• 土. 6月 29th, 2024

ガールスカウト日本連盟 「女の子だから」という言葉が与える影響『ジェンダーに関する女子中高生調査報告書2023』

中学生と高校生年代の女子の3割が「学校の先生は女子と男子に平等に接していない」と感じている

公益社団法人ガールスカウト日本連盟(会長:間奈々恵、以下「ガールスカウト日本連盟」)が、『ジェンダーに関する女子中高生調査報告書2023』を公開。調査の結果、中学生でも教師からの男子と女子への接し方が平等ではないと3割以上が感じていることや、2019年度の調査と比較して高校生年代の感じている状況が改善されていないことがわかりました。

少女だけでなく、性別を問わず誰もが安心して生きられる社会になるために

今回の調査では、これまでの高校生年代に加えて、中学生も調査の対象としました。
中学生の特色としては設問に対する回答で「わからない」「気にしたことがない」「考えたことがない」という少女が多いことがわかりました。
中学生はまだジェンダーに関する不平等に触れる機会が少ないことが背景にあるのではないかと考えられます。
また今回、少女たちの状況の変化を知るために、過去に実施した高校生年代への調査と同じ質問をいくつか含めました。
高校生年代においても、過去と比較して大きな改善は見られず、横ばいの状態であることがわかりました。
高校生年代になると、家族(特に母親)や学校でのジェンダーバイアスやジェンダーロールに触れることが多くなることで、ジェンダーに関する意識に変化が出始めると考えられます。
家族や教師のなかに、アンコンシャスバイアスやジェンダーロールが以前と変わらず存在しており、その言葉や態度が少女たちに影響を与えています。
それにより、少女たちは無意識に自分の限界を決めてしまう可能性があります。
一人ひとりの可能性を阻まないためには、誰もが自分の発言を意識することが大切です。
少女たちの可能性を伸ばすことを妨げる問題に対して声をあげ、社会に変化をもたらすことができるように、大人も一緒に学び、行動していく必要があります。
このような取り組みは、少女だけのためでなく性別を問わず誰にとっても安心して生きやすく、思い描いた未来を実現することのできる社会の実現につながると考えています。

■調査結果サマリー

  • 学校の先生は、女子と男子に平等に接していないと感じているのは、中学生31%、高校生年代32% 高校生年代は2020年度より9ポイント増加
  • 「女の子だから何かをしなくていい」と言われたことがあるのは、中学生40%、高校生年代52% 高校生年代は2019年度より5ポイント増加
  • 「女の子だから」と何かをやらされたことがあるのは中学生20%、高校生年代30% 高校生年代は2020年度より2倍に増加
  • 普段の生活の場で「性的な嫌がらせや性差別」を見ることがある中学生は45%、高校生年代61% 多いのはメディア、公共の場所
  • 自分の生理や体調について誰とも話さない/話せないと回答したのは中学生9%、高校生年代10%
  • 容姿へのプレッシャーがあると感じている中学生は59%、高校生年代は69%。イギリスの少女は50%

■調査概要
調査対象:全国の中学生・高校生年代の女子
調査期間:2023年11月14日~12月17日
調査方法:インターネット回答 全36問
回答者数:1,563人(中学生764人、高校生年代799人)
助成:マイクロン財団 ※本報告書はマイクロン財団の助成を受けて作成しました。

調査結果

■学校の先生は、女子と男子に平等に接していないと感じているのは、中学生31%、高校生年代32%
※回答からは「属性:女子校」の回答を除外しています。

2020年度の高校生年代への調査では、同じ質問の「そう思わない」の回答は23%で、そのときより9ポイント増加しました。先生の接し方に対して、ジェンダー平等の視点で見ることのできる高校生年代が増えていることが推察され、その背景には、学習の中でジェンダー平等や包括的性教育等の機会が増えていることがあげられると考えます。

■「女の子だから何かをしなくていい」と言われたことがあるのは、中学生40%、高校生年代52% 

中学生も高校生年代も、学校の先生に言われたことがある、という回答が一番多い結果となりました。2019年度の調査では「ある」と答えた高校生年代が47%で、5ポイント増えたことが分かりました。自由回答では「重たいものは男の子が持つ。女の子は持たなくて良い」という回答がほとんどでした。

