
YouTubeやメディアでも活躍する内科医・橋本将吉先生(ドクターハッシー)が、ヘルスリテラシーを高めるための実践的な 健康知識をお届けする連載。医師だからこそ伝えられる“正しい情報”を月替わりテーマで解説します。
「なんとなくだるい」「頭が重い」「やる気が出ない」——梅雨の時期にそんな不調を感じていませんか?
実は、これは単なる怠けではなく、「梅雨バテ」と呼ばれる身体のSOSかもしれません。
第9回は、梅雨バテのメカニズムから、今日からできる対処法までを内科医が解説します。
内科医の橋本将吉(ハシモトマサヨシ)です。
梅雨に入ると、「なぜかいつもより疲れやすい」「気分が晴れない」「食欲が落ちた」という声をよく聞きます。
多くの方がそれを「天気のせいかな」と流してしまいますが、実は身体の中では自律神経がかなりの負荷を受けているのです。
梅雨バテを正しく理解して、上手にケアする方法をお伝えします。
「梅雨バテ」ってなに?
梅雨バテとは、梅雨の時期(6〜7月ごろ)に起こる心身の不調の総称です。
医学的な正式名称ではありませんが、この時期に特有の症状として多くの方が経験しています。

主な原因は3つあります。
① 気圧の変動
梅雨の時期は低気圧が続いたり、高気圧と低気圧が頻繁に入れ替わったりします。
気圧が下がると、内耳(耳の奥にある器官)がその変化を敏感に感知し、自律神経を乱します。
その結果、頭痛・めまい・倦怠感などが起きやすくなるのです。
② 湿度の高さ
湿度が高いと、汗をかいても蒸発しにくくなります。
体温調節がうまくいかなくなり、身体は常に”体温を下げようとする努力”を続けます。
この体温調節への消費エネルギーが積み重なって、疲れとして現れます。
③ 日照不足
曇りや雨の日が続くと、太陽光を浴びる時間が減ります。
日光には「セロトニン」という神経伝達物質の分泌を促す働きがあり、不足すると気分の落ち込み・やる気の低下・睡眠の乱れにつながります。
あなたは大丈夫?梅雨バテセルフチェック
以下の項目を確認してみてください。
3つ以上当てはまる場合は、梅雨バテの可能性があります。
◻︎朝起きても疲れが残っている
◻︎頭が重い、または頭痛が続く
◻︎食欲が落ちている、または胃がもたれやすい
◻︎気分が沈みがちで、何をするにもおっくうに感じる
◻︎肩こりや関節の違和感がいつもより強い
◻︎天気の変わり目に体調が崩れやすい
◻︎室内と屋外の温度差で、体がしんどくなることがある
◻︎睡眠が浅い・途中で目が覚める
「こんなに当てはまる!」と驚いた方もいるかもしれません。
でも安心してください。梅雨バテは、正しくケアすればしっかり改善できます。
身体が出しているSOSのサインを見逃さないで
梅雨バテが厄介なのは、「なんとなく不調」という曖昧な形で現れることです。
だからこそ、身体からのサインに気づくことが大切です。
サイン①「低気圧頭痛」
天気が崩れる前後に頭痛が起きる場合、気圧の変化が原因である可能性があります。
内耳が過剰反応することで、自律神経が乱れ、血管が拡張して頭痛につながります。
サイン②「朝の重だるさ」
朝目覚めたとき、「もう疲れている」感覚があるのは、夜間に自律神経がうまく切り替わっていないサインです。
湿度の高い環境では睡眠の質が下がりやすく、身体が十分に回復できていないことがあります。
サイン③「冷えのぼせ」
手足は冷たいのに顔だけ火照る——これは、自律神経の乱れによる血行不良のサインです。
エアコンの冷気と高い外気温の温度差が大きい梅雨の時期に特に起きやすい症状です。
サイン④「なんとなく気分が落ちる」
「別に悲しいことがあるわけじゃないのに、なんか気力がわかない」という状態は、日照不足によるセロトニン不足が関係していることがあります。
これもれっきとした身体のSOSです。
今日からできる!梅雨バテ対処法
では、梅雨バテはどのように対策するのが良いのか、6つのポイントを解説いたします。

