• 月. 4月 13th, 2026

【ドクターハッシー/内科医 橋本将吉の健康コンパス】 第6回「腸の仕組みと今日からできる腸活」

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YouTubeやメディアでも活躍する内科医・橋本将吉先生(ドクターハッシー)が、ヘルスリテラシーを高めるための実践的な 健康知識をお届けする連載。医師だからこそ伝えられる“正しい情報”を月替わりテーマで解説します。

今回のテーマは「腸活」です。よい睡眠をとる、免疫力を上げるなどの話の時に、「腸活」というワードを頻繁に耳にするようになりました。腸活とは具体的にどういうことなのか解説します。

内科医の橋本将吉(ハシモトマサヨシ)です。
昨日は人工甘味料について話しましたが、その中で「腸内細菌のバランスが変化することがある」という話に触れました。
気になった方もいたのではないでしょうか。
実は、腸の状態は消化だけでなく、免疫・気分・睡眠・肌の調子まで幅広く影響していることがわかってきています。
「腸活」という言葉はよく聞くと思いますが、今日はその仕組みと、具体的に何をすればいいかを一緒に考えていきたいと思います。

1. 腸の中では何が起きているの?

私たちの腸の中には、約100兆個もの細菌が住んでいます。
種類は1,000種類以上。これを「腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)」、あるいはその見た目から「腸内フローラ」とも呼びます。
腸内細菌は大きく3種類に分けられます。
体にとってプラスに働く「善玉菌」、マイナスに働く「悪玉菌」、そしてどちらでもない「日和見菌(ひよりみきん)」です。
日和見菌は名前のとおり、善玉菌と悪玉菌のどちらが優勢かによって動きを変えます。
健康な状態では、善玉菌:日和見菌:悪玉菌がおよそ2:7:1のバランスを保っているとされています。
このバランスが崩れると、便秘・下痢・肌荒れ・免疫の低下・気分の落ち込みなど、さまざまな不調として現れてくることがあります。

では、このバランスを崩す原因には何があるのでしょうか。
食生活の乱れ、睡眠不足、ストレス、抗生物質の使用などが代表的です。
そして昨日お話しした人工甘味料も、2022年の研究でサッカリンやスクラロースなどが腸内細菌のバランスに影響する可能性が報告されています。
腸は思っている以上に、日常の習慣に敏感な場所なんです。

2. 腸と体の意外なつながり

腸と脳は「腸脳相関」と呼ばれる神経ネットワークで双方向につながっています。
3月23日の記事で「緊張やストレスが胃腸の不調として出やすい」とお伝えしましたが、あれはまさにこの仕組みによるものです。
脳が感じたストレスが自律神経を介して腸に伝わり、逆に腸の状態が脳にも影響を与えています。

腸は体の免疫細胞の約70%が集まる場所でもあります。
腸内環境が整っていると免疫のバランスが保たれ、風邪をひきにくくなったりアレルギー症状が和らいだりすることも報告されています。

また、体内のセロトニン(気分の安定や睡眠に関わる神経伝達物質)の約90%は腸で作られており、腸内細菌がその産生に深く関わっています。
「お腹の調子を整える」ことが、気分や睡眠の質にも影響してくるのはこういった理由からです。

3. 腸活の基本—食事でできること

腸内環境を整えるうえで、最も影響が大きいのが食事です。
特に意識してほしいのは「食物繊維」と「発酵食品」の2つです。

食物繊維—善玉菌のエサになる
食物繊維は腸内の善玉菌のエサになります。
善玉菌が食物繊維を分解するときに「短鎖脂肪酸」という物質を作り出し、これが腸の粘膜を保護したり、免疫を調整したりする役割を担っています。
食物繊維には「水溶性」と「不溶性」の2種類があり、どちらもバランスよく摂ることが大切です。

水溶性食物繊維(水に溶けてゲル状になるもの)
オートミール・大麦・りんご・バナナ・海藻類・こんにゃくなど。
善玉菌のエサになりやすく、血糖値の上昇を緩やかにする効果もあります。

不溶性食物繊維(水に溶けないもの)
玄米・ごぼう・きのこ類・豆類・葉野菜など。腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)を促して便通を改善します。
日本人の食物繊維の摂取量は慢性的に不足していると言われています。
まずは毎食に野菜・きのこ・豆類のどれかひとつを意識して加えるだけでも、かなり変わってきます。


発酵食品—善玉菌を直接補う
発酵食品には生きた善玉菌(乳酸菌・ビフィズス菌など)が含まれており、腸に直接届いて腸内フローラのバランスを整える助けをしてくれます。
毎日の食事に取り入れやすいものとしては、ヨーグルト・納豆・味噌・醤油・漬物・キムチなどがあります。
特別なものを買わなくても、和食の定番食材がそのまま腸活になるというのは、ありがたいことですよね。

