• 火. 10月 6th, 2026

【ドクターハッシー/内科医 橋本将吉の健康コンパス】第18回 医師が警告。食べない習慣がメンタルヘルスを破壊する理由

ドクターハッシーの画像

YouTubeやメディアでも活躍する内科医・橋本将吉先生(ドクターハッシー)が、ヘルスリテラシーを高めるための実践的な 健康知識をお届けする連載。
医師だからこそ伝えられる“正しい情報”を月替わりテーマで解説します。

「食べる量を減らしたら、なんだか気分が落ち込むようになった」「ダイエット中なのに、なぜか不安やイライラが強くなった気がする」食事の量を減らすことと、心の不調の間に関係があるとしたら、どう思いますか。
第18回は、前回のファスティングに続き、「食べない習慣」が脳とメンタルに与える影響を、医師の視点からお伝えします。

内科医の橋本将吉(ハシモトマサヨシ)です。
「食べることを我慢するのが美徳」という価値観は、ダイエットや健康意識の高い方の間で根強くあります。
しかし、食べないことが心の健康にどれほど深刻な影響を与えるか、正確に知っている方は少ないのではないでしょうか。
今回は、脳と食事の関係を軸に、「食べない習慣」の本当のリスクをお伝えします。

【前提を知る】脳は、身体の中で最も「食事に敏感な臓器」

まず前提として知っておいてほしいのは、脳は体重のわずか2%程度しかないにもかかわらず、身体全体のエネルギー消費量の約20%を使うという事実です。
脳は非常に燃費の悪いエンジンであり、常に大量のエネルギーを必要としています。

食事を減らすと、このエネルギーの供給が不安定になります。
すると脳は真っ先にその影響を受け、思考力の低下・感情の不安定・判断力の低下として現れます。
「ダイエット中に頭が働かない」「なんとなく気分が沈む」という経験をしたことがある方は、まさにこの状態を体験していたと考えられます。

「食べない」と、心のバランスを保つ物質が不足する

脳内では「神経伝達物質」と呼ばれる化学物質が、感情・意欲・睡眠・不安感などを調整しています。
代表的なものが「セロトニン(幸福ホルモン)」「ドーパミン(やる気ホルモン)」「ノルアドレナリン(集中ホルモン)」です。
これらの神経伝達物質は、食事から摂るアミノ酸(タンパク質の構成要素)をもとに作られます。
特にセロトニンの原料となるトリプトファンというアミノ酸は、肉・魚・卵・大豆などから摂取されます。
食事量が減ると、これらの材料が不足し、神経伝達物質の産生が落ちます。

💡 POINT:セロトニンが不足すると、気分の落ち込み・不安感の増大・睡眠の乱れが起きやすくなります。
食べないことが直接「気分の落ち込み」につながる、という仕組みです。

血糖値の乱高下が、感情を不安定にする

空腹時間が長くなると血糖値は低下しますが、健康な人では通常、ホルモンの働きによって一定範囲に保たれます。一方、糖尿病治療中の方や極端な食事制限をしている方などでは、低血糖に注意が必要です。
血糖値が下がると、身体はストレスホルモンである「コルチゾール」と「アドレナリン」を大量に分泌して血糖値を上げようとします。
このコルチゾールとアドレナリンは、本来は緊急事態に対応するためのホルモンです。

これが日常的に分泌され続けると、慢性的な緊張状態・イライラ・不安感・パニック感が生じやすくなります。
「空腹になるとイライラする」という経験をしたことがある方は多いと思いますが、これはこのメカニズムによるものです。
さらに、血糖値が下がった後に急いで食べると今度は急上昇し、その後また急低下するという乱高下が繰り返されます。
この乱高下自体が、感情の不安定さを引き起こします。

あなたは大丈夫?「食べない影響」セルフチェック

気づかないうちに、食べないことの影響が出ているかもしれません。
以下の項目を確認してみてください。

☑ 食事を抜いたあと、イライラしやすくなる
☑ ダイエット中や食事を減らしているとき、気分が落ち込みやすい
☑ 空腹になると、集中力が落ちたり頭が働かなくなる
☑ 食べることへの罪悪感を感じることがある
☑ 食事の量や内容が気になって、頭から離れないことがある
☑ 最近、眠りが浅い・なかなか眠れない日が増えた
☑ やる気が出ない・何事も楽しめないと感じる日が続いている