対処法① 朝の「光活」で自律神経をリセット
POINT 起床後30分以内に、窓のそばに座って明るい光を浴びましょう。
雨の日でも、屋外の光は室内の蛍光灯の何倍もの明るさがあります。カーテンを開けて窓のそばに5〜10分いるだけでも、セロトニンの分泌促進に効果があります。
朝の光は体内時計をリセットし、自律神経のリズムを整えるうえでも非常に重要です。
対処法② 「温冷交代浴」で体温調節をトレーニング
POINT お風呂でシャワーを使って、ぬるま湯(38〜40℃)と冷水(20〜25℃)を交互に浴びる。
各30秒ずつ、3〜5セット繰り返します(最後はぬるま湯で終わる)。
自律神経を鍛え、気温・気圧の変化への対応力が上がります。
心臓や血管に持病がある方は、事前に医師に相談してください。
対処法③ 「湿気対策」で睡眠の質を守る
POINT 寝室の湿度は50〜60%を目安にコントロールしましょう。
湿度が高いと体温調節が難しくなり、睡眠が浅くなります。
エアコンの除湿機能や除湿器をうまく活用して、寝室環境を整えてください。
また、寝る直前の熱いお風呂や激しい運動は避け、寝室に入る前にひと汗ふきとる習慣も有効です。
対処法④ 「水分+ミネラル補給」で疲労蓄積を防ぐ
POINT 梅雨でも、気づかないうちに汗をかいています。水分補給は怠らずに。
湿度が高い梅雨の時期は、汗が蒸発しにくいため「汗をかいていない」と感じやすいですが、実際には皮膚からの水分蒸発(不感蒸泄)は続いています。
水だけでなく、ナトリウム・カリウムなどのミネラルも意識的に補いましょう。
味噌汁・スープ・梅干しなど、食事から取るのがおすすめです。
食事からの摂取が難しい場合は、水分と同時にビタミンや乳酸菌、各種ミネラルを効率よく補給できる健康飲料をスマートに活用するのも手です。
対処法⑤ 「軽い有酸素運動」で気圧への耐性をつける
POINT 雨の日でも、室内でできる軽い運動を10〜15分取り入れましょう。
ヨガ・軽いストレッチ・室内でのウォーキングなどで血流を促すことで、自律神経が安定しやすくなります。
運動には内耳の血流を改善し、気圧変動への過敏反応を和らげる効果も期待されています。
「雨だから運動できない」ではなく、できることを探してみてください。
対処法⑥ 「食事で内側から整える」
POINT ビタミンB群・マグネシウム・トリプトファンを意識して摂りましょう。
ビタミンB群(豚肉・大豆・卵など)は神経系の働きをサポートし、疲労回復を助けます。
マグネシウム(ナッツ類・海藻・豆腐など)は自律神経の安定に重要なミネラルです。
トリプトファン(バナナ・乳製品・鶏肉など)はセロトニンの原料となるアミノ酸です。梅雨の時期は特に意識してとり入れてみてください。
さらに、高い抗酸化作用を持つ「黒にんにく」や、数十種類の薬草を熟成発酵させた「植物発酵エキス(酵素)」などを上手に組み合わせると、より効率よく内側からバテにくい体をつくることができます。
梅雨バテを悪化させる「やりがちなNG習慣」
合わせてNG習慣を意識することも大切です。

❌ 冷たいものを飲みすぎる
暑くて湿度が高いとつい冷たい飲み物ばかり飲みがちですが、胃腸を冷やして消化機能を低下させ、だるさや食欲不振を悪化させます。
常温〜温かいものを意識して取り入れましょう。
❌ エアコンに頼りすぎて「冷やしすぎ」になる
屋外との温度差が5℃以上になると、体温調節をする自律神経への負荷が増大します。
室温は26〜28℃を目安に設定し、1枚はおれるものを用意しておくのがベターです。
❌ 「しんどいから横になり続ける」
休養は大切ですが、完全に動かなくなると血流が滞り、かえってだるさが増すことがあります。
しんどいときほど、短時間でいいので体を動かす時間を作りましょう。
❌ 「これくらい我慢すれば大丈夫」と放置する
梅雨バテの不調を無視して頑張り続けると、免疫力の低下や夏バテへの移行につながりやすくなります。
身体のSOSは早めにキャッチして対処することが大切です。
おわりに
梅雨バテは、気圧・湿度・日照不足という3つのストレスが重なって自律神経が乱れることで起きます。
「なんとなく不調」という信号を軽視せず、身体が出しているSOSに気づいてあげてください。
今日ご紹介した対処法は、どれも特別な道具や時間を必要としないものばかりです。
朝の光を浴びる、水分をこまめに取る、食事を整える——そのひとつひとつが、じめじめした梅雨を健やかに乗り越える力になります。
梅雨は雨粒の音を楽しみながら、いつもよりちょっと丁寧に自分を労わる季節にしてみてください。
橋本 将吉先生プロフィール

内科医。『西新宿セルフライフ内科クリニック』院長。
登録者数86万人超えのYouTubeチャンネル『ドクターハッシー/内科医 橋本将吉』にて健康教育を発信している。2011年に「医学教育という専門領域から、日本と世界の明るい未来を創造する」という理念のもと、株式会社リーフェホールディングス(旧株式会社リーフェ)を設立。医学生向けの個別指導塾『医学生道場』を運営するほか、2022年9月には健康や医学を医師から学べるサービス『リーフェアカデミー(旧:ヘルスケアアカデミー)』をリリースし、企業や学校等でのセミナーも展開している。
2023年11月には、現役医師の目線から日々を健康に暮らすためのアイテムを扱うライフスタイルブランド「ハシモトマサヨシ」を立ち上げ、乳酸菌飲料「乳酸菌V28」、発酵エキス「黒にんにく 酵素の奇跡」などの商品を展開している。
「櫻井・有吉THE夜会」「林修の今、知りたいでしょ!」「めざましどようび」など多数のテレビ番組に出演。著書に『薬のトリセツ』(自由国民社)、『「老いても元気な人」と「どんどん衰えていく人」ではなにが違うのか』(アスコム)などがある。
リーフェホールディングス:https://li-fe.co.jp/
医学生道場:https://igakuseidojo.com/
リーフェアカデミー:https://healthcare-academy.co.jp/
ハシモトマサヨシ:https://hashimotomasayoshi.co.jp/

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