ただし、ひとつ注意があります。
市販のヨーグルトや乳酸菌飲料には、甘みとして砂糖や人工甘味料が添加されているものも多くあります。
昨日お話ししたように、人工甘味料の腸内細菌への影響はまだ研究途上の部分があります。
腸活目的で選ぶなら、できるだけ無糖・加糖なしのものを選ぶのが理想的です。
食物繊維と発酵食品は、組み合わせて摂るとより効果的です。
食物繊維が善玉菌のエサになり、発酵食品で善玉菌を補う——
この2つを意識するだけで、腸内環境は変わっていきます。

4. 食事以外でできること

腸活は食事だけではありません。生活習慣も腸内環境に大きく影響します。

睡眠をしっかり取る
睡眠不足は腸内細菌のバランスを乱すことがわかっています。
寝ている間に腸は活発に修復・再生を行っているため、睡眠の質が腸の状態に直結します。
「なんとなく腸の調子が悪い」という方に聞くと、睡眠が乱れていることが多いんです。

適度な運動をする
運動は腸の蠕動運動を促し、便通を改善します。
また、運動によってストレスが軽減されることで、腸脳相関を通じて腸の状態も整いやすくなります。
激しい運動でなくても、毎日20〜30分程度のウォーキングで十分効果があります。

ストレスをため込まない
慢性的なストレスは腸内細菌叢のバランスを崩す原因になります。
3月23日の記事でご紹介した深呼吸や首を温めるといった自律神経を整えるケアは、腸の観点からも有効です。
ストレス対策は腸活とセットで考えてみてください。

5. 今日からできる、腸活の始め方

難しく考えなくて大丈夫です。腸活は「毎日の小さな積み重ね」で十分です。

① 毎食に食物繊維をひとつ加える
野菜・きのこ・豆類・海藻類のどれかを、毎食意識して取り入れる。
それだけで腸内の善玉菌のエサは格段に増えます。

② 発酵食品を毎日少しずつ摂る
無糖ヨーグルトをひとさじ、朝の味噌汁、夕食の納豆——
どれかひとつを習慣にするだけで十分です。
種類を変えながら摂ると、異なる菌を取り入れられてより効果的です。

③ 飲み物を見直す
砂糖や人工甘味料が多く含まれた飲み物を日常的に飲んでいる場合は、お水やお茶に切り替えることも腸活のひとつです。
昨日の人工甘味料の話と合わせて考えてみてください。

④ 睡眠と運動を意識する
食事だけでなく、7時間前後の睡眠と毎日少しの運動を習慣にすること。
腸は生活全体の影響を受けています。

6. まとめ

腸内環境は、食事・睡眠・運動・ストレスといった日常の習慣すべてと深く関わっています。
「なんとなく体の調子が整わない」という感覚がある方は、腸の状態を見直すことが意外な突破口になることがあります。
特別なサプリや高価な食品でなくても、毎日の食卓にある味噌・納豆・野菜・きのこを意識するだけで腸内環境は変わっていきます。
昨日の人工甘味料の話も含めて、何を食べ何を飲んでいるかを少し意識するだけで、体の感覚は少しずつ変わってくるはずです。
まずは今日の食事から、ひとつだけ試してみてください。

橋本 将吉先生プロフィール

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内科医。登録者数85万人超えのYouTubeチャンネル『ドクターハッシー/内科医 橋本将吉』にて健康教育を発信している。
2011年に「医学教育という専門領域から、日本と世界の明るい未来を創造する」という理念のもと、株式会社リーフェホールディングス(旧株式会社リーフェ)を設立。医学生向けの個別指導塾『医学生道場』を運営するほか、2022年9月には健康や医学を医師から学べるサービス『ヘルスケアアカデミー』をリリースし、企業や学校等でのセミナーも展開している。
2023年11月には、現役医師の目線から日々を健康に暮らすためのアイテムを扱うライフスタイルブランド「ハシモトマサヨシ」を立ち上げ、乳酸菌飲料などの商品を展開している。
「櫻井・有吉THE夜会」「林修の今、知りたいでしょ!」「めざましどようび」など多数のテレビ番組に出演。著書に『薬のトリセツ』(自由国民社)、『「老いても元気な人」と「どんどん衰えていく人」ではなにが違うのか』(アスコム)などがある。

リーフェホールディングス:https://li-fe.co.jp/
医学生道場:https://igakuseidojo.com/
ヘルスケアアカデミー:https://healthcare-academy.co.jp/
ハシモトマサヨシ:https://hashimotomasayoshi.co.jp/

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