■「女の子だから」と何かをやらされたことがあるのは中学生20%、高校生年代30% 

何かをやらされたと感じる高校生年代が2020年度の調査では高校生年代15%だったのが、倍に増えています。中学生・高校生年代ともに、母親や学校の先生からやらされたと思うことが多く、高校生年代では、父親・祖母からやらされたと思うことが多くなっています。

■普段の生活の場で「性的な嫌がらせや性差別」を見ることがある中学生は45%、高校生年代61% 

過去の高校生年代の数字を比較すると、「ある」と回答した人は、2019年高校生年代が62%、2023年高校生年代が61%で、あまり変化は見られませんでした。回答で最も多かったのは中高生共にメディアでした。続いて多いのは学校と公共の場所でした。

■自分の生理や体調について誰とも話さない/話せないと回答したのは中学生9%、高校生年代10%

回答の順位は、2021年に女子高校生年代を対象に調査したときの結果と変化はありませんでしたが、女子中高生の約1割が、誰にも相談できないと思っていることがわかりました。

■容姿へのプレッシャーがあると感じている中学生は59%、高校生年代は69%。イギリスの少女は50%

イギリスのガールスカウトは15年前から、毎年「女子の意識調査」を実施しています。今回、2022年のイギリス連盟調査報告よりいくつかの項目について比較しました。
調査では、自分の容姿に自信を持てていない日本の女子中高生は全体の半数以上であるという結果が出ており、イギリスは、日本の女子中高生よりも少ない結果でしたが、それでも半数はプレッシャーを感じています。
容姿のプレッシャーを感じる人が多いのは、私たちを取り巻く社会の中で、偏った容姿のイメージを発信しているメディアの影響が考えられます。

■調査背景

2022年3月8日国際女性デーに、内閣総理大臣は「我が国の現状は、ジェンダーギャップ指数が世界第120位であることに表れているように、諸外国に比べて大変立ち遅れていると言わざるを得ません。こうした現状の背景には、男女間の賃金格差の存在や固定的な性別役割意識など、構造的な問題があると考えられます」とメッセージ(*1)を出しました。

近年、女性が働くことは当たり前になっており、新生活様式でリモートワークの導入が増えるなど働き方も多様になっています。しかし、いまだに男女の賃金格差があるのが現状です。令和4年賃金構造基本統計調査(*2)の結果によると、一般労働者の男性を100としたときに、女性の賃金は75.7でした。コロナ禍においては、雇用打ち切りや無償ケア労働の増加により、働きたくても働けない状況に陥る女性もいました。(*3)

2024年6月12日に世界経済フォーラムよりジェンダーギャップ指数(GGI)2024年が発表されましたが、「政治」と「経済」の値が低く、世界第118位にとどまっています。

雇用の面ばかりではなく、女性へのDVの増加など、少女たちも少なからず影響を受けています。NHKが2022年におこなった調査(*4)では多くの中高生がストレスや将来への不安を感じていることがわかりました。コロナ禍に少女たちは、どんな期待や不安を抱いていたのでしょうか。明るい未来は描けていたのでしょうか。

中高生年代のジェンダーへの意識や現状がわかるデータとして収集することで、日本におけるジェンダーギャップの現状とその要因をとらえ、適切な対策に役立てるために、ガールスカウト日本連盟は2019年からさまざま年代を対象に、ジェンダーの意識に関する調査を継続しておこなっています。

■調査の目的

今回の調査は、過去に高校生年代を対象とした調査の結果と比較し、女子中高生が経験する「ジェンダーに基づく差別や暴力」の意識から少女たちが安心して過ごせる社会になっているのか、現状の把握と変化を検証しようと考えました。併せてガールガイド・イギリス連盟がおこなった同様の調査の結果を用い、海外と比較することで日本の女子中高生の現状を客観的に把握することも試みました。
またコロナ禍に関する調査項目を加え、社会の変化やパンデミックの不安が少女たちにどのような影響を及ぼしたのか海外比較を交えて検証しました。

■調査報告書のダウンロード
『ジェンダーに関する女子中高生調査報告書2023』
価格:1,100円(税込)
お申し込み(ガールスカウト日本連盟ウェブサイト)
https://forms.gle/bgLzfBLrfvyypXJT8