
YouTubeやメディアでも活躍する内科医・橋本将吉先生(ドクターハッシー)が、ヘルスリテラシーを高めるための実践的な 健康知識をお届けする連載。医師だからこそ伝えられる“正しい情報”を月替わりテーマで解説します。
「日焼けしたくない」という理由で日傘やUVケアをしている方は多いと思います。
でも、紫外線が肌に与えるダメージの「本当のメカニズム」を知っていますか?
第11回は、紫外線が引き起こす老化とダメージの医学的な仕組みを丁寧に解説します。
正しく知ることが、最高の「先取り美容」になります。

内科医の橋本将吉(ハシモトマサヨシ)です。
夏が近づくと、「日焼け止めを塗ろう」「日傘を持とう」という意識が高まる方も多いと思います。
でも、なぜ紫外線が肌に悪いのかを、医学的に説明できる方は意外と少ないのではないでしょうか。
「焼けると黒くなるから」だけではない、紫外線の怖さを今回はしっかりお伝えします。
紫外線とは何か?UV-A・UV-B・UV-Cの違い
太陽光に含まれる紫外線(UV:Ultraviolet)は、波長の長さによって3種類に分けられます。
①UV-A(紫外線A波):長波長・真皮まで届く
波長が長く(320〜400nm)、雲や窓ガラスも透過して肌の奥深く(真皮層)まで到達します。
日常生活で最も多く受け続けている紫外線です。
曇りの日でも、室内にいてもUV-Aの影響は受けています。
シワ・たるみ・深いシミの主な原因となります。
②UV-B(紫外線B波):中波長・表皮に作用する
波長が中程度(280〜320nm)で、主に肌の表皮に作用します。
日焼けによる赤み・炎症・水ぶくれの直接の原因となります。
UV-Aより強いエネルギーを持ち、DNAへの損傷も起こりやすい波長です。
③UV-C(紫外線C波):短波長・オゾン層が遮断
最もエネルギーが強い波長ですが、地表に届く前にオゾン層によってほぼ吸収されます。
日常生活では通常問題にはなりませんが、オゾン層破壊が進んだ場合のリスクとして研究されています。

POINT!
日焼け止めのSPF値はUV-B対策の指標、PA値はUV-A対策の指標です。
両方の数値が高いものを選ぶことが大切です。
紫外線が肌に与える4つのダメージメカニズム
①DNAへの直接損傷
紫外線(特にUV-B)は、皮膚の細胞核にあるDNAに直接ダメージを与えます。
正常な細胞はDNA修復機能を持っていますが、紫外線を浴び続けると修復が追いつかなくなり、細胞の変異・皮膚がんのリスクにつながる可能性があります。
これが、紫外線対策が単なる「美容」だけではなく、医学的な健康管理でもある理由です。
② 活性酸素(フリーラジカル)の発生
紫外線を受けると、皮膚の細胞内で活性酸素(フリーラジカル)が大量に発生します。
活性酸素は細胞膜・タンパク質・DNAを攻撃し、細胞の機能を低下させます。
これが「光老化」と呼ばれる、紫外線によって加速する老化現象の正体です。
③ コラーゲン・エラスチンの分解
真皮層にあるコラーゲンとエラスチンは、肌のハリと弾力を支える重要なタンパク質です。
UV-Aは真皮まで届き、コラーゲンを分解する酵素(マトリクスメタロプロテアーゼ)の働きを活性化させます。
その結果、コラーゲンが破壊され、シワ・たるみ・ハリのなさとして現れます。
これが「UV-Aは老化紫外線」と呼ばれる理由です。
④ メラニン過剰生成によるシミ・色素沈着
紫外線を受けると、肌はダメージから身を守るためにメラニン色素を生成します。
これが「日焼け」の仕組みです。
問題は、紫外線を繰り返し浴び続けるとメラニンが過剰に蓄積し、シミや色素沈着として残ってしまうことです。
特にUV-Bによって引き起こされた炎症後には、メラニンが増産されやすくなります。
「光老化」とは?時間をかけて蓄積するダメージ
紫外線によるダメージの恐ろしいところは、すぐには見えないことです。
「光老化(Photoaging)」とは、長年にわたって紫外線を浴び続けることで引き起こされる皮膚の老化現象です。
通常の自然な加齢による老化よりも速いスピードで、深いシワ・たるみ・シミ・毛細血管拡張などが現れます。
研究によれば、顔のシワや色ムラなどの老化サインの80%以上が、紫外線による光老化によるものとされています。年齢を重ねてから「若いころからちゃんとケアしておけばよかった」と後悔する前に、今から正しい対策を取ることが何より重要です。

