
YouTubeやメディアでも活躍する内科医・橋本将吉先生(ドクターハッシー)が、ヘルスリテラシーを高めるための実践的な 健康知識をお届けする連載。医師だからこそ伝えられる“正しい情報”を月替わりテーマで解説します。
人工甘味料について、あなたはどんなイメージを持っていますか?
安全なのか、それとも体に悪いのか。
情報が溢れる中で重要なのは、極端な判断ではなく“正しく理解すること”です。
健康コンパス第5回は、人工甘味料との上手な付き合い方を解説します。
内科医の橋本将吉(ハシモトマサヨシ)です。
「ゼロカロリーだから体にいいよね」「でも人工甘味料って体に悪そう…」
——この2つの声、どちらも診察室でよく耳にします。
ただ正直に言うと、どちらも正解とは言えません。
人工甘味料は「安全」とも「危険」とも、今の科学では断言できないものなんです。
だからこそ、中身を知ったうえで自分なりに付き合い方を考えてほしい。
今日はそのための話をします。
1. 人工甘味料って、そもそも何?
一言で言うと、「砂糖の代わりに使われる、人工的に作られた甘み成分」です。
砂糖は1gあたり約4kcalのカロリーがあります。
それに対して人工甘味料は、砂糖の数百倍もの甘さを持ちながら、カロリーはほぼゼロ。
ほんの少量で十分な甘さが出るので、「ゼロカロリー」や「糖類ゼロ」の飲み物や食品に広く使われています。
「それなら砂糖より全然いいじゃない」と思うかもしれませんが、話はそこまで単純ではないのです。詳しくは2章でお伝えします。
まずはよく使われる人工甘味料を紹介します。
| 名称 | 砂糖比甘さ | 主な用途・よく入っている食品 |
|---|---|---|
| アスパルテーム | 約200倍 | キャンディー・グミ・チューインガム・スナック菓子・ビスケット など |
| アセスルファムK | 約200倍 | 缶コーヒー・清涼飲料水・キャンディー・ゼリー・プリン・アルコール飲料・レトルト食品 など |
| スクラロース | 約600倍 | スナック菓子・清涼飲料水・アイスクリーム・パン類 など |
| サッカリン | 約300~500倍 | チューインガム・漬物・加工食品 など |
この中で、過去に社会的な議論になったものが2つあります。
アスパルテームは、2023年にWHOが「発がん性の可能性がある」に分類したことで話題になりました。
これはお漬物や加工肉と同じ「可能性の一段階目」の分類で、現時点で明確な結論が出ているわけではなく、研究が続いている段階です。
サッカリンは、1960年代の動物実験で雄ラットに膀胱がんが見られたことがあり一時使用禁止になりましたが、その後サルを含む他の動物では同様の結果は出ず、現在は発がん性物質リストから削除されています。

2. 医師の視点から見た、人工甘味料のメリットとデメリット
内科医として日々患者さんと向き合う中で感じていることをお伝えします。
人工甘味料には使い方次第でプラスに働く面もあれば、気にしておいてほしい面もあります。
プラスの面
カロリーを抑えられる
砂糖を人工甘味料に置き換えると、摂取カロリーをかなり減らせます。
「甘いものをやめられないけど食生活を変えたい」という方の最初の一歩として、選択肢のひとつになりえます。
血糖値への影響が砂糖より小さい
多くの人工甘味料は体の中でブドウ糖に変換されにくいため、砂糖に比べて食後の血糖値への影響が小さいとされています。
血糖値のコントロールが必要な方に対して、選択肢として提示することがあります。
虫歯になりにくい
砂糖は口の中の細菌のエサになり、歯を溶かす酸を作り出します。
人工甘味料は細菌に利用されにくいため、虫歯リスクという観点では砂糖より負担が少ない傾向があります。

マイナスの面
腸内環境への影響がまだよくわかっていない
2022年の研究では、人工甘味料を2週間摂り続けただけで腸内細菌のバランスが変化し始めた人がいることが報告されています。
腸内環境は免疫や代謝とも深く関わっている部分なので、長期的な影響については「まだ研究途上」というのが正直なところです。
長期的な体重管理には直結しない
2023年にWHOが「体重管理を目的とした人工甘味料の長期使用は推奨しない」というガイドラインを出しました。
砂糖を人工甘味料に置き換えれば体重が落ちるかというと、現時点ではそう言い切れないというのが世界的な見解です。
甘さへの感覚が変わっていく
強い甘みに毎日触れていると、舌がその甘さに慣れてしまいます。
フルーツや自然な食材の甘みでは物足りなくなり、結果的に甘いものへの依存が深まることがあります。
患者さんを見ていても、ゼロカロリー飲料をやめたら甘いものへの欲求が落ち着いた、という話はよく聞きます。
「ゼロカロリーだからいい」という思い込みに注意
診察していてよく感じるのがこのパターンです。
「ゼロカロリーだからもう1本飲んでも平気」「甘味料入りだからお菓子を余分に食べてもOK」という思考になりやすい。
人工甘味料を選んでいること自体が、食べすぎや飲みすぎを帳消しにしてくれるわけではありません。

