
YouTubeやメディアでも活躍する内科医・橋本将吉先生(ドクターハッシー)が、ヘルスリテラシーを高めるための実践的な 健康知識をお届けする連載。医師だからこそ伝えられる“正しい情報”を月替わりテーマで解説します。
連休明けの不調=5月病。原因はわかっても、「じゃあどう回復すればいいの?」と感じている人は多いはず。
実は疲労回復は“長く休むこと”よりも、“短時間でも質の高い休息”が鍵になります。
第8回は、通勤中・昼休み・寝る前など、日常のすきま時間でできる「短時間回復術」を解説します。
内科医の橋本将吉(ハシモトマサヨシ)です。
昨日の記事では、5月病の正体とその背景にある仕組みをお伝えしました。
「適応ストレスが蓄積して、連休で一気に表面化する」
—読んで、思い当たることがあった人もいるのではないでしょうか。
では、忙しい毎日の中でどうやって回復すればいいのか。
「まとまった休みがないと無理」と思っていませんか?
実は、疲労回復は時間の長さより「質とタイミング」が鍵です。
今日は、すきま時間や就寝前のわずかな時間でできる「短時間回復」の技術を、内科医の視点からお伝えします。
そもそも「疲れ」はなぜ抜けないのか
まず前提として、疲れが抜けない理由を整理しておきます。
新生活の疲れの多くは、単純な「睡眠不足」ではありません。
自律神経が交感神経優位の状態(緊張・活動モード)に固定されてしまい、身体が「休んでいいよ」というサインをうまく受け取れなくなっている状態です。
つまり、ただ横になっていても回復しにくい。
意識的に「副交感神経を優位にする時間」を作ることが必要なのです。

通勤・移動中(5〜15分)にできること
1. 「4-7-8呼吸法」で自律神経を整える
4秒かけて鼻から吸い、7秒止めて、8秒かけて口からゆっくり吐く。
これを3〜4回繰り返すだけです。
呼吸をコントロールすることで迷走神経が刺激され、副交感神経が優位になります。
電車の中でも、目を閉じてできます。

2. スマホを見ない時間をあえて作る
移動中にスマホを見続けると、脳は情報処理をし続けます。
視覚からの刺激が交感神経を刺激し続けるため、身体は休んでいても脳は緊張したままです。
移動時間の半分だけでも、スマホをしまって窓の外を眺めてみましょう。

昼休み(10〜20分)にできること
3. 食後の「プチ仮眠」
昼食後に10〜20分だけ目を閉じる「パワーナップ」は、午後のパフォーマンスを大きく改善することが複数の研究で示されています。
ポイントは30分を超えないこと。
深い睡眠に入ってしまうと、逆にだるさが残ります。
アラームをセットして、椅子に座ったまま目を閉じるだけでも効果があります。
4. 昼休みに「2分間の日光浴」
セロトニンの分泌を促すには、日光を浴びることが有効です。
昼休みに外に出て、空を見上げながら2〜3分歩くだけで、午後の気分と集中力が変わります。
曇りの日でも、室内よりはるかに光量があるので効果的です。

夜の回復ルーティン(寝る前30分)
5. 入浴は「就寝1時間前」までに済ませる
就寝1時間前までに38〜40℃のぬるめのお湯に15分浸かることで、深部体温がいったん上がり、その後下がる流れが睡眠への切り替えを助けてくれます。
昨日の記事でもお伝えしましたが、ジンジャー系の入浴剤は深部体温を上昇させるだけでなく、お風呂上がりの体温の持続にも効果的です。
しかし、熱いお湯は逆に交感神経を刺激してしまうので注意です。

6. 「3行日記」で脳のスイッチを切る
寝る前に、その日あったことを3行だけ書き出す。
良かったこと・気になったこと・明日やること、何でもOKです。
頭の中にある「未完了の情報」を外に出すことで、脳が「今日は終わり」と認識しやすくなります。
スマホのメモでも、紙のノートでも続けやすい方法で試してみてください。