⚠️ 光老化の特徴
自然な加齢によるシワは細かく均一ですが、光老化によるシワは深く不規則で、より目立ちやすい傾向があります。また、光老化は日光をよく受ける部位(顔・首・手の甲・腕)に集中して現れます。
紫外線と皮膚がんの関係
美容面だけでなく、医学的な観点から最も重要なのが皮膚がんリスクです。
日本では欧米に比べると皮膚がんの発症率は低いとされていますが、紫外線によるDNA損傷が長年蓄積することで、基底細胞がん・有棘細胞がん・悪性黒色腫(メラノーマ)のリスクが高まることが知られています。
特に子どものころに強い日焼けを繰り返すことが、将来の皮膚がんリスクを高めるとする研究データも存在します。紫外線対策は、美容のためだけでなく、長期的な皮膚の健康を守るための医療行為として考えることが大切です。
「曇りだから大丈夫」は危険な誤解
よくある誤解の一つが、「曇りの日は紫外線が少ない」というものです。
実際には、曇りの日でも晴れた日の50〜80%程度の紫外線量が地表に届いています。
また、薄曇りの日は雲が太陽光を散乱させるため、かえって紫外線が広がりやすくなることもあります。
さらに、室内にいても窓ガラス越しにUV-Aは届きます。
デスクワーク中に窓際に座っている方も、気づかないうちに継続的なUV-Aダメージを受けている可能性があります。

POINT!
紫外線対策は「晴れた日・屋外にいるとき」だけのものではありません。
年間を通じた習慣として取り入れることが、光老化を防ぐ最大の近道です。
おわりに
紫外線は、DNAへの直接損傷・活性酸素の発生・コラーゲンの分解・メラニンの過剰生成という4つのメカニズムで肌にダメージを与えます。
そしてそのダメージは、数十年かけてシワ・シミ・たるみ、そして皮膚がんリスクとして現れてきます。
「まだ若いから大丈夫」ではなく、ダメージは今この瞬間から静かに蓄積されています。
紫外線の仕組みを正しく知ることが、最もコスパの高い「先取り美容」です。
次回第12回では、「では実際にどんなスキンケアをすれば肌を守れるのか?」という具体的な実践編をお届けします。
橋本 将吉先生プロフィール

内科医。『西新宿セルフライフ内科クリニック』院長。
登録者数86万人超えのYouTubeチャンネル『ドクターハッシー/内科医 橋本将吉』にて 健康教育を発信している。2011年に「医学教育という専門領域から、日本と世界の明るい未来を創造する」という理念のもと、株式会社リーフェホールディングス(旧株式会社リーフェ)を設立。医学生向けの個別指導塾『医学生道場』を運営するほか、2022年9月には健康や医学を医師から学べるサービス『リーフェアカデミー(旧:ヘルスケアアカデミー)』をリリースし、企業や学校等でのセミナーも展開している。
2023年11月には、現役医師の目線から日々を健康に暮らすためのアイテムを扱うライフスタイルブランド「ハシモトマサヨシ」を立ち上げ、乳酸菌飲料「乳酸菌V28」、口腔ケアタブレット「KissMyMint」などの商品を展開している。
「櫻井・有吉THE夜会」「林修の今、知りたいでしょ!」「めざましどようび」など多数のテレビ番組に出演。著書に『薬のトリセツ』(自由国民社)、『「老いても元気な人」と「どんどん衰えていく人」ではなにが違うのか』(アスコム)などがある。
リーフェホールディングス:https://li-fe.co.jp/
医学生道場:https://igakuseidojo.com/
リーフェアカデミー:https://healthcare-academy.co.jp/
ハシモトマサヨシ:https://hashimotomasayoshi.co.jp/