3つ以上当てはまった方は、食事と心の不調が連動しているサインかもしれません。
このあとの内容を、ぜひ自分ごととして読んでみてください。

「食べない習慣」が続くと起こること

「少し食べる量を減らしている」という段階から、長期的に続けることで以下のような変化が現れてきます。
これらは単なる気分の問題ではなく、脳と身体の機能が変化しているサインです。

気分・感情面の変化
 食欲を我慢し続けることで慢性的なストレスが蓄積し、気分の落ち込み・不安感・感情の波が大きくなる傾向があります。
また、「食べること」への罪悪感が強くなるにつれ、食事そのものがストレスの引き金になることがあります。

思考・集中力への影響
 脳のエネルギー不足は、物事を判断する力・記憶力・集中力に直接影響します。
「ダイエット中に仕事でミスが増えた」「勉強が頭に入らない」という状態は、食事の不足が脳機能を低下させているサインかもしれません。

睡眠の乱れ
 セロトニンは睡眠ホルモンであるメラトニンの原料でもあります。
セロトニンが不足すると、夜の睡眠の質が低下し、眠れない・眠りが浅い・早朝に目が覚めるという症状が出やすくなります。

「食べないこと」と摂食障害の関係

医師として特に伝えたいのは、「食べない習慣」が摂食障害(拒食症・過食症)のリスクを高めるという点です。

食べることを制限し続けると、脳は食事に対する異常な執着を生み出すようになります。
「食べてはいけない」という意識が強まるほど、食事のことが頭から離れなくなり、食べることへの罪悪感と衝動が繰り返されるという悪循環に陥りやすくなります。
これは意志の弱さではなく、食事制限によって脳の報酬系(喜びを感じる仕組み)が変化することで起きる、生理学的な反応です。

⚠️ 「食べることへの強い罪悪感」「食べた後に自分を責める」「食事の量が気になって日常生活に支障が出る」という状態が続いている方は、一人で抱え込まずに医療機関や相談窓口に話してみてください。

「食べること」はメンタルケアそのもの

食べることは、単なる栄養補給ではありません。
脳の神経伝達物質を作り、血糖値を安定させ、感情のバランスを保つための、最も基本的なメンタルケアです。

「何を食べるか」と同じくらい、「食べることを大切にする習慣があるか」が、心の健康を支える基盤になります。
食事を「我慢するもの」ではなく、「心と身体を整えるもの」として捉え直すことが、メンタルヘルスを守る第一歩です。
まず1日3食、できるだけ決まった時間に食べることを意識することから始めてみてください。

おわりに

「食べない習慣」が脳内の神経伝達物質を枯渇させ、血糖値の乱高下が感情を不安定にし、長期的には思考力・睡眠・気分のすべてに影響を与えます。
食べることは我慢や妥協ではなく、脳とこころを守るための、積極的な健康行動です。
第17回のファスティングと合わせて、「食べること」との向き合い方を今一度見直してみてください。

橋本 将吉先生プロフィール

ドクターハッシーの画像


内科医。『西新宿セルフライフ内科クリニック』院長。
登録者数88万人超えのYouTubeチャンネル『ドクターハッシー/内科医 橋本将吉』にて 健康教育を発信している。2011年に「医学教育という専門領域から、日本と世界の明るい未来を創造する」という理念のもと、株式会社リーフェホールディングス(旧株式会社リーフェ)を設立。
医学生向けの個別指導塾『医学生道場』を運営するほか、2022年9月には健康や医学を医師から学べるサービス『リーフェアカデミー』をリリースし、企業や学校等でのセミナーも展開している。

2023年11月には、現役医師の目線から日々を健康に暮らすためのアイテムを扱うライフスタイルブランド「ハシモトマサヨシ」を立ち上げ、乳酸菌飲料「乳酸菌V28」などの商品を展開している。2026年7月には「西新宿セルフライフ内科クリニック」を開院し、院長を務める。

「櫻井・有吉THE夜会」「林修の今、知りたいでしょ!」「めざましどようび」など多数のテレビ番組に出演。
著書に『薬のトリセツ』(自由国民社)、『「老いても元気な人」と「どんどん衰えていく人」ではなにが違うのか』(アスコム)などがある。

リーフェホールディングス:https://li-fe.co.jp/
西新宿セルフライフ内科クリニック:https://selflife.clinic/
医学生道場:https://igakuseidojo.com/
リーフェアカデミー:https://healthcare-academy.co.jp/
ハシモトマサヨシ:https://hashimotomasayoshi.co.jp/

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です