• 月. 4月 29th, 2024

同性の応援が一番嬉しい ボートレース界のヒロイン大山千広選手

「女子でも男子に勝てる。これが競技の一番の魅力です」
そう話すのは、ボートレース界のヒロイン大山千広(おおやま・ちひろ)選手だ。
2019年には、23歳という若さで賞金女王になり、その年の優秀女子選手にも選ばれた。
可愛らしいルックスからは想像できない、粘り強く迫力のある走りをする。
ボートレースは学生にはあまり縁のない競技ではあるが、プロとして競技に取り組む選手の姿は、スポーツ女子にとっても参考になる。
ライフスタイルや競技の魅力など、大山選手にオンラインによるインタビューを行った。

競技選択のきっかけは母の姿
母の姿がカッコよくて憧れた。
大山選手のお母さんは、元ボートレーサーの大山博美さんだ。
小さい頃から一番身近にあったのがボートレースだったと大山選手は話す。
「他のお母さんたちと違う仕事をしている母の姿がカッコよくて憧れるようになり、中学高校くらいから自分も選手になりたいと思うようになりました」
同じ仕事を選んだ娘に、母からのアドバイスはあるのだろうか。
「あまり言わないようにしてくれている」と大山選手。
しかしメンタル面について、「本当にタフでないとやっていくことができない仕事だから、一つ一つに打ちのめされたり、悩み過ぎたりせず、心を強く持っていなさい」とアドバイスされた。
大山選手は高校を卒業してすぐ、ボートレーサー養成所に入った。
その3年後にはボートレース福岡のG3オールレディースで初優勝している。

競技者からみたボートレースの魅力
ボートレースは男女が同じフィールドで戦うスピード競技だ。
不安や恐怖心はないのだろうか。
「恐怖心はないですね。ただ、動体視力や反射神経、筋力などの力の差を目に見えて感じることが多いです」と言い、こう続けた。
「でもそれは(力の差は)仕方のないこと。そこを努力や男子より少しでも多く練習する、仕事(ボートレース)に対して考える時間を増やして埋めるしかない」。

ボートレースは、決められた時間内にスタートラインを通過する「フライングスタート方式」を採用している。
会場の大時計が0を示してからの1秒間で通過しなくてはならず、限りなく0に近い瞬間を目指してスタートする。
「とても緊張します。前後の動きが苦手なので、人より本数を多くこなして補うようにしています」
動きながら止まっているものを見るので動体視力がとても重要だ。
また、スタート練習の記憶を思い出しながらスタートするので記憶力も必要なのだと教えてくれた。

ボートレーサーのライフスタイル
ボートレースは体重が軽いほうが有利と言われているが、食事制限などはしているのだろうか。
「精神的に疲れてしまうので、ずっと減量はできないです。食べ過ぎた日は、次の日は軽食にするとかして、3食しっかり食べるようにしています。食べる量を減らすのではなく、食べる順番や内容に気を付けています」と返ってきた。
具体的には「炭水化物はあまり摂らないようにしています。また、(自分は)筋肉がつきにくいので、野菜よりお肉や豆腐などのたんぱく質から食べるようにしています。小さなことから気を付けるように、日常的にやっています」と教えてくれた。
トレーニングのメニューについては、体幹トレーニングや瞬発系の筋力のトレーニングをしているそうだ。
ランニングをしたり、ジムに行ったりして、同じ姿勢をキープしたりバランス感覚を鍛えるトレーニングをしている。

試合前のストレス解消法
「ストレスが溜まったことはないですね」と大山選手。
オフの過ごし方を大切にしていて、ストレスを溜めないよう、試合に行くまでにできるだけ好きなものを食べるようにしているのだとか。
ボートレーサーは、仕事(試合)の前日に現場に入るので、その一日で調整すると教えてくれた。

競技で磨いた人間力
もともとあまり落ち込んだり悩んだりしないタイプと自己分析する大山選手。
デビューから2,3年はいい成績で走れていたそうだが、成績が落ちてくることがあり、心がとても苦しくなる経験をした。
最近になり、それも良い勉強だと思えるようになったので、昔より心がタフになったと話す。
「厳しいことを言われても、心が強くなりました」

ボートレーサーとしての今後の目標
「せっかく選手になったので、最高峰のSG(スペシャルグレードレース)で優勝したい」と即答。
女性ボートレーサーのSG優勝は一度もない。
「一番上を目指したい」と語る大山選手の目がとても印象に残った。

スポーツ女子へのメッセージ
私自身、女性に応援されるのが一番うれしいです。
スポーツをされている女性は同性からすると、勇気をもらえたり「私もこんな風に頑張りたい」と思われる対象だと思います。
皆さんも自信を持って、そこを自分のモチベーションにつなげるといいと思います。

取材 昭和女子大学 2年 小林七葉

(2021年9月掲載記事リライト)