにもなりかねません。

日々の練習では、逆に「できるだけ現実的で具体的な『小さな目標』を立てて努力する」ことに集中してください。
たとえば、「タイムを0.1秒だけ縮める」「10回に1回は〇〇が成功する」などです。
そして、「それをクリアしたら、次の『小さな目標』を立て直す」ことを繰り返しましょう。

日々「小さな成功」と「小さな達成感」を積み重ね続けること。
練習や試合で少しずつ上手くなることを、純粋に楽しめるようにする工夫が大切です。
できれば日誌もつけて、日々の練習の中で感じたこと、気づいたことなどを整理していくとより効果的です。各目標をクリアした時は、自分をホメる言葉もしっかり書いてあげましょう。

今まさに「旬」のアスリート、ラグビー日本代表の五郎丸選手。
昔、練習でのパフォーマンスがよくなかった時期に、ヘッドコーチに呼ばれ、「過去・現在・未来」という言葉が書かれたホワイトボードを前に、おおよそ次のようなやりとりがあったとのこと。

コーチ:「『過去』を変えることはできるか?」
五郎丸:「いえ、できません」
コーチ:「じゃあ、『未来』を変えることはできるか?」
五郎丸:「はい、それは変えられます」
コーチ:「いや、お前が変えなければならないのは『今』の方だ。
     『今』を変えなければ、決して『未来』も変わらない。
     先の事ばかり考えず、もっと『今』の時間を大事にしろ」
五郎丸選手は、この助言にはっとして、練習に取り組む意識や姿勢が変わリ、その後の大きな成長に繋がっていったそうです。

「未来」への理想を明確に持つと同時に、「今」目の前にある課題に集中し、それに取り組む中での喜びを大切にする。
それが、モチベーションの維持とパフォーマンスの向上に繋がっていきます。
自分ができそうなところから、ぜひ取り入れてみてください。
来月(1月25日)は、「試合前の集中力を高める」というテーマでお届けします。

<講師紹介>

髙野 雅司(たかのまさじ)
心理学博士(Ph.D.)、ハコミセラピー公認シニアトレーナー
一橋大学卒。コンサルティング会社勤務を経て渡米。カリフォルニア統合学研究所 (CIIS)東洋西洋心理学部を卒業し、博士号取得。「マインドフルネスの意識」と「心と身体のつながり」を大事にする心理療法「ハコミセラピー」公認トレーニングを修了し、心理臨床の経験を深める。1997年帰国。コミュニケーショ ン全般に関する研修/コンサルティング。東京や関西を中心にセラピー・セッション、ワークショップや研修トレーニングを実施。
 現在、日本ハコミ・エデュケーション・ネットワーク(JHEN)、日本ラビングプレゼンス協会代表、日本トランスパーソナル学会理事、日本ソマティック心理学協会 SPN(ソマティック・プラクティショナー・ネットワーク)世話人。
 高校時代よりロックやR&Bのバンドでヴォーカルを担当し、現在もライブ活動継続中。

<モチベーションを上げる時に聴く曲>
I’m A Soul Man / James Brown、We Wiil Rock You / Queen& 自分のバンドのライブ録音!
 著書・訳書に、『人間関係は自分を大事にする。から始めよう』(青春出版)、『トランスパーソナル心理療法入門』(日本評論社/編共著)、『ハコミセラピー』(星和書店/共訳)、『魂のプロセス』(コスモスライブラリー/訳)など。