7. 照明を「暖色・低め」に切り替える
就寝1時間前から、部屋の照明を暖色系の間接照明に切り替えましょう。
白く明るい光はメラトニン(睡眠ホルモン)の分泌を抑制します。
スマホも同様で、ナイトモードにするだけでなく、できれば画面自体を見ない時間を意識してください。
週末にやっておきたい「リセット習慣」
8. 土日の起床時間は平日と1時間以内に
「週末は寝だめ」が習慣になっていると、月曜日に社会的時差ぼけ(ソーシャル・ジェットラグ)が起きやすくなります。
平日と週末の起床時間の差を1時間以内に抑えるだけで、月曜の朝のしんどさがかなり変わります。
うまく寝付けない、寝ても疲れが取れないという方は枕が合っていないかもしれません。
自分に合った枕は回復にも大切なグッズです。

9. 20分の「何もしない散歩」
目的地を決めず、スマホもしまって近所をただ歩く。
景色を見て、風を感じるだけでいいんです。
自然環境への短時間の接触がコルチゾール(ストレスホルモン)を低下させることは研究でも示されています。
週に1〜2回取り入れてみてください。

回復を妨げる「やりがちなNG習慣」
せっかく回復しようとしても、NG習慣をしていると回復しきれないかもしれません。
ぜひこれからお伝えすることを気にかけて生活してみてください。
・疲れているのに深夜までスマホを見る
視覚からの強い刺激が交感神経を活性化し続け、副交感神経に切り替わらない。
寝る1時間前はスマホをしまって、照明を落とした部屋でリラックスする時間にあてましょう。
・休日に「完全に何もしない」を目指す
動かなさすぎると血流が滞り、かえって倦怠感が増すことがある。
軽い散歩やストレッチなど、負荷の低い活動を取り入れるのがおすすめです。
・カフェインで眠気を紛らわせ続ける
カフェインは神経を鎮静させるアデノシンという物質の働きを阻害することで、神経を興奮させて覚醒を促すため、飲みたい場合は寝る4〜6時間前までにしましょう。
・「頑張れば回復できる」と思い込む
疲労は意志力でごまかせても、自律神経の乱れは根性では整わない。
回復は「仕組みで作るもの」と割り切って、この記事で紹介したルーティンを淡々と続けてみてください。

おわりに
疲れを取るために、長い休みは必要ありません。
必要なのは、短くても「副交感神経が優位になる時間」を意識的に作ること。
今日紹介したどれかひとつだけでも、明日から試してみてください。
小さな習慣の積み重ねが、新生活の疲れに負けない身体と心をつくっていきます。

橋本 将吉先生プロフィール

内科医。登録者数85万人超えのYouTubeチャンネル『ドクターハッシー/内科医 橋本将吉』にて健康教育を発信している。
2011年に「医学教育という専門領域から、日本と世界の明るい未来を創造する」という理念のもと、株式会社リーフェホールディングス(旧株式会社リーフェ)を設立。医学生向けの個別指導塾『医学生道場』を運営するほか、2022年9月には健康や医学を医師から学べるサービス『ヘルスケアアカデミー』をリリースし、企業や学校等でのセミナーも展開している。
2023年11月には、現役医師の目線から日々を健康に暮らすためのアイテムを扱うライフスタイルブランド「ハシモトマサヨシ」を立ち上げ、乳酸菌飲料などの商品を展開している。
「櫻井・有吉THE夜会」「林修の今、知りたいでしょ!」「めざましどようび」など多数のテレビ番組に出演。著書に『薬のトリセツ』(自由国民社)、『「老いても元気な人」と「どんどん衰えていく人」ではなにが違うのか』(アスコム)などがある。
リーフェホールディングス:https://li-fe.co.jp/
医学生道場:https://igakuseidojo.com/
ヘルスケアアカデミー:https://healthcare-academy.co.jp/
ハシモトマサヨシ:https://hashimotomasayoshi.co.jp/
