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地道なトレーニングが大事 元ショートトラック日本代表 桜井美馬

Byranchan

3月 11, 2016

ロールモデルインタビュー第3回は、世界選手権大会8回、バンクーバー、ソチと2度の冬季オリンピックに出場したスケート・ショートトラック元日本代表の桜井美馬さん。引退した現在は東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社で勤務している。選手時代のこと、現在の仕事のこと、学生へのメッセージなどを伺った。

<スケートとの出会い>
桜井さんがスケートを始めたのは6歳の時。スケートの他にも、水泳、空手、そろばん、ピアノ、学習塾などお稽古事で忙しい子供時代だったそうだ。
小学生時代はとにかく滑ることが楽しかった。
中学生になると、練習が勝負に活きる面白さを知り、オリンピックを目指すようになったという。中学2年生でジュニア日本代表選手に初選出された。
大阪出身の桜井さんだが、中学を卒業後、良きコーチを求め、東京の高校に進学し1人暮らしをスタートした。
朝練の後、学校に行き、帰宅後また練習の毎日。
夏場は体力作りのため主に陸上でのトレーニング、冬場は氷上での滑走練習が増える。
シーズンにより練習メニューや強化方法も変わる。
週1回のお休みの日曜日は、友達と食事に行ったり、映画を観に行ったりしていたそうだ。

<競技の魅力>
ショートトラックの魅力について尋ねると、「スピード感とレース展開のかけひき」と答えが返ってきた。
滑走スピードは時速50km前後。
その中で相手とのかけひきも加わってくるため、滑っている間は常に頭を働かせている。
滑る前は、冷静な判断ができるように自分を客観視するよう心がけていたと語る桜井さん。
相手のタイプによって作戦を立て、自分の位置取りを考えながら滑っていた。
「アクシデントも起きるし、目が離せないスリルある競技です」と教えてくれた。

<辛かったこと>
大学生時代、強くなりたいという思いが先行し、オーバートレーニングを起こした。
心と身体の歯車が合わなくなり、身体が言うことをきかなくなった。
全く練習にならなかったという。スポーツカウンセラーに相談し、休みをとって心と身体を一度リセットすることを勧められた。
そこで、心と身体のバランスを考えながら練習することを覚えた。

<日本代表を経験して>
スケートを通して、色々な国に行く機会があり、世界中の選手と知り合うことができた。
オリンピックに一緒に行った日本代表のメンバーとは、共同生活の時間が長かったため、家族のような信頼関係を築くことができたという。
大会、合宿、海外遠征の生活で、1年の内1/3程度しか自宅で過ごすことはなく、現地でもプライベートの時間はほとんどなかったが、貴重な経験ができたと振り返る。
大学生時代、遊びに行くこともアルバイトをする時間もなく、普通の学生生活を過ごしていないと語る桜井さん。
大学の授業は、スポーツ科学部という事もあり、スポーツ文化や栄養学など興味深い授業が多かった。
しかし、学業とスケートとの両立は大変だった。
レポートや試験勉強は、友達の助けもあり、乗り切れたそうだ。
就職活動は、JOC(日本オリンピック委員会)が行うトップアスリートの就職支援制度「アスナビ」を通じて、東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社と出会った。
ソチオリンピックまでは全力でスケートに取り組む環境を作りたかった桜井さんに対し、会社は練習に集中できる時間を確保してくれた。

<料理が好き>
高校生時代から自炊をしていたという桜井さん。氷上練習の時間帯は、スケート場の一般営業が終わった夜の時間帯が多かった為、学校から帰ると夕食作りをしてから、練習に行ったのだとか。「練習後はすぐにご飯を食べたいですから」とニッコリ。
食事で気を付けていたことは、鉄分を摂ること。野菜もたんぱく質もバランスよく、色々な栄養素をまんべんなく食べるようにしていたそうだ。
夏場は体力をつけるため、しっかりと食べ、冬の大会シーズンは身体を絞るために食べる量や質を考えていた。
引退した現在は、お弁当作りが趣味になっているという。休日にメニューを考え、おかず作りをする。1週間分冷凍して、平日はお弁当を会社に持参しているそうだ。

<怪我について>
高校生時代、右足首の骨折をしたことがある。筋肉が落ちないよう、右足首以外のトレーニング、右足の太ももや、左足のトレーニングは続けたという。
慢性的な腰痛も抱えていたが、現役時代はうまく付き合いながら選手生活を送っていた。
大学時代のゼミの先生が、日本代表の水泳のチームドクターという事もあり、ゼミの授業の前後にもよく相談をしていたそうだ。

<働くということ>
まだ、社員として本格的に仕事を始めて1年に満たない。パソコンの使い方や言葉遣いなどわからないことも多かったそうだ。証券会社の新入社員は、全員、入社前に証券外務員の資格を取っているため、桜井さんも勉強して外務員の資格を取得した。新人研修にも参加し、金融知識を深めているところだ。
現在は、人事企画部に配属され、新卒採用を担当している。採用のイベントで会社説明をしたり、学生に配布する会社パンフレットの取材や校正をしたり、日々新しいことに挑戦している。
「オフィスワークの経験が初めてである事を本人は気にしていますが、今までの経験を活かすことが大事。一緒に働いていて、桜井さんの向上心にはいつも刺激を受けています」と先輩がコメントしてくれた。
桜井さんの今後の目標を尋ねると、現在、模索中とのこと。ずっとスケートをしてきたので、スケートの後輩に協力もしていきたい。スケートに専念する環境を作ってくれた会社に対し、貢献していきたいという想いもある。将来的には、仕事と家庭を両立しながら頑張っていきたいそうだ。

<スポーツ女子へのメッセージ>
自分自身、コツコツと練習し、小さなことを積み重ねてきたことが勝因になった。地道なトレーニングが大切。目標に向けて今やっていることを活かせるように、自信を持って頑張ってほしい。

<モチベーションを上げる曲>
リラックスする曲を聴くことが多く、キロロの曲などを聴いていたそうだ。

引退試合時撮影。(左から)母、兄の雄馬さん(現役選手)と

<プロフィール>
氏名     桜井美馬
生年月日   1989年6月8日
出身地    大阪府・堺市
出身大学   早稲田大学・スポーツ科学部
勤務先    東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社
2013年4月 入社
2015年2月 現役引退
2015年4月 新入社員研修に参加
    6月~人事企画部にて新卒採用を担当
・主な戦績
2009年・2010年・2012年 全日本選手権大会 総合優勝3冠達成
2007-2014年       世界選手権大会、連続出場
2010年 バンクーバーオリンピック冬季競技大会
(500m、1000m、1500m出場、3000mリレー 7位入賞)
2010年 W杯長春大会、W杯モントリオール大会 1500m 3位
2011年 アジア冬季競技大会 1500m 3位
2013年 世界選手権大会 3000mリレー 3位
2014年 ソチオリンピック冬季競技大会

    (500m、1500m出場、3000mリレー5位入賞)

(2016年3月掲載記事リライト)