天気が悪いと何だか体調が優れない、そんな経験はありませんか。
その症状は、もしかしたら低気圧不調かもしれません。
低気圧不調によって起こる症状は非常に様々で、頭痛、めまい、首こり・肩こり、腰痛、便秘、むくみ、関節痛、その他にも集中力の低下や古傷の痛みといった特徴があります。
低気圧に負けない体づくりの方法や症状が起きてしまった時の正しい対処法について、日本スポーツ協会公認スポーツドクターの順天堂大学医学部教授・小林弘幸先生に教えていただきました。
健康なカラダとは?
自律神経研究の第一人者として、トップアスリートや文化人へのコンディショニングパフォーマンス向上にも携わっている小林先生に、健康なカラダの定義について伺いました。
「37兆個の細胞のひとつひとつに、質の良い血液が流れていること」と小林先生は言います。
全身の血流をコントロールしている「自律神経」と質の良い血液を作る「腸」のコンディションを整えることが基本になります。
低気圧不調の一番の原因は?
低気圧不調を引き起こす一番の原因は、自律神経の乱れだと言われています。
自律神経は「変化」がとても苦手。
不規則な生活習慣、環境の変化によるストレス、季節の変わり目など小さな出来事でも自律神経には大きな負荷がかかっています。
特に女性は、月経による周期的なホルモンバランスの変化により自律神経が乱れやすくなってしまいます。
男性よりも女性の方が低気圧不調に悩む人が多いというデータがありますが、女性は普段から化粧をしたり鏡で自分の姿を確認したりする機会も多いので、自分の小さな体の変化に気づきやすいと小林先生は話します。
低気圧に振り回されないための対策は?
食事・睡眠・運動を意識し、腸内環境を整え、体のベースを上げる「カラダづくり」が大事だと小林先生は言います。
生活習慣への意識を高く持つことがキーになりそうです。
体のベースを上げるために、生活習慣を見直してみませんか?
見直しのポイントを小林先生にアドバイスいただきました。
朝食をしっかり摂ること
「朝は時間がない」「ぎりぎりまで寝ていたい」と言って朝食を抜いていませんか?
朝食をとることで体内時計のスイッチが入ります。
起床後一時間以内に朝食を摂るように、まずは起床時間を見直してみましょう。
朝食には納豆やチーズ、漬物など乳酸菌を含む発酵食品を積極的に摂り入れましょう。
特に腸内環境を整えるのに有効とされるのが、ビフィズス菌です。
腸内のビフィズス菌は加齢とともに減少してしまうので、菌を摂ることも大事。
ビフィズス菌が摂れるのは基本的にはヨーグルト。
無糖のヨーグルトにはちみつを入れたり、りんご、バナナ、キウイや季節の果物と一緒に、取り入れてみませんか?
ヨーグルトもビフィズス菌が入っているものと入っていないものがあるので、ビフィズス菌を含むヨーグルトを常備しておくと心強いですね。
とはいえ、直ぐに色んなことを取り入れるのは難しいので、まずは朝食を必ずとるということから始めてみてください。
小林先生の奥様で医師の小林暁子先生が、ヨーグルトレシピを動画で紹介されています。
参考にしてみてはいかがでしょう。
夕食は寝る3時間前までが理想、難しければ「間食」を
小林先生に夕食について伺うと、「夕食はできれば寝る三時間前には終えること」との回答。
それは、消化不良による睡眠の質の低下を防ぐためです。
しかし、私もそうですが、アルバイトやサークル活動など、どうしても夕食が遅くなってしまうという人も少なくないと思います。
そうした人のために、小林先生からいただいたアドバイスは、「間食」。
間食にナッツやハイカカオチョコレートなど体に良いものを上手く取り入れ、夜は消化のいいものだけを摂取します。
食べ過ぎを防ぐことも忘れずに。
腹7分目を心掛けましょう。
睡眠の質を上げる
朝起きれない、目覚めがすっきりしないという人も多いのでは?
寝る直前までスマホを見ていませんか?
睡眠の質を低下させている一番の原因は、寝る前のスマートフォン操作だと小林先生に指摘されました。
最低でも寝る一時間前には、スマホ操作を控えるようにしましょう。
それだけで睡眠の質は大きく向上し、寝起きがスッキリになるはず。
そして運動
誰でもすぐに取り入れることができるのが、運動です。
激しい運動をする必要はありません。
例えば、駅で使っているエスカレーターやエレベーターを階段に変えてみたり、最寄りの一つ前の駅で下車して一駅分歩いてみたりなど、日常生活のちょっとしたところで体を動かすことを意識してみることが重要です。
天候に合わせて行動する
曇りや雨の日は、なかなか「やる気」が起きない、動きたくないと感じることありませんか。
自律神経にできる限り負荷をかけないようにするために、その日の天候に合わせた行動をとることも効果的です。
雨の日こそ、あえて動くことで交感神経のスイッチが入り調子が上がっていくと小林先生。
雨の日は普段より30分早く起床してみる。
朝食を作ったり、メイクや髪形のセットをしたりなど、朝から活発的な行動を取ることで交感神経をしっかりと働かせることができるようになります。
日中は大股でリズミカルに早歩き、電車の中では立ったまま、スマホは見過ぎないなど、意識を変えるだけで、できることはいろいろありそうです。
また、急な天候の変化に対応できるように着替えを用意しておくなど、ちょっとしたことですが、様々な対策を取ることができます。
症状が出てしまった時の対応策は?頭痛緩和にやってみよう
低気圧不調を起こさないための準備を心掛けていても、症状が出てしまうことはあります。
特に多くの人が苦しめられているのが、頭痛です。
頭痛が起きると直ぐに薬を飲むという方もいますが、その前に簡単にできる頭痛緩和の方法を小林先生に教えていただきました。
そもそも低気圧不調による頭痛は頭の血管の収縮によるものなので、血管を開き、血流をよくすることが必要です。
最も効果的なのは、「呼吸法」。
4秒吸って、8秒かけてゆっくり吐く。
この呼吸法をしながら階段を上り、コップ一杯の水を一気飲み。
これで大概は頭痛が緩和されるそうです。
頭痛が起きたら水分補給を忘れずに
頭痛は脱水症状が引き起こすこともあるため、積極的に水分を摂取してください。
これでも症状が改善しない場合は、頭痛薬の活用も手段のひとつです。
ただし正しい使用法を守って服薬してください。
低気圧との戦い方をご紹介してきましたが、自律神経が乱れる一番の要因は心にストレスがかかることです。
小林先生は、色々なことを意識し過ぎて、それがストレスになってしまっては逆効果だと注意を促します。
自分ができそうなことから少しずつ、生活に取り入れてみてください。
365日どんな天気にも振り回されないカラダづくりをみんなで目指しましょう。
<小林弘幸先生プロフィール>
順天堂大学医学部教授。1960年埼玉県生まれ。
92年、順天堂大学大学院医学研究科(小児外 科)博士課程を修了。
ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属医学研究センター、アイルランド国立病院外科勤務を経て順天堂大学医学部小児外科講師・准教授を歴任、 現在に至る。各種研究の中で自律神経バランスの重要性に着目し、日本初の便秘外来を開設した腸のスペシャリスト。多くのトップアスリートのコンディショニング、パフォーマンス向上指導 にも研究成果が活用されている。自律神経研究の第一人者として著書多数。そのほとんどがベ ストセラーを記録し、著書累計出版部数1200万部を超える。
【公式】ドクター小林の健康塾 https://www.youtube.com/channel/UCqLclx8mBLWfN8wbrTAhkSA
取材 RanRun学生スタッフ 三浦 悠華