3. 人工甘味料に頼らない「甘さ」の選択肢
「砂糖も気になるし、人工甘味料も気になる。
じゃあ甘いものはどうすれば?」という方に知っておいてほしいことがあります。
実は、どちらにも頼らずに甘みを楽しむ方法があります。
ステビア(植物由来の天然甘味料)
南米原産の植物の葉から抽出される天然の甘味成分で、「人工甘味料不使用」をうたった飲料や食品に使われています。
カロリーはほぼゼロで、人工甘味料とは区別されています。
ただしWHOのガイドラインでは、ステビアを含む「非糖質甘味料」全体について長期的な習慣摂取には注意が示されており、天然だから何でもいいとも言い切れません。
はちみつや果汁など、自然な甘みを活かす
ヨーグルトにはちみつを少し垂らす、果汁100%のジュースを選ぶといった方法で、人工甘味料に頼らない甘みの取り入れ方ができます。
カロリーはゼロではありませんが、少量で満足感が得やすく、栄養素も含まれています。
「量を意識しながら本物の甘みを楽しむ」という発想です。
フルーツを活用する
甘いものが欲しくなったとき、まずフルーツに手を伸ばしてみるのもひとつです。
フルーツには果糖が含まれますが、食物繊維と一緒に摂ることで血糖値の急激な上昇が抑えられます。
いちごやブルーベリー、キウイなどは糖質が比較的少なく、ビタミンも一緒に摂れます。

4. どう付き合っていくか
「人工甘味料は危険」でも「ゼロカロリーだから安心」でもなく、現時点ではグレーな存在です。
だからこそ、自分なりの付き合い方を持っておくことが大切だと思っています。
① 「砂糖の代わり」として短期的に活用する
毎日甘い飲み物を飲む習慣がある人が、まず人工甘味料入りのゼロカロリー飲料に切り替えること自体は、一つのステップになりえます。
ただし、それをゴールにするのではなく、最終的には甘い飲み物全体への依存を減らしていくことを目指してほしいと思います。
② 量と頻度を意識する
現在の基準では使用が認められているとはいえ、長期的・大量摂取についてはまだわかっていないことがあります。
毎日何本も飲む、意識せず摂り続けるという習慣は、一度立ち止まって見直してみてください。
③ ラベルを見る習慣をつける
「アスパルテーム」「スクラロース」「アセスルファムK」——こういった名前を食品のラベルで見かけたとき、「あ、これが人工甘味料か」と気づけるようになるだけで、自分が何をどれだけ摂っているかが見えてきます。
5. まとめ
人工甘味料は、「危険」とも「安全」とも言い切れない、それが今の正直なところです。
カロリーを抑えたり血糖値への影響を小さくしたりという面では確かに役立つ場面があります。
一方で、腸内環境への影響や長期的な使用についてはまだわかっていないことも多く、WHOも長期的な体重管理目的での使用は推奨していません。
大切なのは「怖いから避ける」でも「ゼロカロリーだから積極的に使う」でもなく、何が入っているかを知り、自分がどれだけ摂っているかを意識すること。
そのうえで、人工甘味料に頼らない甘みの楽しみ方も少しずつ取り入れていけると、食生活はもう少しシンプルになると思います。
今日の話が、自分の食と健康を考えるきっかけになれば嬉しいです。
橋本 将吉先生プロフィール

内科医。登録者数85万人超えのYouTubeチャンネル『ドクターハッシー/内科医 橋本将吉』にて健康教育を発信している。
2011年に「医学教育という専門領域から、日本と世界の明るい未来を創造する」という理念のもと、株式会社リーフェホールディングス(旧株式会社リーフェ)を設立。医学生向けの個別指導塾『医学生道場』を運営するほか、2022年9月には健康や医学を医師から学べるサービス『ヘルスケアアカデミー』をリリースし、企業や学校等でのセミナーも展開している。
2023年11月には、現役医師の目線から日々を健康に暮らすためのアイテムを扱うライフスタイルブランド「ハシモトマサヨシ」を立ち上げ、乳酸菌飲料などの商品を展開している。
「櫻井・有吉THE夜会」「林修の今、知りたいでしょ!」「めざましどようび」など多数のテレビ番組に出演。著書に『薬のトリセツ』(自由国民社)、『「老いても元気な人」と「どんどん衰えていく人」ではなにが違うのか』(アスコム)などがある。
リーフェホールディングス:https://li-fe.co.jp/
医学生道場:https://igakuseidojo.com/
ヘルスケアアカデミー:https://healthcare-academy.co.jp/
ハシモトマサヨシ:https://hashimotomasayoshi.co.jp/
